表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相棒頼みで生きていく  作者: 青葉一馬
2/29

ガーラ村

 30分くらい歩くと小さな集落が見えた。

 なんかしきりに話しかけてきたが無視してた。ずっと少年の記憶をさぐっていたから。

 少年の意思も感じられるのは不思議な気分だ。

 ずっと気になっていたことをたずねる。


「俺、こっちの会話は大丈夫かな。さっきまで日本語しゃべってたんだろ」


 俺が知らない言葉をしゃべるので、少年はとまどっていた。


「ああ、やっとお話していただけました。聞いてましたか」

「聞いてなかった」


 ひどいな、俺。


「マスター、この子の言語野で声帯に変換しますから、大丈夫です。自動切換えです。

 でも、これからは現地人との会話はこちらの言語に固定します。よろしいですね」


 そんなの欲しかったな、英語苦手だったんだよね。

 親父の口癖は「これからは英語だ」で聞くのが嫌だっだな。


「語彙はどうなるの」

「現地語に該当する単語がなければでません。口パクですね、あるいは直接出力です」


 かっこ悪い。


「マスタのお国の“こんにちは”はないみたいです。会釈はするみたいですが。“こんにちは”を直接出力しますか」

「止めとく」


 翻訳が少し気になったので聞いてみる。


「俺がここガーラ村を、例えば銀座だと認識して、銀座と発声したら、実は現地名のガーラ村に自動切換えするって事?」

「……マスター、少年が王都と呼んでる場所の地名、行ってみないとわからないですよね。

もしそこを銀座と取りあえず呼称して、現地にいったら、ダラスという地名だった場合、我々の翻訳システムは以後、

 銀座と発声したつもりでも、実際はダラスと発声することが可能です」


 おお、正確な地名を覚える必要がないってことか。


「少年の言語野に俺の言語野が加わって2つに分かれているのかな」

「マスター、ご明察です。そのような認識でほぼ正解です。

 あらかじめマスターが持っている地理情報の地名を、この国の場所に付けて置けば翻訳システムが勝手に発声します。

 でも違和感が残りますが」


「どうやって、現地語を解析したんだ。会話をしないとわからないだろう」

「地球の常識だとそうなりますか。そうですね、我々は少年と会話をしました。本当の会話ではありません。例えるならば言語野と言語野の会話です」


 凄い技術なんでしょうね。


「マスター、少年の会話はこの世界では未熟でしょう。ですから知識レベルの高い人間と会話して下さい。

 そうすれば、翻訳システムはどんどん向上します」


 少年の集落は通り過ぎることにする。

 6時間も歩くと、宿屋がある大きな集落に到着できるらしい。

 そこを目標にしよう。


「今日は村を出て宿を取るつもりだ、さっさとここを出よう」

「了解です」


 移動中に村人にはあったが無視した。

 この集落は農業中心、この辺りの集落は全てそうだと記憶がある。

 親子は獲物の肉を売ったり交換をしたりしていたらしい。

 この辺りの作物は麦と野菜で、ここは平和でいいところだそうだ。それに魔物が少ない。


 ガーラ村を出るときに、急に悲しくなった。少年の感情が突然流れ込んできたから。

 年上の少女との記憶があったが、その少女は今ここにはいない。

 涙がこぼれている。不思議な感覚だ。


「マスター、どうしました」

「少年の感傷だな、思い出もあっただろうし」


 オジサンになってから涙もろくなった。その影響もあるかもしれない。


「なあ、少し頭の整理をしたい。現在把握している事をまとめてくんないかな」

「マスター、了解です。でも何から行きます」


「任せる」

「この惑星の大陸は魔素の森で8割は覆われてます。魔素の濃い場所には人間は見当たりません。少ないです。

 人間の分布状況から、ここが国であると予測してるわけですが……」


こいつの会話はまるで人間そのものだ。間を取ったりもする。


「少年の記憶では、この国は王制です。で北に王都でしたか。予測では王都地域までは400キロ以上あります。

 大規模な建築物がありますから。城下町に入るまで徒歩で20日はかかりますかね」


「この国のおおまかな地形、面積とか規模を知りたい」

