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王子、王女。そして魔法

「ところでサツキ、母さんは何処で待っているんだい?」


「転移の間です。アッシュさまとユノさまも一緒です」


「今日来るって言ってたもんな。忘れてたけど」



僕とサツキは、母さんの待っている転移の間に向かって家の廊下を歩いている。公爵家の屋敷の廊下とあって、置かれている調度品が、いちいち豪華だ。


転移の間というのは、この家に伝わる古代遺物(アーティファクト)のひとつである、[転在門(トランスゲート)]が置かれている部屋のことだ。[転在門(トランスゲート)]は、オルテシア家の初代当主が迷宮に潜って手に入れたものらしい。

初代は冒険者で、初代国王家の命を救ったことから、貴族。それも公爵にされたそうだ。


……いやいや、命の恩人だからと言っても、単なる冒険者風情を公爵に任命するなんて………初代国王はなかなか変わり者だな。

でも、そのおかげなのか、オルテシア家は、王家との仲が、すごく良好だ。さっき名前がでたアッシュとユノはこの国の王子と王女である。王位継承権は、アッシュが第二位で、ユノが三位。第一位は二人の兄であるクルト殿下だ。

アッシュとユノの二人とは、サツキと同じく幼馴染みで、父さんと母さんから剣と魔法を習う兄弟子、妹弟子の関係。二人と気楽にため口で話せるのって、僕位だと思う。

お、転移の間に着いたか。この屋敷、無駄に広いんだよなぁ……。まぁ、公爵家の屋敷だしね、しょうがないか。



「お、レイ、やっと来たか。待ちくたびれたぞ!」


「むぅ、遅いぞ、レイヤにぃ」


「レイちゃん、また本に夢中になってたでしょ?まったくもう、しょうがない子ねぇ」



転移の間に入ると、そこにいた人物が、次々に口を開いた。


最初に話しかけてきたのが、齢六歳の第二王子、アッシュ・ロード・アーシオン。

銀髪蒼眼の美少年だが、幼さが抜ければ、立派な美丈夫になると予想される。魔法より剣を好み、父さんの指導に力を入れている。僕の兄さんと仲がいい。兄さんは次期近衛騎士団長だから、父さんにビシバシ鍛えられている。なので、同じく剣の指導を受けている

アッシュと仲がいいのだ。


二人目の僕のことをレイヤにぃと呼ぶのは、第一王女ユノ・ロード・アーシオン。歳は四歳。

兄のアッシュと同じ銀髪蒼眼で、勝ち気な美少女。今は、その形の良い眉を不満げにひそめている。

ユノはサツキとは違ったベクトルの美少女だ。サツキが綺麗系なら、ユノはかわいい系かな?将来がとっても楽しみだ。

アッシュとは逆に、魔法が好きなユノは母さんに指導を受けている。僕も魔法が中心なので、ユノ兄弟子としてがんばっている。



「遅れてごめん。それと、いらっしゃいアッシュ、ユノ。母さんも、おかえりなさい」



母さんの名前は、クレア。クレア・オルテシア。さっき言ったと思うが、王国魔導士団の団長を務める王国最強の魔導士だ。

それに、若くて綺麗。まだ二十歳いってないんじゃないかってくらい若い。

金髪碧眼の美女が母親って、息子としては色々困る。何がとは言わんが。

団長とあって忙しい母さんは、家を開けることが多い。その間僕は一人寂しく広い屋敷で暮らさなければならない………なんてこともなく、サツキや使用人のみんなと仲良く暮らしている。




閑話休題(それはさておき)




僕らが転移の間に集まっている理由は、魔法の訓練を行うからだ。[転在門](トランスゲート)で誰もいない荒野にいき、そこで魔法の訓練を行うのだ。普通の訓練場だと、直ぐに壊れちゃうらしい。

らしい、と言ったのは、僕が荒野以外で魔法の訓練をしたことがないからだ。



「よし、四人とも魔法陣にのってね、直ぐに起動させるから」



母さんが、そう言ったので、四人で[転在門](トランスゲート)の魔法陣にのる。すると、横に立ったユノが、声をかけてきた。



「今日は負けないからな、レイヤにぃ」



負けず嫌いな、ユノらしい言葉だ。微笑ましさに頬がにやけそうになる。



「いや、今日も僕が勝つよ。ユノ」



ちなみにユノとしているのは勝負は、どちらがすごい魔法が使えるかと言う子供らしいものだ。

ま、勝負自体は僕の圧勝なんだけどね。負けたときのユノの悔しそうな顔が可愛くて、ついつい本気でやってしまう。



「よし、じゃあ跳ばすよ~。『我望む場所への扉よ開け、起動せよ、転在門(トランスゲート)』」



母さんの詠唱が転移の間に響きわたり、魔法陣が高速回転をはじめ、強く発光する。



「私も直ぐにいくからね~」



母さんの間延びした声を最後に、僕たち四人の意識は、虚空へと旅立っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



一瞬の意識のブラックアウトの後、目を開くとそこは、すでに転移の間ではなかった。

一面に広がる殺風景な景色。岩と砂で造られた、灰色の世界。



「ふぅ、多少なれたとはいえ、まだまだ気持ち悪いな、これは」


「うぅ、レイヤにぃ…………」


「レイヤさまは、大丈夫ですか?」


「うん、僕は平気。サツキも大丈夫そうだね。サツキ、アッシュとユノに、『治療(ヒール)』をかけてもらえる?」


「わかりました。アッシュさま、ユノさま、失礼します。『その身に巣くう害悪を祓え、治療(ヒール)』」



サツキの手に暖かな光が灯り、その光が二人を包むと、青白かった二人の顔色が、どんどん良くなっていく。



「……うん、ずいぶんと楽になった。流石だな、サツキは。やはり将来は俺の妾にならんか?その時は、レイヤが正妻と言う形でもいいぞ?」


「おぉ!サツキとレイヤにぃがお姉さんになるのか!にいさま、珍しく冴えているな」


「誰がなるか!そもそも僕は男だ!。どうやって正妻になるって言うんだよ。……それと」



僕はサツキの肩をぐっと抱き寄せ、ふざけた事を抜かすアッシュ(バカ)を、ギロリと睨み付けて、いい放つ。




「サツキは、僕のだ。誰にもわたさない」




………………う、うわぁ。自分で言ってみてなんだけど、すごく恥ずかしい。アッシュはニヤニヤしてるし、ユノは何故か不満げだし、母さんは微笑ましいものを見るような目で僕を…………………って、



