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しょせん、同類

※ルーディス視点

俺とリディアは出会った時から、すぐさま意気投合した。

だって、そうだろう?同じ境遇の人間に会えるだなんて、まさに奇跡じゃないか?


そこから行われるようになったのは愚痴大会。それはいつからか、リディアの屋敷の庭園になった。

俺は従者のマルコを連れて、よく遊びに来ていた。人に聞かれては困る会話なので、こっそり茂みに隠れてだ。リディアもリディアで同じ境遇だったので、お互いの鬱憤をよく話し合っていた。


「ああ、早く体も大人にならないかな」

「もう、焦っても仕方ないわよ」


俺は毎回同じことを言っているようだが、それも仕方ない。


「子供から人生をやり直すには、何らかの意味があるのよ、きっと。そう割り切って楽しむしかないわ」

「クッ!!リディアは悟りを開いたことを言うな!!」


大人びた台詞を吐くリディアは、どこか冷めている。叫ぶ俺をいつもなだめる役目だ。今日も元気に叫ぶ俺のなだめ役に回り、それでも聞かずにギャアギャア叫んでいたら、リディアに尻を蹴られた。しまいには『もう帰れ』と叫ばれた。……短気なのがリディアの欠点だな、ああ。

そうして俺は帰路についたのだった。


**


リディアの屋敷を後にして城につくと、俺が真っ先に向かう場所、それは――


「ただいま戻りました、母上」

「お帰りなさい、ルーディス」


部屋の扉を開けた途端、優しい花のような香りがする。

椅子に腰かけ、本を読んでいた母上は、顔を上げて俺を視界に入れると微笑んだ。


俺はこの優しい母上が大好きだ。

綺麗なうえに優しくて、いい匂いがして、俺にたくさんの愛情を注いでくれる。

真っ直ぐに流れる金の髪に、空色の瞳。いつも優しい微笑みを絶やさず、俺の話に耳を傾けてくれる。

頭ごなしに怒ることはなく、きちんと話を聞いた上で、諭してくれる、まさに理想の母親だ。

おまけに――


「うふふ、ルーディスったら。お母様、くすぐったいわ」


とても柔らかい母上だ。え?どこがって?それはホラ、察してくれよー。


母上の胸に顔を埋め、その柔らかな膨らみに包まれる。ああ、至福の時間。ただいまの挨拶のついでに両手で触って、その柔らかさを堪能するのだ。


「ルーディスはいつまでたっても、お母様の胸が大好きで、困ってしまうわね」


苦笑する母上だが、俺は声を大にして叫びたい。


ああ、そうさ!この感触が大好きだ――!!


綺麗な母親に、柔らかパイ。それを揉んでも子供だからと許される。この点だけは感謝する。

母上の、花の香りと日向の交じった優しい匂いが大好きで、こうやってくっついている時が幸せだ。

言っておくがどんなに美人でも相手は母親であって、エロ目線ではない(当たり前だ)

しかし触りたい。なぜか妙に落ち着くのだ。母性を感じて安心してしまう。


子供って、本当に母親、そしてパイが大好きだよなーと、身に染みて思う。

いや、俺だって年頃になれば、同年代のパイに興味がいくはずだ。それを考えると、男はおっぱい星人が多いよな、本当。

だってほら、自分にはない胸の膨らみが、すごく不思議なんだ。


「いい加減にしないか、ルーディス」


貴重な親子のスキンシップを邪魔する声が現れた。ああ、またか……。


「いつまでもそんなんでは、先が思いやられる」

「兄上」


出たよ、この堅物。


声がかかった後方を振り返れば、俺と同じ金色の髪に空色の瞳を持つ人物が姿を現す。

おおかた俺に説教でもするつもりなのだろう。面倒くせぇー。

しかし首元までかっちりとした服なんて着て、苦しくないか?それ。

俺より少しだけ高い身長で、眉根に皺をよせて見下ろしてくる。


「赤子のように、母上に抱き付くなど、お前は恥を知れ。いいか、我が国は小国といえども、お前はそこの王子であるからゆえ、そのような態度は慎まれよ。一国の王子がそのような態度では、なんと嘆かわしいことかと、国民が不安になる。そのようなことでは、この国の未来が不安なものだと、民ばかりかこの兄までもが不安になり――」


はいはいはいはい。解ったから、解ったから。

俺は神妙な顔で適当に相槌を打つと、お母様に振り返る。


「母上、今日のおやつは?」

「そうね、ルーディス。美味しいフィナンシェがあったわよ」


そろそろ俺は腹が減ったぜー!!


