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相棒頼みで生きていく  作者: 青葉一馬
6/29

クレア

……


朝、おじさんのカウンターに並んだ。


「おはようございます、昨晩はありがとうございました」


「お前か」


じろりと睨まれる、普段は無愛想タイプなのね……


「礼などいらん、お前は見習いなんだ。さっさと狩りをしてくればいい」


「少しお伺いしたい事がありまして」


「そういえば、早くから来てたな。何を聞きたいんだ」



今日は早朝からギルドに来た。今は9時ごろである。


魔法使いや獣人、奴隷を見たかったから、ずっとギルドの様子を観察していた。


「マスター、魔法使い、いませんね」


「獣人は見かけるけど、あと奴隷かどうかなんて見分けがつかん」


俺はこいつに、この冒険者ギルドの冒険者の人員構成の分析を頼んだ。


今後の方針を検討するためだ。



それで


「見習いなんで遠慮したんですよ。混雑は避けました。いつも

 この時間まで混んでるんですか」


「大体な、早く用件を言え」


「見習いは魔法使いの人とパーティを組めるんでしょうか。

 この冒険者ギルドに平民の魔法使いの人っていますか」


「お前、本当に魔法に興味があるんだな」


少しあきれて


「平民にも少しは魔法使いはいる。でもこの辺にはいないな。

 どうしても会いたいなら王都に行け。たまには見かけるだろう」


「そうですか、あと魔法袋って、この辺で売ってますかね」


「それも王都だな。それよりさっさと稼いでこい」


了解です。


とにかく王都に行けばいいんですな。


……


「マスター、王都、群馬に行きましょう。アクセル8倍速で1日で到達できます」


「待て待て、380キロを1日で走破したら、身体がおかしくなる。

 俺は一生ここで暮らすんだ。国情を知らないとまずい」


「そうですね、少しあせりました」


「あと9日経たないとお金の準備はできない。

 早く行っても魔法袋は買えない。

 取りあえず神奈川、東京、埼玉の冒険者ギルドは全部立ち寄る」


「……」


「不満か、じゃあ、お前の提案も聞いてやる」


「マスター、群馬の冒険者ギルドで魔法使いを探します」


「却下」


「なぜですか」


「毎朝早起きして魔法使いを探すなんて、まっぴらごめんだ。

 それに魔法使いが15歳の駆け出しの仲間になる確率はどのくらいだよ」


「かなり低いかもしれません」


「お前、俺の指示に従う気がないんじゃないか」


「いいえ、マスターを思い通りにしようとは考えておりません。

 現地人が主体的に行動することが条件で調査できるのですから」


俺は現地人らしい。俺の意識や記憶を少年に転送したのにな。

これでも法令順守をしているのかね。


「信じられんな、気に食わないのなら、お前がこの身体を思い通りにすればいい」


俺は感情が抑えられなかった。

こいつの発言に切れちまった。


「マスター、落ち着いて下さい」


「俺は冷静だよ。お前さんは一度死んだ俺を救った恩人だからな」


「マスター、やはりご説明が足りなかったようです。少し冷静に話を聞いて下さい」


丹沢山塊を単独で縦走中に俺は滑落し、重傷を負った。腹部が裂けていた。

身動きできずにそれでも3時間は生存した。それで俺の一生は終わった。


「マスター、少年は一度死にました。

 肉体を修復してマスターを転送しました。

 少年を殺していません。本当です」」


「信じられん。どうやって確認した」


「少年は狩猟中に大型の獣と遭遇し負傷しました。

 心臓停止1時間を確認しました」


「お前は負傷した少年を放置したんだな」


「マスター、我々にもルールがあります。生存している現地人に手を出しません。

 マスターも同じです」


「なぜそんなことをする」


「4級惑星は小規模な調査ができます。協力者として現地人も利用できます。

 しかし協力者に一定の知識レベルが必要です。

 少年を蘇生しても協力者になってくれません」


「だから俺なのか」


「そうです。マスターを乗せて、この惑星にやってきました。

 利用可能な肉体を捜すのに1ヶ月かかりました。

 マスターのお怒りはもっともです。

 日本は心停止24時間ですね。

 まだ生存中なのでしょうから。

 でもマスターも少年も24時間経過しても死亡確率99%でした。

