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相棒頼みで生きていく  作者: 青葉一馬
5/29

神奈川南西地区の酒場


紹介された宿屋もガラス窓ではなかった。

銀貨3枚、朝夕の食事付だ。お部屋はまたも2階で

昨日の宿よりは大きくて、ちゃんと部屋番号があった。

205号室。


「マスター、銭湯行くんでしょ。どうするんです、衣類」


ジン・タンくんは着の身着のままである。

下着も替えなし、服も1着、鎧も着けてないのである。

どうみても文明人ではないし、冒険者にも見えない。


買うしかないよね。


「宿のご主人に聞いてみるよ」


「マスター、買い物して、そのまま銭湯に入るのでしたら、

 ロッカーがないと預けられないのでは」


実際、初めての時って問題噴出するよね。

海外に行ったときなんか特に。

通貨の両替、レンタカー。俺の時代はガソリン・スタンドはサービス・ステーションだったから

米国のセブンイレブンで初めて自分で車にガソリンを入れた。

米国にビジネスで入国するには、米国大使館でビザを事前申請しなければいけなかった。

国際カードでなければ、ホテルは滞在期間のキャッシュ前払いだったな。


最初は米国、それでタイ、カンボジア、マカオ、台湾、ペルー……

アンコールワットとかマチュピチュ、感動したなぁ。


前世を少し思い出しちまった……


とんとんとん。


宿のご主人はとっても、気さくな感じで


「銭湯は銅貨25枚だよ」

「ロッカーはある、盗まれたら困るだろ、見張っている人がちゃんといる」

「古着屋は銭湯の手前だな」

「防具屋はギルドの近くにある」


と教えてくれた。


なんだ、都合よくあるじゃない。鎧は明日だな。


てくてくてく。


古着屋さんは、結構大きかった。

店員さんが2人もいる


選んだりするのは面倒なので


下着を3セット、冒険者が着るような服2セット、それらを入れる大き目の袋2つ、タオル2つを

選んで欲しいとお願いした。


「下着は銀貨6枚で18枚、冒険者服は20枚で40枚、袋は3枚で6枚、タオルは1枚で2枚」


「合計銀貨66枚のお買い上げですが、大丈夫ですか」


びっくりした。衣類って高級品なんだ、古着屋なのにな。


こちらは駆け出しの冒険者で月収金貨1枚の身の上だ。まけさせよう。


「すいません、少し予算を超えちゃいしました。これって買いすぎですかね」


店員さんは笑って


「確かにこんなまとめ買いする人は少ないです。でもその代わり交渉されますね」


「どのくらい安くなりますかね」


「全て1枚引いて、銀貨55枚でいかがです」


「お願いします」


……


風呂の後はさっさと帰って、宿で桶に水をもらって、リュックを丁寧に清掃した。


血がついたのって嫌じゃん。


街には床屋さんもあった、明日は少年をかっこよくしないとね。


宿屋で食事してから、教えてもらった酒場に向かった。


「マスター、ご機嫌ですね」


「風呂は命の洗濯とはよく言ったもんだ」


紹介された酒場の入り口でしばらく見回す。


ギルドのおじさんは居た。大体紹介してくれる酒場は

自分が良くいく酒場の筈。理論的中である。


なので


「助かりました」


と声をかけた。


「お前か」


不機嫌そうだな。でも大丈夫でしょう。


「ご一緒してもいいですか」


「かまわんよ」


席について、エールを頼む。


「……」

「……」


しばらく無言。


「マスター、無理しなくても、あっちにきれいなお姉さんが働いてますよ」


どういう意味だ。


「……」


エールがきた。


「はじめての依頼はこなした気分はどうだ」


「最悪です」


「なんでだ」


「だってそうでしょ、常識ないって言われました」


ごくごくごく。


「……」


「お父さんは誇り高い狩人だったんです。

 農民に獣の肉を提供するのが役目だって……

 僕が常識がないってことは、誇り高くないってことでしょ」


少し息をついてから


「だから明日からは狩りは獣中心に戻そうかなって思ってます」


「待て待て、どうしてそうなる」


「……」


俺は15歳の少年の配役だから、これでいい。


ごくごくごく。


「誇り高くないってことはないぞ」


「すいません、エールのおかわりを。あとハムとチーズを」


「知らなかったんだから、お前は仕方がない」


「そうでしょうか」


「常識はいろいろあるが、少しずつ教えてもらえばいい」


「ええ、でも知らない事がたくさんあるんです。昨日も女性に

 奴隷になっちゃうよって言われました。奴隷制度とかも

 よく知らないですし、貴族様は怖いっても聞いても、

 まったくわからないんです。これから王都に行こうと

 思ってるんですけど不安だらけなんですよ」