「人の話を聞けぇぇぇぇ!!」


その場で地団駄を踏む兄が、正直うっとうしい。


「いい加減、人の話を聞くのだ!!もうお前は子供ではない!!」

「いや、子供です」


素で答えちまった。9歳が子供じゃなければ、なんなのだ。俺の中身はこの通り大人だが。


「兄上だってまだ12歳。大人ではないと思います」

「我ら王族は、人より早く大人にならねばいけないのだ!9歳からは、もう大人の仲間入りだ!!」


なんですか、兄上のその持論。そもそもこの兄を、ガッチガチに教育しすぎだと思う。

誰か兄上止めてあげて。俺なら教育係をチェンジする。

そこで母上が、ゆったりとした口調で話す。


「ルドナンドのお話は、お母様にも難しいわ」


おっ、母上は、いいことを言うな。


「そう、それに無駄に長いです」


思わず賛同すれば、兄はますます鼻息を荒くする。


「そんなことではいけない!!いいか、ルーディス。我が国は、よその国にも決してひけを取らない鉱産物などの資源もあり、その特徴たるもの――」


……また来たよ。そろそろ止めさせるか。


「兄上、フィナンシェをいかがですか?」

「食べる」


一人演説を中断させ、俺の手からフィナンシェを受け取って食べる兄。甘い物を与えておけば、当分は大人しいことを知っている俺。


「そうだ、母上。明日は月に一度の街へ行く日です」

「そう。たくさん見て学んで来なさいね」


明日は月に一度の、下街に下りる日だ。


「む、民の声に耳を傾け、そして目で見て見聞を広めてくるのだ。そして己が今、何をすべきか、考えてくるといい。――そして土産はポンポン飴にしてくれ」


ポンポン飴とは食べると口の中でポンポンと弾けるような音がする。――そのまんまやんけ。

兄上の好物だが、俺も好きだ。


王子である俺がなぜ下街に行くのかって?それはちゃんとした理由がある。

王子たる者、街の人々の暮らしをその目で見て感じて来いとの指導のもと、月に一度の割合で街へ降りる。

身元を隠して服装も変えて、俺とリディアの二人で街を歩く。リディアは俺が選んだ付き添いだ。きっとリディアも街に出たくて仕方ないはずだし。

まだ子供だから、俺達に護衛がつくのは仕方がない。一定の距離を保ちながらも、護衛は目を光らせている。

だが、この日を俺とリディアはすごく楽しみにしている。

決まった額の硬貨を手にして、自分の手で品物を選び、購入する。

庶民の暮らしに触れ、いろいろ学ぶ。それに限られたお金の中で購入するという決まりだ。これは金銭感覚を養う。

まあ、何にせよ、街はすごく楽しい。俺もいっそ、王子なんて窮屈な身分じゃなくて、街に産まれたかったぜ!


「気をつけて行ってくるのよ」


母上がふわりと微笑むと、俺と同じ金の髪が肩からサラリと滑り落ちた。すごく優しげな眼差しを俺に送る。

ああ、でも俺が街に産まれていたら、この優しい母上とは縁がなかったことになるんだよなー。


「ふふ、ルーディス。くすぐったいわ」


つまり、この柔らか弾力パイも、触れることが出来なかったに違いない。

そんな人生はつまらんなと、すぐに思い直した。


「兄上もいかがですか?母上の胸の中はすごく温かいですよ」

「なっ……!!」


試しに兄を誘ってみれば、その瞬間、真っ赤になる兄上。手に持つフィナンシェを落としそうなぐらい動揺しているが、本当に解りやすい。そんなに意地を張らなくてもいいんだぜー!!

YOU、好きなら好きって、認めちゃえよ。ほらほらほらほら。認めてしまえば楽になるぜ?

そろそろ強がりたいお年頃の兄上も、パイの魅力には逆らえまい。


「わ、私はそんな子供では……」


しかし弟である自分の前で、そんな姿を見せることにためらう兄上。チッ!素直じゃない。


「じゃあ、母上の胸は譲りません」

「……ちょっ……!!変われ、その場所!!」


俺が母上にしがみつけば、兄が本音だしてきた。そうして母上の胸の争奪戦が始まる。


「そこをどけ、ルーディス!!」

「嫌です」


しれっとして言い張ると、兄は俺はぐいぐいと押してくる。どうやっても自分が母上の真正面に立ち、その柔らかパイに触れる気だな。だが、このベストポジションは譲らない。

そして熾烈なポジション争いが、今始まる――


なんだよ、やっぱり兄上も好きなんじゃないか。――兄上こいつも将来、おっぱい星人だな。


やはり血は争えないと実感する瞬間だった。

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