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童話シリーズ

人魚に恋した男の話。

掲載日:2015/05/08

これはまだ、私が若かった頃の話だ。


当時、名家の生まれで学業優秀だった私は沢山のお見合いの申し込みがあった。

その中の一つがうまく軌道に乗りかけていたのだった。

しかし、その女は俗にいう妻にするにはいいが恋人とするにはどうもというタイプの人間だった。

見た目だって平凡そのもので、性格は控えめなのが取り柄だった。

私は不満だった。

当時、今ほど男女交際に開けた時代ではなかったこともあって私はまだ恋を知らなかった。

特別な私にふさわしい人物が何処かにいるのではないかと期待していた。


さてそんな時分だった。

気分転換に海に旅行に来ていた私は、これからの行き方、来し方について徒然考えつつ、

ぶらぶらと海際を散歩していた。

そうするとザブンという音が聞こえた。

それが彼女だったわけさ。

彼女を始めてみたときの衝撃は今でも覚えている。


思わず触れてみたくなるような処女雪のような白い白い肌。


その病的な肌の色と対をなすかのような黒檀の最高級の絹のような長い長い髪。


どこまでも深い、まるで海をそのまま映しとったような色をした切れ長の目。


小さな形のいいい鼻梁に、薔薇のつぼみのようなひそやかな唇。


彼女がほほ笑めば、どのような男でも跪くだろう。


まるで、名のある巨匠の丹精込めて書かれた絵のような現実味のない女。


けれども、彼女は質感を伴ってそこに存在していてー。


その相反する要素がどうしようもなく倒錯的だった。


これぞ、私にふさわしい人だ。

反射的にそう思った私はおびえる彼女を引き寄せて口づけた。


そうすると、なんということか彼女ははらはらと泣き始めたのだった。

女の涙を美しいと、いや神聖なものだと思ったのはあれが最後だ。

彼女を慰めようと腰に手をまわしたところ、ぬめりとした感触が伝わった。

半身が海へ浸っていたので気がつかなかったが彼女は足がなく、その代わりに

魚のような形になっていたのだ。

更に、動転する私がよく見てみると、涙は真珠へと変わっていたのだった。


そこで、始めた私は彼女が化生のものだということを悟ったわけさ。


彼女が流した涙は、違う種族同士共には生きられぬという苦しみからだったのだろう。

私の運命の人は海の中のものだったのだ。

それを悟り、彼女に別れを告げると立ち去った。

私の後ろ姿に彼女の視線をいつまでも感じていたよ。


その後、見合いの女、お前のおばあさんと結婚した。

私が察していた通りのつまらない女だったが私の魂は彼女のものだったからね。

ただ貸しているだけだ、日々自分に言い聞かせた。

さて、おじいちゃんのお話はこれでお終いだ。

面白かったかね?








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