短編:あの日のプレゼント(ホワイトデー)
本編と関係ない物語にしようと思って書いていたのに、結構重要な回になってしまったorz
初めての3人称ですので、おかしい所があるかと思います。
「ねぇ ねぇ。ういくん。『ほわいとでぃ』って何か知ってる?」
「ほわいとでぃ? なーに、それ」
「えっとね、この前ういくんにチョコをあげた『ばれんたいんでぃ』っていうのが有ったよね? その時もらったチョコのお返しをする日が、あと10日したら来る『ほわいとでぃ』なんだって。 ママがそういってたよ?」
「へぇー。じゃあ、『ばれんたいんでぃ』の時にひーちゃんからチョコもらったから、僕がひーちゃんにお返しするの?」
「うん! そうだよ。わたし、ういくんからのプレゼント、楽しみにしてるね」
「わかった! ひーちゃんがよろこぶようなプレゼント、用意するね。それじゃあ、また明日。バイバイ」
「バイバイ、ういくん」
とある小学校の通学路。互いを『ういくん』『ひーちゃん』と呼び会う少年と少女が歩いていた。2人は、10日後に迫った『ホワイトデー』について話していた。
住宅街にある丁字路で少女と別れた少年は、真っ直ぐに家へと帰る。途中にある空き地では、保育園児くらいの子供達が親と一緒に遊んでいる。自分も遊びたいなと、心の中で思いつつも、寄り道はしないように親に言われている為、遊ぶ事は出来ない。空き地の前を、やや小走り気味で通り抜ける。
家に着くと、玄関の前に先程の少女とは別の少女が座っていた。
「あれ、はるか。もう帰って来てたの? 早く帰ってくるなら、言ってくれれば良かったのに……」
「あ~。やっとお兄ちゃんがかえってきた。どうせ、ひてんちゃんとイチャイチャしてて遅くなったんでしょ?」
「べつに、ひーちゃんとイチャイチャしてたんじゃないよ。 お話してたんだ。 そういえば、はるかは『ほわいとでぃ』って知ってる?」
「もちろん知ってるよ。そんな事より、早くげんかん開けてよ。寒いよ……」
「ごめんね…… 今すぐ開けるからさ。 それと、後から『ほわいとでぃ』にについておしえてね」
「わかったから……」
少年は、少女…… 妹と一緒に家へと入り、中で『ホワイトデー』についての説明を受けていた。
妹が言うには、『プレゼントは心が籠っていれば何でもいい。でも、手紙かなにかを入れてあげた方がいいよ』とのことだった。
───9日後、少年は母親と一緒に家でクッキーを焼いていた。
明日の『ホワイトデー』用のプレゼントとして、少年が選んだのは『手作りクッキー』だった。
チーン という音が鳴り、甘い匂いと共にクッキーの焼き上がりを知られてくる。
「……うん。美味しい! ほら、初火も食べてごらん。自分で作ったクッキーの味はどう?」
「美味しいよ、お母さん。これならひーちゃんにプレゼントしても大丈夫だよね」
「そうね。あとは自分でお手紙でも書いて、明日渡しておいで」
「うん。ありがとね、お母さん」
軽く味見をして完成を告げる母親は、そのまま手紙を書いて来る様に少年に言う。少年は言われた通りに、『ひーちゃん』への手紙を書きに階段を上っていく。
「ふふっ。初火ったら、飛天ちゃんの事が好きなのねぇ。将来は飛天ちゃんと結構するのかしら」
母親は、少年が上っていった階段を眺めながら呟いていた。
───ホワイトデー当日。少年は『ひーちゃん』の家に来ていた。プレゼントを渡す為に。
「はい。これがこの前のチョコのお返しだよ」
「わぁー。ありがとっ、ういくん。ねぇねぇ、開けてみてもいい?」
「うん。頑張ってお母さんと作ったんだ。食べてみて?」
「うん。このクッキー美味しそう! それじゃあ、早速食べるね。いただきまーす。
───美味しい…… 凄いよ、ういくん。もしかしたらお菓子屋さんになれるかもね!」
「美味しいなら良かった~」
少年から紙袋を渡された『ひーちゃん』は、中に入っていたクッキーを口にして、感想を述べている。かなり美味しかったようだ。
「それと…… もうひとつプレゼントがあるんだ。
えっと…… これだよ」
少年は、少女に向かって四角い木の箱を渡した。
「これは何?」
「開けてみて」
「うん… ……っ! これは?!」
「えっと…… お父さんが、『自分が好きな人に渡しておくんだよ』って言ってたから……」
少年が渡した箱の中からは、1つの銀色に輝く指輪が入っていた。
「もしかして、要らなかった?」
「ううん。とっても嬉しいよ…… 私もね…… ういくんの事ね…… だーいすきだよっ……」
「それじゃあ、大きくなったら結婚してくれる?」
「うん……! もちろんだよ」
少年は、少女にプレゼントした指輪を、左手の薬指へと通した。
「本当に…… ありがとう、ういくん」
少女は別れ際まで泣いていた。
─────次の日、少女『ひーちゃん』は学校に来なかった。次の日も、次の日も、次の日も、次の日も、次の日も……
少女が、ホワイトデーの日の夜に引っ越していたのを少年が知ったのは、1週間後だった。
本編は、明日出しますね。
───多分……
すいません、1年ほど休載します……