「マスター、おおまかに日本の都道府県地図に例えましょうか」


「まあ言ってみて頂戴」

「マスター、ここは神奈川の南端です」


「さびれたな、神奈川」

「王都は群馬にあります。東京、埼玉を通過して移動することになりますね」


「群馬、凄いじゃん」

「残りの県は千葉、茨城、静岡、愛知、このあたりに人間がいると思って下さい」


「そうなんだ」

「近くの国はそうですね。九州、北海道に、日本海と中国、ロシアは全部魔素の森です。イメージ沸きますか」


「少しだけ」

「実は愛知にも大規模な建築物があって人口もありますけど」


「この国の人口予測は」

「5000万くらい」


「人口過密じゃん」

「マスター、おおまかな位置関係の例えです。千葉、茨城、愛知、静岡は結構大きいです。あと南は海ですね」


「了解、もう地理は終了。お金や政治の話は」

「税金は人頭税が確認されています。金貨5枚だから、年間50万円ですかね。父親は村長に分割で払ってたみたいです。

 冒険者も農民も狩人も同じ金額だそうです。あとは奴隷制ですか。税金を払えなければ奴隷に落ちる、マスター聞いてます」


「聞いてるよ、税金40%と仮定すると年収120万くらい。月収10万か、ぞっとするね」


 でもポルポトのカンボジアよりはましかな。

 俺が戦後直後に行った時は、月収30ドルの家庭があったし。


「でも納得できますね、所持金から」


 まったくだ。全財産がこんなもんだしね。貧乏だっだんだろうな。

 少年が魔法袋を手に入れることは一生なかったのかもしれない。まあ俺は大丈夫だけど。

 これからどうしようか。


 しばらくは草原が続く。

 この国は結構裕福なのかもしれないな。

 奴隷制はきっとあたりまえだ。地球だって20世紀まで存在した。

 石油とか石炭が採掘されるようになったら、産業革命が起こって、王制が打倒されるのかね。


「マスター、会話しましょうよ、こちらも不安なんですから。沈黙こわいんですよ、なにか怒らせたかなとか」


 悪かったね。


「すこし狩りをしてみよう、この辺はウサギがいるみたいだしな」

「マスター、いいですね、ぜひお願いします」


 この身体の性能を知っておきたい。


「ウサギを売って情報収集だな。ウサギなら2、3羽持っても重くないかもしれん」

「我々の生体技術、確認して下さい。サポートは万全です」

「……」


 俺はこいつに改造された。

 俺は仮面●●ダーで、こいつは○○○カーだな、例えが古いか……いずれ戦うことになる?

 ちなみにレーダーは本当だった。脳裏の平面地図に点々とターゲットが表示される。


「点々がウサギ、それとも動物」

「そうですね、今はウサギです、レーダの捕捉対象はマスターの意思で決定されますから。種類は色と形状で変えてますね……」

「俺が欲しいなという情報が表示されんだ」


 これはすばらしい。弓を構えて左前方に走る。脳裏ではターゲットまで50メートル。

 でもどこにいるかわからん。ウサギは身を潜めてるだろう。


「どこにいるかがわかるのは素晴らしいね。でも視認できない」

「マスターの目、改造されてます。そうですね、望遠レンズにもなってますよ」


 なるほど、目をこらすと見えてきた。

 少年の記憶では30メートルくらいで射るみたいなので、もう少し近づいて弓を引いた。

 少年の意思に身体をまかせる。


 びゅん。

 ウサギに命中。


「マスター、お見事です」

「俺は感動している」


 少年の腕前は素晴らしい。地球で俺は散弾銃を撃ったことはあるが獲物を取ったことはない。

 オジサンでは絶対無理だ。ウサギは30メートルまではほとんど逃げない。時間をかけずに3羽狩った。

 レーダーのおかげで接近、射るで終わり、簡単な作業だ。


 ウサギは地球のものより一回り大きい。

 リュックはかなり重くなった、もう入らないかもしれない。

 これからは紐で縛って抱えるか。


「これでレベルって上がるのかね」

「さあ、冒険者ギルドの道具で測るそうですからね」

「おたくの世界でレベルって測れたの?」

「体重や身長なら。マスター、大体ギルドで何を測定しているか全く不明です。要調査です」


 もっともだ。

 それも調査目標でした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