合宿の一週間目
初めまして。僕は日本人ではありません。日本語勉強中だけです。何か間違いや誤りがあるかもしれません。その時はどうかご容赦ください!
これは僕の初めての小説であり、連載小説でもあります。これから一生懸命に、週1回新しい話を投稿するように頑張ります。
よろしくお願いいたします!ぜひ感想を聞かせてください!
男の非常に大きな鳴き声が耳に届いた瞬間、僕の目は開いた。その鳴き声は革命軍の訓練合宿での初日がほんの数秒前に始まったことを意味していた。ベッドから体を起こし、これから十四日間を過ごす場所を見渡した。昨夜遅くにここへ到着したため佐藤さんが僕のテントまで案内し、ベッドの場所を指さして去ってしまい何も見ることができなかったのだ。右へ左へと何度か見回すと、僕以外にまだ19人の男たちがいるのが数えられた彼らは実に様々な年齢だった。少し後になって僕たちのテントの最年少はたったの16歳で、最年長は46歳だと知ることになる。僕のベッドの隣にある小さな棚に置かれていた軍服を着てテントから出ていく他の人々の後に続いた。この新しい環境で全く知らない人々の中でこの二週間を一人で過ごすのは孤独で大変だろうと思って知り合いを作ろうと決めた。一番若く見える男の子に声をかけた。
「えっと...おはよう...僕は光川ヒロだ。17歳なんだけど、君もとても若く見えるね。いくつ?」
「おう!やあ!僕は森山竜二 16歳です!友達になろうぜ、兄貴」
「うん、もちろん。ありがとう...」
十六歳?なんて若いんだ!もちろん、自分で言えることではないけれど。それにしても、彼はどうやってここへ?そう疑問に思い、答えを得るために彼に直接その質問をしてみた。
「なんで俺がここにいるかって?親に連れてこられたんだ!ほら――あれが僕の父さん。母さんもいるけど別のテントだからさ。」と、その少年は言い、四十歳くらいに見える男を指さした。
こうして、ほとんど苦もなく、新しい友達ができた。これから待ち受けるであろう全ての試練を彼が乗り越える手助けをしてくれることを願う。10台の二段ベッドと20個の小さな物入以外に何もない大きなテントを出ると、僕は森の開けた場所に出た。それは信じられないほど広かった。周りには木々が立ち、テントが周囲に配置されていて、だいたい12か13張り数えた。中央にはおそらく僕たちが訓練をする場所があるようだった。いくつかの障害物コース、横に武器が置かれた射撃場、大きな円形のランニングトラック、およそ十個のボクシングリング、そして他にも初めて見る訓練器具が見えた。
隣や開けた場所の反対側にあるテントから、他の人間も僕と一緒に出てき始めた。男性と女性の比率はだいたい7対3くらいだった。こんなに多様な人々がいることに僕はとても驚いた。未成年の子供から、明らかに人生の大半を既に生きてきた大人まで。後で知ることになるが訓練生の最年少は僕の新しい知り合いの森山くんで最年長は49歳の男性だった。
僕たち全員が開けた場所の中央に木で作られた小さな舞台の前に集められてそこには僕たちの指揮官たちが集まっていた。彼らは拡声器を使ってその日の予定を告げた。
「私は革命軍大佐の有馬陽斗だ。今後十四日間、お前たちは私と私の同僚の指示に従うことになる。我々の任務はこの国で芸術を復興させるという計画を実現するために必要な全てをお前たちに教えることだ。そのために本日お前たちは試験を受けて初期の訓練レベルを判定する。その結果に基づいてお前たちは50人ずつの4つのグループに分けられてお前たち一人ひとりのリソースを最大限に活用するため訓練プログラムは多少異なるものになる!通常の軍隊のような規律はここにはない。特定の決まり文句を覚える必要もない。上官には敬意を払うように。唯一と最も重要な規則は、本日よりお前たちは兵士であり命令に従わなければならないということだ。これで導入の話は終わりだ!各自テントに戻れ。そこで担当官が待っておいて次に何をするべきか説明する。」
