結末の結末 【聖魔光闇様主催リレー小説 第五話】
この小説は、聖魔光闇先生のリレー小説第3弾となります。こちらのリレー小説の設定事項はこちらになります。
(※【第一話】よりコピー)
★全20話(一応出来るだけこの間に完結したいと思っています)。
★一話1000文字以上。
★登場人物の制限なし。
★重複執筆可。
★ジャンル:ファンタジー。
★魔法等の概念の設定はお任せ。
★執筆予約制度再開(執筆著者様は、活動報告に掲示させていただきます)。
★執筆著者様は、執筆前にご連絡ください。
★執筆投稿後、必ず御一報ください。
★あらすじは、前話までの要約を明記。
★全ての物語を聖魔光闇がお気に入り登録します。
★後書きに、執筆著者様募集広告を添付。
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現在、第六話の執筆者様を募集中です。
ミルダが目覚めたとき、香ばしいパンの焼けるにおいが、辺りに立ち込めていた。
おそらく先に起きたハルモネアが作ってくれたのだろう。彼は修行僧の身であるため、肉を食わない。いつも手作りのパンか米だけで朝食を済ます。
ミルダは一族を追っている途中、彼とオアシスで再会できた喜びを今いちど噛みしめた。
――うふふ。これで獲物が見つからないときでも、食糧に困らなくなるなあ。
だが、起きるなり、「いっただきまあす!」とパンにかぶりつくのは避けなければならなかった。修行僧は何かと小うるさい。顔を洗って身を清めろだの、なんなのと、お母さんみたいなことを言うのだ。
先の旅で、彼の人柄を十分すぎるぐらい学んだミルダは、用心深くなっていた。そこで、とりあえずハンモックの上から彼の様子を探ることにした。
「ん……もう、朝かあ」
ふわあ、と大きな欠伸をひとつ。ミルダは、そろそろと目を開けた。
ハルモネアは大きな背中をこちらに向けて、あぐらをかいている。朝の日課の座禅を組んで、心身を鍛錬中のようだ。他の存在を忘れているようにも見える。
ミルダは、にんまりとほくそえんだ。
――ふふん、しめしめ。この隙にかまどへ行こう。久々に腹いっぱい食ってやる!
と、手足を思いっきり伸ばした瞬間。
こともあろうに、ハルモネアの後頭部に、その足が直撃した。
「ぐふうっ……!」
さすがのハルモネアも、不意をつかれた攻撃をよけきれなかった。低いうめき声をあげたあとに、体がゆっくり斜めに傾く。そして、そのまま床の上に倒れ込んでしまった。
万人ならば耐え難い痛みだった。レベルの低い魔物がくらったら、一撃で消し飛び、お星さまになってしまうほどの凄まじい蹴りである。
旅の間ミリテの一族だとばれないよう、特徴のある赤い髪は被り布で覆い、人並み外れた力はセーブするよう気をつけていた。思わぬところで懐かしい仲間と再会し、緊張感をなくしてしまったようだ。
「ハル!」
ミルダはハンモックから飛び降りると、彼の体を揺すった。
「ごめん! 大丈夫? ねえ、ハルちゃん! 目を覚ましてよっ」
「う……っ」
ほんの少しだったが、彼の口角があがった。
よかった。意識はある!
ミルダは彼の腹にまたがり、厚い胸板に手を置いて強く揺すった。
「ハルちゃん! ハルちゃん、ってば!」
彼の目が薄く開いた。ぼんやりとした視線を天井に向ける。
「ハルモネア……?」
おそるおそる声をかけたら、彼はミルダの目を見てうなずいた。
「泣くな、キャッミルダ。心配かけたな」
やさしい低い声がかえってくる。
「ううん」
ミルダは目をこすって涙を拭いた。
「おれの方こそ、すまない。こんなつもりじゃなかったんだ」
「わかってる。もういい」
ハルモネアは短く言うと、こほんと咳払いをした。
「それより、この体勢はまずい。早く降りて、身だしなみを整えてくれないか」
「えっ?」
「ネーネに見られたら、このエロ坊主! と、どやされてしまうからな」
身を縮め、髪のない頭を、はずかしそうに指でポリポリとかくハルモネア。
丈の短い肌着のまま、ほっそりとした脚をさらし、男の上にまたがっている状態のミルダ。
ネーネでなくとも、他の誰かに見られたら大問題である。
しかし、ミルダはハルモネアの言いたいことがわからない。
――なんで、ネーネが怒るんだ?
