表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/156

第三十五話 びっくりするほどフレンドリー


 フランの術は、俺ごとオークキングにとどめを刺していた。






 お見事……



 ドシャァァァ



「アキトー! しっかりしてーーーー! うわーーーん! 死んじゃダメーーー!!」


 ガクンガクン


「大変です! アキトさんの頭がアフロになってますよ!!」


「…もこもこで可愛い…」


「と、取り敢えず脱がしたほうがいいんじゃないかな? ハァハァ」


「みなさん、落ち着いてください。私が癒しを……リッカさん! アキトさんのそんなところをまさぐってはいけませんよっ」


「このままアキトさんが死んでしまったら……さっきの汚らしいオークたちが仲間の復讐に戻ってきて……か弱い私たちを一生性奴隷に……ヒ、ヒィィッ!!」





「アキトー! お願い起きてー! 私を残して死なないでー!!」


「ここをこうすればいいんじゃないのか?」


「いえいえ。ここはこうして、こうです!」


「…うわ…ヤヨイ…大胆…」


「ちょっと、みなさん。アキトさんに早く癒しを……そ、そんなことまでしては……いけませんいけませんっ!」


「ハッ!? もしかして、私だけ仲間じゃないからここに一人置いて行かれて……私がオークに食べられている間に逃げ出そうとしてるのでは……イヤァァッ!」











「だぁぁぁぁぁぁぁ! 大人しく死なせろぉぉぉぉぉぉ!!!」





-------------------------------------------------------------------------------





 ミリアの癒しのお陰で、俺はすっかり回復した。


 たいしたものだ。



 アフロになった髪まで戻っていたのは解せぬがな。



 少し休憩した後、俺たちはまた歩き出した。


 できれば今日中に踏破したいところだ。



 あれほどいたオークたちはどこへ行ったのだろうか。

 全く遭遇することすらなかった。


 そして、小一時間ほど歩いた俺たちの前に現れたのは、分かれ道であった。


 一本は広い坑道。

 あのオークキングすら楽々通れそうな広さがある。

 どうやら上へと伸びているようだ。

 空気の流れを感じるところからすると、もしかしたら外へ通じているのかもしれない。


 もう一本は狭い道。

 三人程度横に並べる広さだ。

 こちらは明らかに下へと向かっている。


 まぁ普通に考えて下だよな。



 そしてまた、俺たちは一歩を踏み出した。



 程なくして、坑道は終わりを告げ、洞窟へと変化していた。


 水晶が見当たらないのは、まだ目的地ではないからなのだろう。


 すると、行き止まりに突き当たった。

 床には穴が開いており、そこには縄梯子が掛けてある。


 その穴からは淡い光が見えていた。



「俺が先に降りて、安全を確かめる。少し待ってろ」

「そんな事言って、下からパンツを覗く気でしょ!」


 フランがスカートを押さえながら俺を睨んだ。



「うむ」


「正直!!」




 縄梯子を慎重に降りる。

 数メートルで地に着いた。



「おおー」


 そこには一面の水晶が煌めいていた。

 まさしく水晶の谷だ。

 澄んだ地下水も流れている。

 上にオークキングがいたせいか、人間に荒らされた様子は無かった。

 

 よし、これなら大丈夫だろう。


 女性陣がおっかなびっくり降りてくるのを、ガン見で楽しむ。


 ピンク。


 水色。


 くまさん。


 純白。


 紫。


 鎧。







 俺たちは手頃な大きさの水晶を、布袋に拾い集めた。

 売れば旅の資金になると思ったからだ。


 少し奥の方まで進んでみると、水晶の壁がまだまだ続いていた。



 しかしこんな宝の山、よく放っておくもんだ……な…………………………?



 視界に広がる巨大な空間。

 周囲は鏡のように反射する水晶に覆われている。


 だが真に注目すべきは、床にあった。



 なんだこれは……………………



 俺もみんなも息を吞むしかなかった。





 床に。



 像。



 鎧。



 駄目だ、うまく頭が回らない。



 とにかく、あまりにも巨大なモノが水晶の床に埋まっているのだ。



 白銀の、神像だろうか。


 あるいは、騎士の像だろうか。


 大きさも凄まじい。

 20メートルはありそうな巨体だ。


 両手を胸の上で組み、横たわるその姿は、もしかしたら古代の墳墓なのかもしれない。



「……誰か、これがなんだか知っているか?」



「…………憶測でしかありませんが」


 と、上ずった声のクレアが呟く。



 さすが眼鏡だ!

 物知り!




「神話に登場する『神王の聖鎧』かもしれません。その神話ですが、神々の王は『深淵の彼方より来たりし者』との争いで、聖鎧を用いた、との記述があります。私が知っているのはそれくらいですけど……」



「いや、充分だ。参考になったよ」


 この世界の人間がわからないんじゃ、俺たちにわかるはずもない。

 わからんことをクヨクヨ考えても詮無き事、さ。






「あれ? なんだろうねこれ」





 ちょ、このパターンは…………



 マッハで振り返ると、フランがしゃがんで何かを触っていた。

 フランを抱きかかえ、一気にその場を離れる。



「バカ! まだ懲りないのかお前は!! このポンコツ!!」

「あん、こんなところじゃダ・メ。みんなに見られちゃうから……」

「アホー!!」



 しかし、数分経っても特に何も起きることはなかった。


 ホッと胸を撫で下ろす。



 俺の腕の中で、頬を赤らめモジモジしているフランに気付き、解放してやった。

 自分で言っておいて照れるとは、なんたるアホの子か。



 フランがしゃがんでいた場所を見てみると、水晶の床に右手の形のへこみがある以外は、おかしな部分は無いようだ。



 良く見つけたなこんなの。

 まぁ、何事も無くて良かった。



 取り敢えず、目的は果たしたわけだ。

 そのまま帰っても良かったのだが、像の大広間の奥に小道を見つけてしまった。

 気になった俺たちは、協議の結果進んでみることにした。


 しばらく歩くと、結構広い空間の真ん中に、水晶で作ったと思われる椅子がポツンとあった。

 華美な装飾を施されたそれは、まるで玉座のようにも見える。


 その後ろの壁には更に奥へと続く道があった。



 不用意に近付くなよ、と一同に言い聞かせる。

 特にフランにだ。


 外壁にそって移動すると、どこからともなく声が聞こえてきた。


 ヒィッと声を上げる女性陣。



「人か……久しく人など見ておらぬな……」


 いつの間にか椅子に腰かける人影があった。

 地の底から響くような声。

 顔は見えない。

 黒いフードを被り、その上から冠を戴いている。

 全身黒尽くめの中で、細った手だけが異様に青白い。



「あ……あ……」


 珍しくミリアが動転している。


「あれは……不死者の王です……」


 なんだって!?


 不死者の王と言うと、ゲームならリッチやノーライフキングを指す。

 とんでもなく高位の怪物だ。


 そう言えば、クレアの情報の中にあったな。

 ここに住み着いているのはオークと不死者だと。


 ゾンビやスケルトンを予想していたのに、いきなり不死王とは。


 事前情報がザックリしすぎだろ!

 弱い人間なら近付いただけで死ぬんだぞ!



「人よ……ここには何もない。すぐ立ち去るが良かろう」


 あれ? 思ったより友好的?


「ね、こう言ってくれてるんだから、帰りましょうよ!」

「そ、そうだな。はは、お邪魔しましたー」


 俺たちはそそくさと立ち去ろうとした。




「待て」



「な、なんでしょう!?」










「……後ろの通路は外への隠し扉と通じておる。使うが良い。それと、道中気を付けるのだぞ」



 フレンドリー!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