第06話 月夜に浮かぶ・・・・・
お読み戴き有難う。
ひょんな事からあっさりと扉の向こう.....外に出る事が出来たのだが、夜の闇でな~んも見えない。
ただ、出て来た蔵の入り口付近は、かろうじて届く月の光で見る事が出来ている。
蔵の外壁は白壁で、如何にもな、普通に見慣れた蔵。見慣れた?....ん?見慣れない?.....見慣れない方は時代劇モノの庄屋や商人の蔵を思い浮かべて下さい。もしくは某オルゴール館....。
暗すぎて、周りの風景がどうなっているのか解らないけど。取り敢えず、蔵からは無事(?)に脱出出来たので良しとする。
蔵の前でぽつ~んと立っているのも何なので....耳をすませ、周りの音を聞いてみる。
りりり、り~んり~ん、ころころ、がっちょんがっちょん・・・・・
さわさわ・・・・ さらさら~・・・・
方角がイマイチ解らないが、そう遠くない位置に....竹林や小川があるみたいだ。
蔵の中でも感じたが、聞こえる範囲内に虫以上の動物はいないみたい。
どういう訳か、この身体。
普通の日本人では見る事も出来ないはずの薄明りの闇夜なのだが、少しずつまるで『慣れた』とでもいう様に周りの風景が視える様になってきた。全く自慢にもならないが、この身体に転生する前(記憶では)は夜目が利く体質でも能力を持っていた訳でもなく、逆にどちらかと言えば若干目が悪かった。学生時代にはまったラノベやアニメ、ゲームといったモノで目を酷使していた為、二十歳を迎える前に両目とも『0.5』にまで下がった。その後、環境性~を発症した影響で近視が回復したが....それを生かす前に命をおとした。
夜目が利くという能力以外にもおかしな点が・・・・・結構前に気付いたが敢えて確信を持たない様にしていたが私は生物学的には『生きてる』とは言えない身体になっている。いや、もしかしたら生命学的には『生きてる』かも知れないが、この肉体は『地球上の動物』の肉体とは違うモノだと思う。
地球上の動物と同じ存在であるならば・・・・感じ取れないといけないモノ ”心音” 又は、 ”鼓動” が感じ取れない。自分の胸部に手を置いても、心臓が鼓動する動きも、鼓動する際に聞こえる心音も感じ取れないし、聞こえもしない。
だが・・・私は私であると『自覚』し、『思考』する事が出来、自分の『意思』で『行動』する事が出来る。
『動物』の定義を・・・・『動く事が出来るモノ』とするなら動物であると云えるかも知れないが、鼓動云々だけでなく、『地球上の生命』とは違う何かだと思う。
気付く人は気付いてると思うが、この世界のこの身体に転生してから数日は経っているにも関わらず、食料はおろか水さえも摂取せずに動く事が出来ている。
食事の事だけでなく、動物の三大欲求・・・睡眠欲、食欲、性欲。どれも反応なし。食べずに眠りもせず肉体的に疲れる事なく動き続ける事が出来るというのは....確かに有難いと思う。仮に、三欲が正常に機能してて蔵で埋もれて目覚めた場合.....蔵から抜け出す前に確実に餓死してたし。
これらから・・・地球上にあるモノで私のこの身体に近いモノ・・・・・
『人工知能(AI)』を搭載した『ロボット』・・・・・が近いと云えば近い。
近いが・・・・・地球のソレとは別物だと思う。
命失ってから、転生するまでに実際にはどれくらいの年月が経過したのか解らないが・・・・日本人であった2100年時点で、今の私の様にプログラムされずに自分で考え、自分の意思で行動するロボットは存在していなかった。.....人工知能の研究と、ロボットの研究.....単体ではそれ相応の研究成果が上がってはいたが・・・ロボット三原則や、ロボットの人権が問題として阻まれ、公式には亀の歩み程にしか進んでいなかった。
※(このまま順調に進歩する事が出来たら数十年後くらいには青狸(道具なし)か放射性物質の名のついた自立思考型ロボが地球上に誕生しそうだが....作者的には葉っぱさんのマ○チとかセ○カ、漫画ネタなら○ぃ...ホ○ホイさん・・・・なら大歓迎。)
さておき。
夜目が利く様になってきたので、見通しが付く範囲を探索する事にした。
この世界が『地球』なのか、『異世界』なのか・・・・現時点では解らない。
現時点での判断材料・・・・・
蔵の見た目や造りは・・・地球ぽい。
蔵の中にあった箱の中身も・・・・・地球ぽい?
蔵からの脱出方法・・・・・・異世界ぽさ満点。
現在の私自身・・・・・異世界ぽいが、同時に地球と云われても言い返せない。
判断しようにも、どちらの理由においても判断する為の材料がない。
少しでも判断材料.....手がかりを得る為、先ず、蔵の周りを一周してみる事にした。
蔵の周りを一周するにあたって・・・・左回りか、右回りが良いか・・・・。
蔵の中にあった何処の国の硬貨か解らないモノに委ねようと思う。
アメリカの1セントに似た銅色の硬貨の・・・・、
やたらと筋肉質な男性が彫られている方を右として、
反対側の水車小屋ぽい建物が彫られている方を左と想定する。
右手をグーにして親指を軽くひとさし指の第二関節付近に引っ掛ける様にし、親指とひとさし指の間に硬貨を載せ、親指を弾く。
キンッ
落下する硬貨を左手の甲と、右手の手のひらで抑え込む様に掴みとる。
パスっ
硬貨を落とさない様に気をつけながら、ゆっくりと被せていた右手を退けた。
左手の甲の上に見えたのは・・・・・
筋肉質な男性が彫られた方・・・・・つまり、右周り。
蔵の出入り口から蔵の壁から余り離れず右回りに行く事・・・・十数分。
木造平屋建ての小学校ぽい建物が見えてきたが・・・・・この時間帯(深夜)での木造の学校とかって止めて欲しかった。ただでさえ不気味な造りが、拍車をかけて不気味さ増量中。
勿論、人の気配なんて全くしないというか・・・・建物の壁の寂れ具合から推測するに、数十年単位で人の手がはいってないぽいなぁ。
とはいえ、外から見た感じだとちょっと補修したらそのまま居住用として利用出来そう。
この学校ぽい建物は陽が登ったら調べるとして、今は蔵周りをもう少し探索だな。
更に数分行ったら今度は、天然の温泉が湧きだしているのを見つけた。
私の身体がどういう状態なのか解らないからスルー(仮にロボだったら水気でショートしそう)しないといけないが・・・・勿体ない。生前の一番好きだったモノだけに・・・・。くっ・・・・。
温泉発見以降は何もなく無事、蔵の出入り口前に帰ってくる事が出来た。
未だ、日の出までは時間がありそうなので蔵の中の探索・・・・・。
タグ回収はもう少し先になりそう・・・・。