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はじめに…
最近、ダンジョンの近くでとある噂が流れている。
ーー迷宮冒険者にぴったりな、不思議な食べ物を売る露天商がいる。
しかし、それはいつもいるわけではない。
商品自体の在庫があまりないのか……もしくはその怪しげな食べ物の流通を制限しているのか、日にちも時間も不定期にふらりと現れては商いを行いいつの間にか去っていくという。
ここは、ルーニアム王国の地方都市、ガーロン。
国王の住まう王都には及ばないものの、100階層を超えると推測され、いまだ半分にも満たない42階層までしか開かれていない巨大ダンジョンを持つ一大都市である。
ダンジョン制覇に各地から集まり挑む冒険者相手の商売や、そのダンジョンに住まう魔物から採れる希少な魔石などを中心に物流が芳しい。
ーーそんな賑やかな町にきてから早1ヶ月。
私、エンナはその不思議な露天商を営んで噂の的になっている。
というか不思議なことをしたつもりは全くない。
ここに至るまで、私のいまだ自分でも驚くべき半生を語らなければいけないのだけど。