 24時間後では、意識や記憶のサルベージはかなり困難です。

 だから、まあ、仕方ないじゃないですか」


釈然としない。


「少年は現地人だ。俺は違う」


「マスター、地球も3級惑星で調査対象です。

 少年は4級惑星の住人に過ぎず、依頼達成確率はわずか10%、3級惑星の協力者は80%です。

 我々はこの選択しかできませんでした」


「わかったよ、この件はそういうことにしておこう」


「マスター、信用して下さい」


そう簡単に信じられるか。


だけど真実はこれからも決して判明しない。


こいつはこの惑星の調査に俺を利用している。


俺もこいつを徹底的に利用する


「了解した。話がそれたな。

 俺は魔法使いを集団で探そうと思っている。

 冒険者ギルドで平民の魔法使いを探してくれる組織を作る。

 組織の表向きの目的は魔物を退治する冒険者の支援だね」


「マスター、冒険者が見習いのお手伝いをしてくれますかね」


「無理だろうな。でも冒険者だった奴隷を購入すればいいんじゃない。彼らに毎朝探してもらおうよ。

 それに俺も守ってもらいたいしね」


「マスター、我々の世界も地球と同様で奴隷制度はありません。そのような発想は思いつきませんでした」


「集団だと効率的だろ。それに構想している奴隷組織は人道的にする予定だ。

 5年奴隷が大半だから最終的には平民中心の組織になるし、安全で収入が高いと評判になれば、

 魔法使いが志願して入りたいと思うようになるかもしれない。

 組織に魔法使いが所属してくれればお前さんも調査しやすいだろ」


「マスター、万全のサポートをお約束します」


「まあ最初の5年は組織運営と平行して、魔法使いと魔道具も探すけどね」


……



俺は鎧を購入し、床屋さんでお願いして、かっこよくしてもらった。

こちらの流行の髪形はわからないからな。


「マスター、これで少年もきっともてますよ。

 少年は文字は書けませんが、狩りを見るとかなりの実力者ですから」


「そうかな、それならいいが」


俺はかなり少年に負い目がある。俺は結構長い人生を送った。

登山で死んだが、まあそんなこともあるとは覚悟していた。

でもこの少年の人生は短すぎる。


「少年の希望はとりあえずかなえる。俺が嫌でもだ。お前さんに依頼がある」


「マスター、お伺いします」


「お前、俺と一緒に狩りをしろ、いつもだ」


「いつも一緒にいますけど」


「違う、俺の中から出て手伝えってことだ。俺と少年を運んだのは、どうやってだ。

 人型アンドロイドみたいなものがあるんじゃないのか」


「マスター、理由をお聞かせ下さい」


「少年が寂しがっている。俺はアクセルを使わないと狩りができないからな。

 当然、ほかの冒険者と一緒に狩りはできない」


少年は落ち込んでいた。


「お父さんが死んで2ヶ月、立ち直って狩りを始めた。お父さんがやっていた冒険者になろうと

 努力していた。ずっと1人でだ」


冒険者になりたかったのは1人が寂しかったからだ。


「このままではずっと1人だ。俺の相棒には条件がいる。秘密を守って加速できる冒険者だ。

 これができるのは残念だが、お前さんしかいない」


「マスター、我々は現地人との直接の接触は基本的に禁じられています」


「協力者だったらいいのはなぜだ。直接の接触とはどんな事だ」


「殺人、略奪、強姦等の人道的でないこと、それに調査惑星の政治的な介入や資源が枯渇するような惑星外持ち出しも

 禁止です」


「俺がこの惑星を征服するのは駄目ってことか」


「マスター、協力者は現地人です。それは問題ありません」


「おかしいじゃないか、俺はお前さんから膨大な資金提供を受ける。傭兵を雇って戦争だってできる」


「惑星外生命体が現地人の意思を無視して操作するのが問題なのです。マスターは地球人ですが

 地球は3級惑星ですし、少年は間違いなく現地人です。問題ありません。

 過去に意識操作して、協力者に新たな王制を築かせた生命体が有罪となりました。

 この場合、協力者は協力者とは認定されません、現地人です」


3級以下の惑星の人間はその法律は適用されないんだ。

俺は野蛮人ってことかな。


「マスターの依頼で、我々が殺人、略奪、強姦を行うと有罪です。戦争行為も駄目です」


「殺人幇助、略奪幇助、強姦幇助、戦争幇助は」


