第二十話 レベルが上がるとどうなるの?
『LEVEL UP』
無駄に仰々しいフォントの文字が俺の頭上に輝く。
「「「「おおーーーー」」」」
一同が感嘆の声を上げ、拍手を俺に送る。
いや、俺は喜ぶ場面なのこれ?
普通のゲームならそりゃ俺だって喜ぶ。
単純に何かしら強くなるわけだからな。
でも俺、何にも強くなった実感が無いんですけど。
股間のサイズが上がった! とかなら、むしろ大喜びするんですけど。
一応確認しようかと、ズボンをゴソゴソしてみる。
「キャーーー! 何してんのよ変態!! あられもない姿の私を見て興奮したのね!?」
と、勘違いしたフランが涙目で尻を隠した。
「あ、はい。そうですね」
俺は真顔で、全く興味無さそうに棒読みで言った。
「なんでよー! 私で興奮してよーー!」
妙な事を言い出しているが、放っておこう。
ちなみに股間のサイズに変化はなかった。畜生。
先程の戦闘で負った傷をフランに治療してもらう事にした。
よく解らない言語でムニャムニャと詠唱している。
せめて下着を替えてこい。
変態女がもの凄い目付きで見てるぞ。
おいおい、カメラも構えてるぞ。
うわ、動画と写真の二刀流だ。
しかも連撮。
脇腹のあたりに負った傷は、瞬く間に塞がる。
それだけじゃなく、疲れた身体も軽くなった気がした。
何て便利なんだ。
「やるじゃないかフラン。良くやったな、見直したぞ」
「偉い? 偉い?」
と子供みたいな事を言っている。
術を使うと反動で子供返りでもするのだろうか。
俺が仕方なく、無言でフランの頭を撫でてやると、ニヘーっと満面の笑顔。
正直、俺ですらも、そんなフランの仕草が可愛く見えた。
よしよし、いっぱい撫でてやるからな。
よーしよしよしよしよし。
「くあっ!」
突然鼻血を噴出させたリッカが、ぶっ倒れた。
フランの可愛らしい仕草にやられたようだ。
全身がビクンビクンと痙攣している。
カメラも血まみれだし、きっとお釈迦だな。
しかし萌え死にとは……ある意味リッカには本望だろう。南無。
聞くところによると、レベルアップとは当選者の俺のみならず、SSRであるフランにも影響を与えるらしい。
簡単に言えば、俺が強くなるほどフランも強くなる。
確かに先程のフランの癒しは、前よりも効果が大きくなっていたと思う。
でも、俺自身が強くなったとは思えない。
せめてゲームのように、何か新しいスキルでも覚えられればいいのに。
戦闘で何の役にも立てないのは、想像していたよりも自分を情けなく感じるのだ。
出来るなら、格好良く敵を薙ぎ払いたいだろ?
現状だと、ただ逃げ回っているだけだからな……
フランのほうはレベルが上がれば上がる程、術の効果が増大したり、新たな術や技が使えるようになったりするらしい。
ずるくないかそれ?
俺にもくれよ。
「…でも…一番重要なのは…当選者の許容量と…二人の絆…」
絆!
自称鬼畜である俺には、最も虫唾が走る言葉だ。
これまでの人生で、そんなものに遭遇した事は無い。
つ、強がりじゃないぞ。
「…アキトとフランさんからは…絆を感じる…」
シャニィやめてぇ。そういうのやめてぇ。恥ずかしいからぁ。
いたたまれなくなった俺は両手で顔を覆う。
隣では、フランも同じく顔を覆っていた。
え、お前、羞恥心あったの?
てか、隠すなら丸出しの尻を隠せよ!