この言葉を聞いて僕はようやく自分が置かれている状況を完全に理解した。この瞬間から僕は芸術復興のために戦う革命軍の兵士なのだ。この瞬間からそれが僕の人生の主要な目標だ。隣を歩く人々も兵士だ。僕たちは互いを尊重して大切にしなければならない。必要な時には互いの命を救わなければならない。だからこそできるだけ多くの人々と親しくなって困難な時に彼らを助けて彼らが代わりに僕を救ってくれるようにしなければならない。
しかし、その時突然、一つの考えが頭をよぎった。もしかするとこれは逆に良くないことなのではないか?これらの人々に愛着を持つということはもし運命が以前紀美子やおじいちゃんと引き離したように僕たちを引き離すようなことが起こればそれに対処するのがずっと難しくなりそうなれば生き残った仲間たちに迷惑をかけてしまうのではないか。
これらの考えで、僕の心と魂はまるで真っ二つに引き裂かれそうだった。なぜ周りの皆はこんなに平気そうなんだ?なぜ誰も僕のような顔をしないんだ?皆、将来何が起こるか、もうとっくに受け入れているのだろうか?それとも単に、彼らは前もって何が起こるか知っていて、この日のためにずっと前から準備していて出発の数分前にようやく行き先を知った僕とは違うということなのか?心が張り裂けそうになったその時、中を大きな音で叩かれた。
「なんでそんなに暗い顔してんですよ、兄弟?忘れられない十四日間が待ってるんだからっすね!」
僕には、彼がどうしてそんなに軽く考えていられるのか、完全には理解できなかった。革命の過程で両親を失うかもしれないことを彼は怖がっていないのだろうかそれとも彼はただ単に、先に何が待ち受けているかを理解していないほど頭が足りないだけなのだろうか?
「どうしてそんなに嬉しそうでいられるんだ?この十四日間の後に何が待ってるか分かってるのか?地獄だぞ。本物の戦争だ。」
「分かりますよ。でも、僕たちはもう決心したんだろ?自分たちでここに来て、芸術の権利のために戦うって決めました。親は止めようとしたけど、僕は絶対に両親だけを一人で行かせたくなかったのでここ来ました!僕が怖くないと思ったら、それは間違いです。めちゃくちゃ怖いよ!ただ、あんまりクヨクヨしないようにしてるだけです。なるようになるさ――それが僕の人生のモットーです!」
ああ、そういうことか。彼の言う通りかもしれない。必要以上に自分を追い詰める必要はない。それは僕の体にとってさらに大きなストレスになるだけだ。ただ、革命を成功させたいと願う他の人々に迷惑をかけないように全力を尽くせばいいんだ。
「分かった、ありがとう、森山くん。」
「どういたしまして、兄弟!いつでも頼ってくれよな!」彼はそう言うとテントに向かって走って初めて途中で出会う人々を追い越していった。
テントの住人全員が戻ってくると、そこで僕たちを待っていた男性が自分は黒田五郎中尉だと名乗った。僕たちの能力を評価するためのテストをどのように、どのような基準で受けるのかを説明した後彼は僕たちをどのグループに入るか、そしてこの14日間を誰と過ごすかが決まるというまさにその場所へと連れて行った。
まず最初に僕たちはランニングのテストを受けに連れて行かれた。僕は200メートルと10キロメートルを走らなければならなかった。それほど鍛えられていない僕の体には、これがまたとない苦行だった。200メートルはそれほどきつくはなく、26.3秒で走り切ることができた。きついとは思ったが、10キロメートルを走り始めた時それは単なる前座に過ぎなかったことが分かった。学校の体育の授業で、もちろん走ったり運動したりはしていたが、これは別次元のものだった。最大限の力を出そうと速いスピードでスタートして自分のグループでトップに立ったが文字通り走り始めてから一分も経たないうちに、その決断を深く後悔した。呼吸を整えるために立ち止まらざるを得ず、再び走り始めた時には最下位になっていた。しかし、それでも僕の若い体は、自分より何十年も年上の人々よりも強くて20人中3位でゴールすることができた。最後の方は今にも自分の肺を吐き出しそうだと思ったが、それでもなんとかこのクソッタレな10000メートルを45分強で走り切った。
十分な休息時間も与えずに今度は腕立て伏せと懸垂のテストに連れて行かれた。これらが得意だと言えるほどではないが、前のテストで残った全ての力を振り絞り、懸垂を6回、腕立て伏せを1分間で35回行うことができた。実は腕立て伏せは37回やったのだが、最後の2回はフォームが悪いとしてカウントされなかった。