「マスター、話の展開に無理があるような」


耳の中で声がする。


エールがきた。


いいんだよ。

無理で。

危うい少年なの、俺は。


「お前、王都に行くのか」


「ええ、ハムとチーズつまみますか。ああ空いてますね。

 おごりますよ、エールでいいんですか」


「若い奴におごられるいわれはない。少し話を聞け」


「すいません、聞きますよ。でもなぁ魔法も気になるし。

 エルフを事を聞いても誰も教えてくれない、はあ」


「マスターはここでいろいろ聞いちゃうつもりですね」


ええい、少し黙っていろよ。


ごくごくごく。


おじさんもエール追加したな。

いつもはどのくらい飲むんだろうな。


「……お前の知りたいことは何だ」


「常識的なことです。特に若い冒険者が奴隷になりやすい、半分くらい

 って聞いて、びっくりしました」


「借金奴隷だな、農民、冒険者の順に数が多くなる」


「冒険者の奴隷が多いんじゃないんですか」


「そんな筈がない。人口の6割が農民、1割が冒険者、人頭税が払えないとな。

 5年間奴隷になる。奴隷を買う奴は多いな。持ち主が奴隷を利用して収入を得る。奴隷の人頭税は金貨1枚、

 冒険者は金貨5枚だ。若い奴隷でも利益があがる。奴隷は人口の2割って言われているな」


奴隷が20%か。それで貴族、士族が残り10%。10人にひとりが支配階級ですか。


「今の話を聞くと冒険者の奴隷が多いは迷信ですね」


「迷信だな。農民は人頭税が払えなくなると子供を奴隷商人に売って借金の足しにする。それだけだ」


ごくごくごく。


「若い冒険者が奴隷になりやすいのは事実だな。レベルが低い、だから収入も低いだけだ。

 同額の収入なら冒険者の方が経費が高いだけ農民より奴隷になる確率が高い」


ひどい話だ。


「あとの奴隷は、戦争奴隷と犯罪奴隷、終身奴隷に落とされる。理由は名前の通りさ。

 エルフ、狼、犬、ウサギ、猫などの国がかつて滅ぼされて、みんな戦争奴隷だ。

 終身奴隷の子供は平民になることを許されているが、エルフは寿命が長いので今でも奴隷だろう」


おじさんがジョッキをあおる。


「獣人は差別されている。農民に向いていない種族もいる。冒険者になることが多い。

 だから獣人は今でも奴隷の比率が高いな」


戦争奴隷と犯罪奴隷は終身奴隷なのか。


ごくごくごく。


おじさんは結構いい調子になっている。


「そういえば、自由人って方がいるって聞きまし「自由人は5分だ、冒険者の半分、人頭税は金貨12枚だな」」

「裕福な商人、医者、宗教関係者がそうだ。宗教関係者は無税だという話を聞いたことがある。知り合いが

 いないから、よくわからん」


ということは、20人にひとりが支配階級ですかね。


「貴族様と士族様は税金がない「あたりまえだ。貴族は1分、士族は4分と言われている」」

「実際、王様と貴族に富は集中している。金、物、人全てだ。

 士族は特に下級士族なんかは冒険者より貧乏な奴もいるな。税金がないだけだ」


貴族は100人にひとり、士族は25人にひとり……


ごくごくごく。


「貴族と士族は基本的に王都の中心に住んでいる。冒険者ギルドは王都のはずれにある。

 だから貴族とはめったに遭わない。だけど士族は結構見る。治安維持や徴税、徴兵が役目だからな。

 貴族と士族は平民を守護していることが誇りだそうだ。

 だから平民に無理難題を言わないことになっている」


おじさん、いい調子だ。結構、エールもお代わりしてるし。


実は俺も危ない、おじさんとご同様だな。


聞き役に徹していたが、最後に貴族と魔法について聞く。


「じゃあ、心配する必要ないんですね。貴族の方と話したり、魔法について話したりとか」


「それは駄目だ」


いかん、目が据わっている……


「おまえ、礼儀や服装ちゃんとしてないだろ。変なこと言って貴族や士族が不敬罪といったら即奴隷だぞ。

 それに貴族や士族が魔法をほぼ独占している。魔法は強力だし、金になるからだ。下手に触れるな」


あら、おっかない。

しかし魔法の調査はこれじゃ難航しそうですな。

眠くなってきた……


「おまえは結構やるな。今日はちょっとびっくりしたぞ。ゴブリンを13匹なんてレベル25くらいなきゃ

 ふつう無理だ。冒険者はレベル25に上がると騎士になれる。冒険者が騎士になって、レベルをもっと

 上げれば名誉士族になれる可能性がある。名誉士族は少し給料が安いが、勧誘されるぞ……」


ごくごくごく。


なんとも微妙な話だ。


貴族や士族に関わらなければOKでいいんじゃない。


いや、そうもいかないか。支配層が魔法を独占してるんじゃ接触しないと駄目かもしんない。

できれば接触しないで済んだらいいな。





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