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差のある不幸達へ  作者: ライム
1章目 -隣人-
5/7

相容れない女達

暑さが目立つ季節になった。6月ももう終わる。これからは本格的に太陽が直射日光を浴びせてくるのだ。

そう考えて真琴は憂鬱な気分になった。夏よりは梅雨の方が好きな性分なのだ。


家に戻った彼女はすぐさまに部屋に入ろうとした。しかし自分を呼ぶ声がして動きを止める。


「おかえりなさい。学校、どうだった?」


再婚相手がいつものように、どこか困ったような微笑みを浮かべながら立っていた。


なぜ、この時間帯に家にいるのだろう。仕事が休みなのだろうか。ああ、せっかく買ってきた新刊を読もうと思っていたのに。邪魔だなあ、仕事してくれないかなあ。関わって欲しくない。


纏まらない思考が言葉の羅列となって脳内を荒らした。義母は固まっている真琴を見て更に申し訳なさそうな笑みをたたえた。


「話があるのよ。ちょっといいかしら?」


義母は真琴の前を通り過ぎて彼女の部屋を躊躇せずに開けた。そして整えられたベッドに静かに腰を落とす。


嘘だろ、と口だけで呟いた。気持ち悪い、とも。

なぜ、私の空間に私の許可を取らずに入れるのだろう。私はそれが嫌で掃除も断って自分でやっているのに。


「真琴ちゃんも座って」


アンタの隣に?嫌だ嫌だ。そんなことをしたらアンタをパーソナルスペースに入れることになる。


「結構ですよ。手短にお願いします」


つっけんどんな真琴の反応を見て義母は顔を曇らせた。しかし、次の瞬間には顔を上げて真琴を見つめた。


「私ね、来週から専業主婦になるわ。仕事はやめるの」

「……は?」

「ほら、だって、せっかくあなたのお父さんの奥さんにしてもらえて。しかもあなたの母親にまでなれて。なのに娘と接する機会は少ないでしょ?休みの日は真琴ちゃん、どこかに出かけてしまうし。だからね……」


半ば呆然としながら彼女は目の前の人物に怒りを覚えていた。


そもそも、この人を母親だと認めたことはないのに。どれだけ幸せな思考回路をしているのだろうか。娘と呼ぶな。私の名を呼ぶな。気持ち悪いんだよ。


もともと、血の繋がってない存在など、他人など嫌いだった。気を許している友人ならまだしも、なんでこんな女に色々と言われなければならないのだろう。


「真琴ちゃんが学校に行ってる間に掃除も出来るし」

「結構です。お気遣いは嬉しいですが、部屋には入らないでいただきたいです。色々と整理しているので」

「でも、学校帰りで疲れているでしょう?」

「部活をやっていないので疲れはしませんね」

「……そんなに拒絶することないじゃない!」


勢いよく立ち上がって義母は叫んだ。


「わ、私はあなたに精一杯向き合っているのに、どうしてあなたは私を受け入れようとしないのよ」

「……一緒に暮らしている時点で十分に受け入れているつもりでしたが」


めんどくさい!!心の中でそう叫んだ。これだから感情的な人間は嫌いなんだ。

この機会に関係を潰してしまおうか。そんなことをチラリと考える。


「違う、違うのよ……もっと、家族らしく接したいのよ。だって真琴ちゃん、私の前で笑ったことないじゃない」

「楽しくない時に笑えるほど器用ではないので」


思わず本音が出てしまった。失言をしたことに気づくも、もう遅い。


「酷いわ!」


そう怒鳴り散らして彼女は部屋から出ていった。あの人の匂いが部屋の中に残っていて、それすらも気に入らなくて窓を全開にする。

部屋を出て、リビングに行った。ベランダの網戸を開けて外に出る。


湿ったような空気が私の周りだけ濃いような気がして、舌打ちを打った。

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