不服そうに口を尖らせた。
「どうして? おれとハルちゃん、なかよしさんだろう? 別にいいじゃんかよう」
ハルモネアは苦笑した。
「まあ、それはそうだが。わたしは男で、ミルダは女であろう」
「だけど、おれ、まだ女じゃないんだってさ。バング先生が言ってた。月のさわりが来てないから、だって」
――なんなんだ、それは。
いさめているつもりであったが、やさしすぎる言い方のせいか、ミルダにはまったく通じていないことを彼は悟った。無知なことは罪である。とは、よく言ったものだ。
――くっそう、あの男女。ミルダを守ってやらねばならないのに、よけいなことを。
ハルモネアは元暗殺者バングをうらめしく思いつつ、深いため息をついた。
「いいか、キャッミルダ。馬乗りになった相手が、この愚僧だったからよかったものの、他のやつらだったら、そうはいかないぞ」
「他のやつらって?」
ミルダは小首をかしげた。血のように燃える長い髪が、さわさわとハルモネアのあごに触れる。くすぐったくて仕方がない。早く彼女を遠ざけねばならなかった。
「そうだなあ。たとえを言うなら、ミューグレンやエルドランみたいな若い男だな。つかまったら痛い目にあうぞ。用心するんだ」
彼女にわかりやすく、なつかしい仲間たちの名をあげる。
すると、彼女はさらに質問を重ねた。
「どうして、痛いことするの?」
無邪気にたずねる少女に、男女の理を直球で説明するわけにもいかず。ハルモネアは「うー」と口ごもった。迷いながら説明をする。
「そ、それだはな。なんというか、花には、雄しべと雌しべというものがあってだな……」
急に難しい話になってしまったので、ミルダは戸惑った。
――ハルちゃん、やっぱり変。ひょっとして、おれのせいかな。頭打ったから。
これ以上、大好きなハルモネアを困らせたくない。ミルダは、にっこり笑った。
「うん、わかった! グレンとドランに気をつけるんだね。いいよ、おれ、大丈夫。足が速いし、力も強いから」
「……は?」
「それよりさあ、腹へったなー。早くご飯を食べようよ!」
と言いながら、ミルダはハルモネアの体から滑り落ちた。走って、台所の方へ行く。
――やれやれ。微妙に困ったことになったな。これから、あいつらを捜しにいくんだが。
ハルモネアはミルダが見えなくなると、部屋の壁際に置いてあった皮袋をひきよせ、口の紐を解いた。油紙に包まれた小包を取りだす。
膝の上に乗せて包み紙を開けたら、水晶のかたまりがあらわれた。上部がまるくなだらかで、下部はあごのように尖り、前に突き出したような形になっている。中央には、ぽっかりと二つの穴が開いていた。どこからどう見ても、どくろのようだ。
ハルモネアは、この水晶のどくろを持って旅をしていたのである。かつての仲間を見つけ、これを手渡すために。
正体は、なんなのか。かつて世界を救った英雄の中でも、ハルモネア一人だけしか知らない秘密であった。
だが、秘密が秘密でなくなる日は、もう近いはずだ。
(第六話に続く)
全20話のうちの第五話ということで、未登場の主要キャラを出しました。坊主と女の子の組み合わせ、いかがだったでしょうか。
あまり話がすすんでいないうちに、次の方へバトンすることになってしまい、恐縮です。
書いていただけるという方は、聖魔光闇さん(http://mypage.syosetu.com/107085/)までご連絡ください。
お待ちしております!