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その3

「ああ、一週間ぶりの我が母校。」

 というほど感慨に浸れるはずもないわけだが、とりあえず言っておくことにした。さぞやこの学園も喜んでいることだろう。

「ふふふ、今日も今日とて余が登校することを心待ちにしていたのであろう?感涙に咽びつつ余の世界征服の礎になれることを誇りに思うがいい我が母校!・・・む、津寺ではないか。」

 こいつはいつもこうなのだろうな。

「残念だが今日は共に学び舎に入ることはできん。教室で会おうぞ。」

 誰がいつお前と共に校舎に入ったことがあるよ?私は今日で登校二日目(入学式除く)だぞ。

「ほう、それは残念だ。ぜひ試しておきたいことがあったんだが、放課後までお預けだな。」

「む、余に対してそのような態度をとるとは、無礼であるぞ。身の程を・・・」

「わきまえよ!」

「んごっ!」

 まったく、私のどこが無礼だというのだ?しばらくそこで悶えてるが良いさ。

「うふふふ・・・あはははははははははははは!」

「つ、ツンデレさんが笑っておられる・・・。」

「おお、なんと邪悪な笑いだ・・・。」

「いやん☆こわ~い~!」

「た、たやまんが怖がっておられる!」

「我々が何とかせねば!ツンデレさん御免・・・・・・・・なさいホントごめんなさい!」

「あはははははははははははははははははは!!」

「悪魔だ・・・・悪魔が降臨なされた・・・・」


今日は教室に入るまで妙に廊下が空いていたが何かあったのだろうか?まあ、どうでもいいけど。

「はい、先生が来たからには椅子に座って『授業始めてもいいっすよ~』な状態になってますね?」

なるほど、今日最初の授業は田村先生の英語か。・・・いやまて、一時間目はヤツの国語だったはず。

「皆さんお察しの通りあの野郎はアレです。ですので私が代わりに国語をやります。」

教室中に溢れる『またかよオーラ』がこの一週間の間にどれだけ同じことがあったのかを如実に語ってくれた。しかし、今度は何をやらかしたんだ?

「皆さんくれぐれもあの野郎の前で兄弟、特に妹がいることを話しちゃ駄目ですからね。」

 ・・・知らなくていいや。

「それでは国語の教員免許なんて持ってないけど始めましょう。教科書の今日やる箇所を開い てください」

 何やらさらっと言ってはいけないことをいった気がするが気にすることもないだろう。

ふと外を見やればヤツが草むしりしているのが見えた。おそらく奉仕活動を命じられたのだろう。熱心に草をむしっている。

「ちょっ!先生何やってんですか!?」

「もう、その草で『マイ妹人形~若草のかほり~』を作ろうとするのはダメだよ!」

「いやまて、草そのものが材料になるわけじゃないんだ。いいか、良く聞け、雑草が擦れて出た匂いによって俺の中に秘められた魔法的な何かが目覚め、それによって理想の妹を生み出すことが・・・・」

「できねぇよ!さっさと職員室のお茶準備係に戻れ!!」

「少しはボクたちの迷惑も考えてよね!」

・・・ああ、まじめに草むしりなんかするわけないな。しかし、ヤツはよく教師を続けられるな。いくらここが私立とはいえ寛大すぎる。いや、それでいいんだろうよ。深く考えるだけバカらしい。さあ、気を取り直して授業でも・・・

「いいですか皆さん、ただ同じ言葉を二回、たった二回繰り返すだけで人を笑わせることができるのです。なんて素晴らしい・・・・!」

聞くだけ無駄だな。

田村先生の駄洒落講座を流れるように聞き流しながら、鞄を膝の上に置き先日手に入れた物が中に入っていることを確認。ふふふ、放課後が楽しみだ!

「ふふふふふ・・・・・うふふふふふふふふふ・・・・・・」

「あ、あの、津寺さん・・・?」

 おっといけない、あまりの期待感に笑いが漏れていたようだ。隣の席の娘を怖がらせてしまったようだ。

「失礼・・・・・・くくく・・・・・」

「・・・・・ひっ・・・・・」

 ダメだ、笑いが止まらん。無理やり堪えようとしたせいで余計に怖がらせてしまった。

 さて、この娘はなんていう名前だったかな?たしか・・・図書委員に選ばれた・・・・

「ふむ、月島 涙さんか・・・」

「ぎゃひぃっ!!」

 私が私の手によって素晴らしく仕上げられた役職表を見て確認した上で彼女の名前を呼ぶと、ものすごいびっくりされた。

「な、なんですかっ?私を心臓麻痺で殺す気ですねそうですねっ!?」

「いやすまない。」

「ああ、もう私の人生は終わってしまうのですね。きっと今からあんなことやこんなことが・・・」

 なんて被害妄想・・・・・。とりあえず落ち着いてもらわなければ。・・・しかし、教室中の誰もこちらを向こうとしないのはどういうことだ?

