デーモ君学校に行く
待っていた。30年間ずっとこのときを待っていた。
「ああ、ついに僕は人間と一緒に学校生活をおくれるのかぁ…」
思えば色々な困難があった。
魔力を増やす訓練は苦ではなかったが、あればあるほどいいものなので終わりがなかった。
何度か限界が見えた。それでも人間と仲良くするためのことを考えて何度も限界を超えてきた。
おかげで30の若さで魔力に関しては本人の気づかぬ間に魔族の中ではトップクラスになっていた。
人間社会についてまとめたノートを見直す。今まで何度も見直したノート。もうボロボロだ。
「何回も読み直して丸暗記しちゃったなぁ…このページは”曲がり角はダッシュしろ。そうしたらパンをくわえた女の子とぶつかって仲良くなる”に”風が騒がしい日には土手で空を見上げてろ”か…本当にマイラさんには感謝してもしたりないよ。本人は自信がないなんていっていたけど本当ならこんなに具体的に教えてくれるわけないじゃないか」
最後に変化の術を試す。
変化の術を使えば身長350cmから180cmまで体重300kgは70kgに変化できる。
人間の平均的にみれば大きいかもしれないが、別におかしいということはない。
「よし。準備完璧!遅刻をしないようにもう寝よう」
次の日、遅刻なんてベタなことはせず十分時間の余裕をもって学校についた。
「すごい!こんなに人がいっぱい!」
周りがみんな僕を見ている。まあこれは自分の身長の高さで少し目立ってるだけだろう。
ヒソヒソ話しているようだが僕には聞こえる。あの人背たか~いとか予想どうりのことを言っている。
そんなことよりまず教室にいこう。マイラさんのアドバイスではとりあえずクラスメートと仲良くしろとあった。
クラスにつくと隣の席の生徒に声をかけられた。
「よぉ、あんたはじめて会うな!俺は雄二。これからよろしくな」
おお、もしやこれがマイラさんがいっていた情報通の親友ってやつなのではないか。
「こちらこそよろしく。僕の名前は出衛門。デーモってよんでよ」
「出衛門か…すげえ名前だな。まあいいやよろしくデーモ」
早速1人目の友達ができた。すごい順調だ。やっぱ人っていいな。こんなに気軽に話しかけてくれるなんて…この調子でどんどん友達をふやそう。
雄二と話しながらいると先生がやってきた。
さっそく先生は軽い自己紹介をして次に僕たちに自己紹介を求めてきた。
1人ずつ自己紹介をしていく。
「俺の名前は池田。サッカーで全国一位を目指す!」パチパチパチ
ああ、あのときを思い出す。
「私の名前は高戸。みんなと仲良くしたいな」
人間を労働力にするだとか、皆殺しだとかひどいよまったく。
「僕の名前は早草。特にないです」
ここにきて本当によかった…
ああ、次は僕の番だ。
「ええ次は、真族 出衛門君」
先生に名前を呼ばれた。まずはこの挨拶完璧にこなしてみんなの印象をよくするんだ!
「はいっ!!!」
全力で返事をする。
その瞬間。
デーモに悪気はなかった。ただはじめての人の前の挨拶でつい力が入ってしまっただけなのだ。
魔族トップクラスの魔力をつい緊張で右手に集中させてしまっただけなのだ。
デーモの右手が輝きだす。
次の瞬間デーモの右手から放たれた黄金の閃光は天井を突き破り天井に穴を開けた。
さらにデーモを中心に爆風がひろがり生徒全員を吹き飛ばした。
爆音の後の静寂。
この教室で無事なのはデーモとその机だけだった。
止まらない汗。
や、やってしまった……
デーモ 30歳 身長180cm 体重70kg(人間変化中)
いきなり教室を破壊する