次に待っていたのは障害物コースだった。有刺鉄線の下を腹ばいで進み、岩から岩へ飛び移り、ロープを登り、100度の傾斜がある壁を登らなければならなかった。腕立て伏せと懸垂の後で腕は非常に疲労のせいで壁を登り切ることができなかった。ランニングのテストの後では楽々と第一班いや少なくとも第二班には入れるだろうと思っていたが、周りにいた男たちは持久力のテストでは僕よりかなり劣るものの、筋力系の種目ではほとんど全員に負けていることに気づいた。これにはとても驚いた。大人っぽく見える何人かの男性に尋ねてみると、彼らはこの革命に備えて数年かけて準備してきたのだと知った。だからジムでトレーニングしていたのだ。周りを見渡して、ようやく気づいた――周りの人々は皆、腕や胸に本当に大きな筋肉がついていた。ある一人に至っては、肩が僕の頭より大きいと言っても過言ではなかった。
この訓練キャンプにいる中で、今のところ自分が最も弱い者の一人のように見えるという事実に落ち込みながら僕は昼食へと向かった。数時間ぶりの食事だった。朝食はこの過酷なテストをより楽に乗り切れるようにと意図的に与えられていなかったのだ。味噌汁、魚の乗ったご飯やいろんなオカズ、そしてコンポートのグラスが載ったトレイを受け取り、巨大な開放的なテントの下にあるテーブルの一つに向かった。その時僕の目があるものを捉えて脳が必死にそれを拒絶して何かの幻覚だなと思ったがそれは錯覚ではない確信した瞬間、手に持っていたトレイを落としそうになった。それは僕の友達だった。僕の親友だった。誠だ!
「ま、誠?なんでここにいるんだ?!」
「驚いたか?」
「そりゃ驚くよ、聞くまでもないだろ。いったいどうしてここに!」
「まあ、君を一人にしておけなかったんだよ。君のことだから、近くの石に躓いて頭を打ちそうだしな。だから目を離せないんだ。俺も誘われたから、来たんだよ。」
「誘われた?誰に?」
「ある日、君が言ってたあの佐藤健太って人が家に来たんだ。事情を全部説明して革命軍に加わりたいかって聞かれた。君を一人にはできないって言ったんだ。そういうわけで、ここにいるってわけ。でも君は俺がここにいるの知ってると思ってたよ。」
僕の頭には、全く正反対の二つの考えが同時に浮かんだ。それは誠がここにいるという安堵感。そしてこうして僕が彼をこの騒動に巻き込んでもし彼に何かあればそれは僕の責任になるということだ。
「本当にその決断でいいのか?君は僕が教えるまで、芸術の存在すら知らなかったんだろう?これは君の戦争でも君の革命でもない。誠がいるべき場所じゃないんだ。君には穏やかな未来の人生が待って...」言い終える前に、誠はいつもの習慣でまた僕の言葉を遮った。
「あの日、カフェで俺が言ったこと覚えてるか?お前は親友だ、分かってるか?お前がいるところに、俺がいる。俺がいるところに、お前がいる。だから、絶対にお前を一人にはしない。分かったか?」
「いいの?...ああ分かったよ」
「よし、それならいい。さあ、味噌汁が冷めないうちに食べよう。」
食事を終えると、僕がここに来てからずっと心配だったこと全てについて話すことができた。もっと長く話を続けたかったが次のテストに呼ばれて夕食時に会う約束をしてそれぞれの小さなグループに散らばった。
僕たちは、ボクシングリングが五つ並んでいる場所に連れて行かれた。ペアに分けられてヘルメットとグローブを渡されて相手に勝つためなら良識の範囲内で何をしても構わないと命じられた。別に暴力のファンというわけではなかったがもうここ革命を起こそうとしている軍隊にいる以上勝利のためには全てを捧げるつもりでいた。そんな意気込みで自分の番が来た時リングに上がった。相手は25歳くらいの男で、朝ベッドから起きた時に彼に気づいていた。彼は二段ベッドの上の段で僕のすぐ上に寝ている隣人だった。彼も僕に気づいて挨拶をしてくれた。名前は椎名駿だ。