「ふん、貴様が朝から奇声を上げて笑い狂っておったからだろうが。」

 りんは こうていの ことばを むし した

「すまないな。名前の確認がしたかっただけなんだ。・・・・あっ!」

 そのときだった、膝の上に置いていた鞄が彼女の方に滑り落ちたのは!

「あっ!」

・・・見たな?見たんだな?とっさに隠したが見てしまったんだな?私の鞄の中身を!?

「そ、それはいった・・ひぃっ!!」

 教室中がこっちを見ないどころかあらぬ方向を向いた生徒たちで溢れかえった。そう、それは私の表情と威圧感がすごいことになっていたからに他ならない。

「どうした月島さん!?顔色が悪いようだがっ!?」

「えっ!?そんなことな・・・・・」

 いいやある。君は今ものすごく顔色が悪い。そう、私に対する恐怖心で!

 しかし、その怯えた表情がまたなんとも・・・・・じゅるり・・・・・

「うふふふふふふふ・・・・・・・・先生、月島さんが具合が悪いそうなので、学級委員(女)として保健室に連れて行きたいと思います!」

「うわぁ・・・・ものすごい笑顔・・・・・」

 どうやら私は今呆れるくらい良い笑顔らしい。

「めんどくさいのは嫌いなのでさっさと行ってください。月島さんを休ませてる間はツンちゃんも保健室の椅子に座って休んでていいっすからね。」

「わ、私具合悪くなんて・・・・・」

「さあ、行こう。やれ、行こう。うふふふふふ・・・・・あはははははははは!!」

 私は月島さんを小脇に抱えて走り出した。教室を出るときに

「あ、保健室でほっけ焼いて室温上げちゃダメですからね!スプリンクラーのスクリプトがうふふふふふ。」

 今日の田村先生は一味違うらしい。自分の駄洒落に満足して笑っている。私には理解し難い。

「うわああん!きっとこのまま曲がるときの遠心力に任せて廊下の壁にトマトなんですねっ!?それとも床に擦り付けて大根ですかぁっ!?」

 被害妄想もすごいが想像力も豊かなことで・・・・

「うわああああああああああん!!私は二つに分かれるアイスじゃありませぇぇぇぇんっ!!!そこから割れたりしませぇぇぇぇぇんっ!!!!」

 どこからだよ。

「うわああああああああああああああああああああん!あれですかほっけですか?ペチペチと私を叩いた後に不完全燃焼で一酸化炭素中毒ですねそうですねっ!?」

 あ、田村先生のほっけからそこまで連想しちゃいますか。すごいですね。

「え・・・?あ・・・そんな・・・いや!それだけはいけませんっ!」

 まだ何もしてないと思うが?・・・・してないよな?うん、してない!

「た、助けてください一輝さぁぁぁぁぁんっ!!」

 かずき?どこかで聞いた名前だな・・・ああ、あれか、思い出した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!るいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!!」

 階下から雄叫びが近付いてくる。ちょうど正面の階段から駆け上がってくるな。

「ルイっ!大丈夫か!?」

 階段からかっこよくポーズをキメながら如月元生徒会長が飛び出してきた。

「ああ、一輝さん!」

「そこだ!チェストォッ!!」

「今オレが華麗にぬごぉっ・・・・・・」

そこに私の『月島さんを抱えていないほうの腕から繰り出されたストレート』がクリーンヒット!

「か・・・・一輝・・・・さん・・・?」

 うん、いい。この感触、止められない!

「ちょうどいい、貴様も来るといい。余が許そう、授業など出ずとも良い。」

「お前はどこから湧いたぁぁぁぁぁっ!」

「ぐふおうっ・・・・そのローリングそバットもなかなか・・・・良し・・・・・・・」

 突然湧いて出た高帝を薙ぎ倒し、私は月島さんを保健室に連れて行くことに成功した。

 どうでもいいことだが倒れていた二人も後から来た。


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