第二十七話 ケモミミ少女が現れた
あれから数日。
フランとシャニィが目覚める様子はない。
俺もヤヨイも流石に危機感を感じていた。
早急になんとかしないと、二人が衰弱してしまう。
いよいよ、実費で医者に診せるしかないと思い始めていた。
そんな時、解決策は意外なところから現れたのだ。
「やぁ、アキト。私が来てやったぞ」
どこぞのヒーローか。
階下へ行くと、リッカが玄関で仁王立ちしていた。
リッカにも話はしておいたし、見舞いにでも来てくれたんだろう。
「おう、見舞いか。悪いな。まぁ上がってくれよ」
「ほら、隠れてないで、こちらに来い。アキトは変態だが悪いやつではないから」
「失敬な! ん? 誰かいるのか?」
リッカの陰から現れたのは、全身白ずくめの女の子だった。
ワンピースのような衣服も白い、長い髪も白銀、ついでに帽子も白、手袋も白。
そして恥ずかしそうに顔を伏せている。
白っ! てか誰だろこれ。可愛い子だが……
リッカの友達かな……それにしても白っ!
あまりの白さに俺の目が眩みそうだ。
「黙ってないで、ほら」
「あ、あの、私……」
そう言って、彼女は帽子を取った。
頭の上に、大きな白い耳があり、ピコピコと動いている。
「!!!!!!?????」
耳! 耳!! 動物みたいな耳!!!! ケモミミ!!!!!!!
「わ、私、SSRの、ミリアと申します……」
「みりあもやるー!?」
「はい?」
「いえ、なんでもないです」
っておい!?
「SSR!!?? どういうことだリッカ! それとあの耳! ケモミミ! ヒャッホウ!!」
「落ち着け変態。いっぺんに言うな。今、説明するから。まず、彼女はSSRのミリアだ。向こう側の獣人族で、大司祭だ。獣人族とは言っても、人間との違いは耳だけらしい。そして彼女の当選者は、フフン、この私だ!」
「えええええ! いいなぁぁぁぁ!! ずるいぞこの野郎!!!」
「フフフ、羨ましいだろう。まぁともかく聞け。お前から二人の状態を聞いた後、考えたんだ。向こう側の者なら、二人を治す方法を聞けるかもしれないとな。それからは連日徹夜で装置を修復していた。暴走時のログが残っていたんで、意外とスムーズにいったよ。で、試しに起動したら、いきなり彼女に当選したというわけだ。もっとも、その反動で装置はまた壊れてしまったがな。それで彼女が言うには、私は二人と深く長く関わっていた、そして二人を治したいと思っていたからミリアに当選したのだろう、と」
「ってことは……」
「ああ、彼女なら二人を回復できるそうだ」
「おお……女神……!」
早速ミリアを二人の元へ案内した。
案の定、ヤヨイもケモミミに驚いている。
そして、ミリアはフランとシャニィの手を握り、祈りを捧げ始めた。
歌うような詠唱が、空気を清冽なものに変えていく。
時折、ピコピコ動く耳が、とんでもなくキュートだ。
うおおお、モフモフしてええええ。
俺の腐りきった性根までもが浄化されていくような気がしたが、気のせいだった。
「二人は精神力をマイナスまで削ってしまったのが今回の原因でした。よほど高位の相手と戦ったのですね」
あのドラゴンのせいか……今考えると、よく倒せたなあんなの。
リッカの親父さんと、金髪のイケメンがいなかったら、まず無理だっただろう。
「もう大丈夫です。じきに目覚めるでしょう」
待つほども無く、その通りになった。
二人が「…むにゃー…」「ごはんー、お腹減ったー」と目覚めたのだ。
思わず俺は二人を抱きしめていた。
決してスケベ心じゃないぞ。
なんだかんだ言っても、俺はやはり心配していたのだ。
不覚にも、嬉しさで涙がこみ上げてくる。
良かった、本当に良かった。
「アキト、苦しいよー」
「…なにかあったの…?」
寝ぼけたように言う二人。
涙目のヤヨイとリッカも俺たちに加わって二人を抱きしめた。
ついでにミリアも巻き込んでやる。
皆に抱き着かれて、目を白黒させるフランとシャニィの姿。
俺たちはやっぱりこうでなくちゃな。
その夜、豪華な食卓でお祝いをする我々なのであった。