「か、かかかか母さん!?い、いつ来たの?てか、いつから見てた!?」


「ん~?アッシュくんが、『レイヤが正妻と言う形で~』って言ったところくらいからかな?」


「い、一部始終………」


「わ、レイちゃん、難しい言葉しってるねぇ」



し、死にたい………。親に女の子の肩抱きながら「誰にもわたさない」なんて台詞はいてるとこ見られるなんて、どんな羞恥プレイだよ…………。



「ぷ、く、あははははははは!流石はレイヤだ。本当に面白いなぁ」


「黙っとけ、冴えてることが珍しい残念王子が」


「………ところでレイヤにぃ。いつまでサツキを抱いているつもりだ?」



え?あ。さ、サツキの肩抱いたままだった!

急いで離すと…………うおっ、サツキの白い肌が、耳まで真っ赤だ。恥ずかしい思いさせちゃったなぁ。



「ごめん、サツキ。いきなり抱きしめちゃって」


「い、いえ、大丈夫です。…………あの……えっと………い、嫌じゃ、なかったですし……」


「おーい、おふたりさーん。もう初めてるよー」



母さんの声にそちらを振り返ると、アッシュとユノは、それぞれの訓練を開始していた。僕たちも急がなきゃ。



「よーし、ふたりも来たし、始めよっか。サツキちゃんは、『解毒(アンチポイズン)』の練習。レイちゃんとユノちゃんは、こないだ教えた炎の属性魔法の基礎を使って、自分で考えた魔法を発動させてみよっか。いーい?しっかりイメージしてやるんだよ?」


「「「はい!」」」



サツキは属性魔法ではなく、生命魔法という治療や身体能力向上の魔法が得意なので、一人別に練習を始めた。



さて、ここで一度、魔法というものについて、詳しく説明しよう。

魔法とは、『魔力を用いて、超上的現象を引き起こすもの』。簡単に言えばそういうことだ。そして魔力とは、『イメージを具現化するためのエネルギー』といったところか。

魔法の発動に必要なのは、明確なイメージと、それに見あった魔力。この二つである。

では、詠唱とはなにか。詠唱は、イメージの補助をするためのものであり、絶対に必要という訳ではない。イメージを極めれば、無詠唱で、魔法をうつことができる。精霊魔法や古代魔法。禁呪などは、それ以外のものも必要になってくる。

まぁ、だいたいこんな説明でいいだろう。



「よし、レイヤにぃ。妾が先にやるぞ。よーく見ておけ」



ユノが先にやるのか。さてさて、どんな魔法を見せてくれるのかな?


ユノが目をつぶり、すぅ、と息をすった。



「『揺らげカゲロウ。異界の妖狐の如く』」



ユノの詠唱にあわせて、ユノの魔力が高まっていく。その量は、四歳のものとはとても思えない。



「『揺れ動く炎尾。うごめき爆ぜて燃え上がれ」』



ユノが静かに目を開く。そしてーーー



「『妾に誘われ踊り狂え。饗宴の九尾(ナインテイル)』」



ゴウッという音とともに、ユノの背後に炎で形づくられた狐の尾が現れる。その数、九。

ユラユラと揺れていて正確な数がとらえにくいそれは、ユノの命令に従順し、縦横無尽に動いている。地面に叩きつければ、

そこが砕け融解しているので、威力ももうしぶんない。

数十秒で炎尾が消えると、ユノはガクッと膝をつく。魔力を使いすぎたのだろう。ユノに駆け寄り、体を支える。



「はぁはぁ………、ど、どうだ。妾の魔法は……。すごかっただろ?」


「うん。さすがユノだね」


「…………でも、レイヤにぃは、妾のさらに先をいくんだろ?」


「そりゃあもちろん。兄弟子として、負けられないからね」


「むぅ……」



青白い顔をしたユノを母さんにまかせ、僕も魔法の準備に入る。









ーーーーーーさぁ、イメージしろ。自分を研ぎ澄ませ。









魔力を、可燃性の高いものと、爆発性の高いものの二つに変化させる。イメージは中学校の理科の授業。酸素と水素の混合物。

それをどんどん集めていき、圧縮。さらに、炎球を圧縮したものも展開。炎球には、爆破の性質を持たせている。

その二つを、十分に僕らから離れた場所に飛ばして………








「『大爆発(エクスプロージョン)』」








ズガァァァァアアアアアアンンッ!!!




轟音が、響きわたる。

空中で激突した二つが、巨大な反応を起こし、膨大な熱と衝撃を辺りに撒き散らした。

………………えっと、やりすぎ………かな?爆発があったところに、でっかいクレーターができてる。み、皆の反応は……?

恐る恐る後ろを振り返る。そこには、耳を手で抑え、ジト目で僕を見る皆の姿が………。



「レイヤ………」


「レイヤさま………」


「レ~イ~ちゃ~ん?」


「レイヤにぃ………やり過ぎ」




「ご、ごめんなさ~~~~~い!!」

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