第十八話 何でも有りの世界とは
戦火は日々拡大しているようだ。
いずれ他の国々にも飛び火していくのだろう。
この国にいると全く実感は湧かないが、それでも大戦を経験してきた老人たちは、戦々恐々としているようだ。
黒靄の事は多少気にかかるが、今のところ俺には関係の無い話だ、と思いたい。
皆でテーブルを囲んでおやつのパンケーキを食べていると、何を思い立ったのかパンケーキの刺さったフォークを握りしめたまま、すっくとフランがスカートを翻して立ち上がる。
ほう、今日は薄いブルーか。
初めて見る色の下着だ。
ちゃんと自分の買い物に行っているようだな。
偉い偉い。
「私、このままじゃダメだと思うの」
「わかったわかった。取りあえず座れ。行儀悪いぞ」
「はぁい」
素直にペタンと座り込む。
俺の教育が良いせいか、フランもだいぶ調教されてきているようだ。
「で、何がダメなんだ?」
フランの仕草にメロメロのリッカが聞く。
ダメなのはアンタだろう。
最近ではフランの食べる姿に萌えるのか、やたらと餌を与えている。
「? あ、そうそう、そうよ。根本的にダメなのよ」
お前、一瞬食うのに夢中になって、何を言おうとしてたのか忘れてたろ。
「向こう側の災厄を何とかしないと、こっちの戦争も終わらないと思うのよね」
「…うんうん…」
シャニィも大きく頷いている。
なるほど、フランにしては珍しく的を射ている。
黒靄が向こう側からの浸食と仮定するなら納得がいく。
「そうかもしれないな」
「ですね」
俺もヤヨイも、つい同意してしまう。
フランとシャニィの顔がみるみるほころんでいく。
それを見守るリッカの顔もみるみるだらしなくなっていく。
「でも、私とアキトさんが向こう側に行ったとして、その災厄を止められるんですか? あと、向こう側ってホモはいるんですか?」
どさくさに紛れて何を聞いているんだこの腐れは。
こっちにいるんだから、いない訳が無いだろう。
多分、それ目当てで向こうへ行ったやつもいるはずだ。
「…正直…解らない…立ち向かったことがないから…それと…向こう側は…性癖フルオープン…何でも有り…」
何それすごい。
じゃなくて、そんな腐った質問は律儀に答えなくていいから。
でも、そうかぁ、フルオープンかぁ。
「とは言え、向こうに行ってすぐ死んじまうんじゃあんまり意味ないよなぁ」
お空や特異点の主人公たちみたいにはいかないよな。
あいつらチートすぎる。
あれだけ強くなれるなら楽しそうなんだが。
「そうでもないわよ? 向こう側で色々満足しちゃった人たち結構いるみたいだし」
「…ただ…災厄に立ち向かうのを諦めた人たちからは…当選者としての権利も…失われる…」
なるほど、そう言うからくりか。
ゲームで言う、ノンプレイヤーキャラクターみたいな存在になってしまうが、満ち足りた生活は送れるとか、そんな感じなんだろう。
しかし向こう側って思ったより良さげだなぁ。
ロリっ子ハーレムも作れるってことだろう?
かなりそそられる。
待てよ、ハーレムを作ったとしても災厄とやらに覆い尽くされたら御破算か。
これは悩ましい。
ヤヨイも鼻血を拭いながら血走った目で苦悩している。
向こう側のホモハーレムでも妄想しているのだろう。
時折、「ホモォ……」とか聞こえるのが証拠だ。
「私はむしろ行ってみたいものだがな」
リッカの場合は、親父さんの事もあるしな。
解る気がする。
時々、親父さんの研究所に篭って装置の解析もしているようだ。
成果はあまり芳しくないようだが。
「何でも有りなんて、最高じゃないか! 私専用の後宮を作ろう! フフフ……数多の美少女を侍らせてやる!」
え、そっち?
「親父さんは?」
「どうでもいい」
親父さん、貴方の娘は、とんでもない鬼畜です。
向こう側の歴史に、悪い意味で名を残しそうです。