「地球の法律ではそんなのがありましたね。そんな法律はありません。

 実施したら有罪ですが、それ以外は無罪です」


「協力者の殺人を伴わない護衛、現地人との会話、魔物の殺害はどうなんだ」


「現地人を殺害しないのであれば護衛は可能です。

 現地人との会話は問題ありません。この惑星の魔物は人型の知的生命体とは認識されません」


「お前さんの国の政治体制は王制なのか」


「マスター、その質問にはお答えできません。開示できる情報ではありません」


無理か。


「大体わかった。お前さんに依頼したいことは、法律に触れない範囲で、俺の護衛、現地人との接触、魔物の狩り、

 場合によっては、戦争幇助だ。できるか。俺だって1人でぶつぶつ言っている姿を見られたくない」


はずかしいからね。


「我々がマスターを選択したのは正しい判断でした。ご依頼があれば、我々の人型アンドロイドを派遣できます」


「依頼があれば、問題ないのか」


「初対面で、男性の現地人に女性の人型アンドロイドが説明すると、意思操作が疑われます。とにかく現地人の意思が

 問題なのです。協力者の依頼で我々はサポートを開始します」


そうだったのか。


こいつとの話を後回しにしたのは間違いだったな。


「耳の中でお前さんの声が聞こえるの嫌なんだよね。会話の方がありがたい」


「マスター、こちらも少しお聞きしたいことがあります。

 まず性別と名前を決めてください」


「お前さんは女性型AIなんだろ。名前くらいあるだろ。それでいい」


「……クレア・ブルーです。それで外見はどうします。少年の村の少女にしますか」


少年の記憶の少女か。


気をきかせたつもりかな。


「それは止めろ。俺の好みも止めておけ。外見は少年と一緒にいて不自然でなければそれでいい。

 装備は少年と同じでここに来い。ギルド登録をしてもらう。どうやら戸籍はないから登録できるだろう」


「マスター、それでは出発させます。3時間後到着します」


「到着したら、すぐに登録しろ。俺は立ち会わない。変なフラグが立ったら困る」


俺はこのあとゴブリンを20匹狩った。剣はゴブリンの剣が5つ、銀貨65枚の収入だ。


2時間くらいたったので、街に戻り、ギルドでおじさんに依頼完了の手続きをしてもらった。


「マスター、もうすぐ街に到着します」


俺はギルドを出た。

昨日の宿でもう1泊するつもりだ。


「マスター、部屋は同じにして下さい。護衛になりません。別室だと今まで通りの会話になってしまいます」


「ご主人、2人用の部屋でもう一晩お願いします」


「おや、パーティメンバーがきまったのかい。よかったじゃないか。銀貨6枚、部屋は210号室だ」


「ありがとうございます」


とんとんとん。


部屋に入って、2つのベッドのうち、1つに腰掛ける。


「ギルドの登録は問題なさそうか」


「はい、17歳と判定されました。レベルは15です。

 いま説明を受けています」


「なぜだ。考えてみれば、おかしいじゃないか。アンドロイドだろ」


それに3つも年上だ。


「マスター、我々の生体技術ですよ、人間と言ってもおかしくありません。

 生殖機能はありませんが、生殖行為は可能です」


萎える話だ。


「これから俺をジンと呼べ。マスターじゃ外聞が悪い。俺もできるだけクレアと呼ぶ」


「ジン、嫌そうですね」


「少年のためだ。仕方がないとあきらめる」


俺はドキドキしている。


少年は初心だな。


15分後、


「ジン、宿に到着しました。迎えに来てください」


とんとんとん。


宿のカウンターの前に、ブロンドで長身の少女が立っていた。


「クレア、ご苦労さん。疲れたかい」


目も金色だ、ちなみに少年は黒髪で目は青い。


「ジン、急にいなくなったと思ったら、急に呼び出してさ。

 それに迎えにも来てくれないなんて酷いじゃない」


俺は長身の女が好きだ。こいつ、気をきかせたのか。嫌なやつだ。


「ごめんよ、食事おごるから許してよ。ご主人、美味しいお店をご存知ですか」


「急にいなくなっちゃたのか。かわいそうじゃないか」


ご主人は笑いながら、お店を紹介してくれる。


「ここから50メートル先の角を左に曲がって、3軒目の酒場の食事は

 ちょっと高いがおいしいと評判だ。きっと彼女も許してくれるよ」



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