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差のある不幸達へ  作者: ライム
1章目 -隣人-
2/7

夢を読む

停滞した思考を追い払うべく、私はベッドから降りて本棚から降りた。


父はコミュニケーション能力が低く、その上めんどくさがりだった。だから父は私との会話の代わりに幼い頃から本を与えた。腹立たしいような気もするが、そんな理由もあって私は本が好きだ。


本棚に並んでいるのは村上春樹に夏目漱石。村上龍も少しある。あとは最近買い始めた芥川龍之介など。


ああ、あとは「津川 渡」だろうか。


3年ほど前に「妖々夢」を発表。探偵ではなくひたすらに犯人側を描写した内容が話題を呼び、一躍有名となった。

私も当初読んだ時は目を丸くした。あれほどまでに人間の狂気というものを書ける人間は江戸川乱歩以外に初めて見たのだ。

そして芥川賞を受賞することとなる。そこで初めて「津川 渡」の異常さが表に現れた。


まず、芥川賞に推薦された時点で作家はメディアへの露出をするのだが、津川はそれを一切しなかった。そして極めつけだったのが授賞式当日である。


その日、各大型企業が一斉にFAXを受け取った。何の変哲もないコピー用紙に乱雑な走り書きされたような時でど真ん中にこう書かれていたのだ。



「寝坊しました。やる気がないので賞は受けません」



誰もが唖然とした。ダメ人間、と言っても過言ではない。当然の如く、大パニックが起こった。

その最中でも本人はどこ吹く風で全く謝罪も何もなかった。しかも堂々と異例のスピードで「妖々夢」の続きである「胡蝶夢」を発表したので更に混乱が起きる。


結果として、夢シリーズは前代未聞の大ヒットを記録した。


今考えてみると、全てが計算だったのではないかと思うが確かめる術もない。私に出来るのはただこの物語を心ゆくまで堪能することだけである。


本棚に指を伸ばして「妖々夢」を取ろうとした、その時だった。ピンポーンと聞き慣れた、しかし非常に鬱陶しい音が家の中に響く。

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