彼はとても小さくて華奢に見えてまるで最弱の風で吹き飛ばされそうだった。こんな相手で運が良かったと思った。生まれてこの方他人と喧嘩したことは一度もなかったが何とか勝つ方法を考え出せるだろうと考えた。最初のゴングが鳴るとすぐに僕はガードを固めて椎名さんに近づいて彼の頭が腕の届く距離まで近づいた時利き手である右パンチを打とうと決めた。しかしガードを解いて振りかぶろうとした瞬間目の前で何かが煌めいて真っ暗闇に落ちた。
気がつくと、周りはすっかり暗くなっていた。リングのそばの小さなベンチに寝かされていた。一体何が起こったんだ?僕の目が開いたのを見て隣に座っていた椎名さんが謝った「力加減を間違えた」と。彼は6歳からキックボクシングをやっていたらしい。そして気を失う直前に見たあの物体は、彼の脚だったのだ。こんな華奢な体に、どうしてそんな大きな力が宿るのか僕は非常に驚いた。
「本当にすまない、まさか3時間も気絶するとは思わなかったんだ!!」
「大丈夫です、気にしないでください」と言うのは嘘になるだろう。なぜならまだ耳鳴りがしていたからだ。彼に肩を貸してくれるよう頼んで今朝早くに200人の兵士全員が集まった場所まで歩いた。担当官に座る許可を求めると、黒田中尉は事情を汲んでくれて他の199人の兵士が立っている中僕だけ座ることを許してくれた。正直に言うと、時々自分に向けられる視線に気づいたことがあって自分が場違いな人間のように感じられた。
大佐が話した内容はあまり覚えていない。記憶に残っているのは、僕が第三班(つまり、力の強さで言えば、弱い方から二番目の班)に入れられたということだけだ。前半分に入れなかったのは悲しかったがその時の頭はとにかく休息や睡眠やまだ続いていた耳鳴りを消したいという願望でいっぱいだった。
昼間に約束した通り夕食時に誠と会った。そこには新しい友達の森山くんも加わった。ちなみに彼は僕と同じく第三班だった。一方誠は、驚いたことに、というよりはむしろ、やはりと言うべきか、第一班だった。夕食を早々に済ませて彼らに別れを告げて自分のテントへと向かった。
シャワーからテントに戻った時にはほとんど夜だった。テントの住人は皆既に集まっていて何かについて楽しそうに話していた。
「それで俺たちのテントから三人が第一班に入ったぞ。おめでとう!おおようやく陛下が我々のもとへ訪れるのを許されたか!」と、若く見える男の一人が僕の方に向かって言った。
「え...僕ですか?」
「そうだよ、君だ!他に誰がいるんだ!ところで、君は何班なんだ?」
「第三班です。」
「おお、じゃあテントだけでなく、班も一緒ってわけだな。俺は渡辺拓真!君は?」
「光川ヒロです。よろしくおねがいします。」
「どこに行ってたんだよそんなに長く?俺たちはもう全員自己紹介済みで、君だけだったんだぞ!正直、失礼だと思うぜ」
「少し静かにしろよ。彼は悪くない。スパーリング中にうっかり力加減を間違えて気絶させちゃったんだ。もし望むなら、お前にもその感覚を味わわせてやってもいいぞ。」と椎名さんが僕をかばって立ち上がった。
「冗談だよ!そんなに真に受けるなって。」
話を続ける気力さえもなく僕はベッドに倒れ込んだ。周りで人がこれからも長時間話していたのも、このテントの唯一の光源ではある電球が僕の数十センチ上で灯っているのも構わず、目を閉じた瞬間に眠りに落ちた。それはまるで昼間に椎名さんの蹴りで気絶した時と同じだった。
二日目にも同じ男の鳴き声で目を覚まして朝のルーティンを繰り返してテントを出た。僕は完全に回復して力に満ち溢れていた。まるで山をも動かせるかのような、今日一日へのエネルギーで満ち充ちていた。今度も朝食はケチられて出された。卵二つと一切れのパンだけの軽いものだったがそれでもこれからの訓練に耐えるには十分だった。朝食を取っていると森山くんが隣に座ってきて話し始めた。
「なんで光川さんはここにいますか?そんなに芸術が好きなの?」
最初は、全ての真実を彼に話そうと思ったが何かがそれを止めた。ここ一ヶ月で自分に起こったことの全てを知り合って二日目の人間に話したくはなかった。そこで、真実に近いが心に大切な思い出には触れないようなことをでっち上げることにした。
「うん、ただ大好きなんだ。恥ずかしいことに知っている作品の数はとても少ないんだけど、その一つ一つが心に消えない足跡を残してくれたんだ。」
「へえ!そうなんですね。僕の両親もそうだよ。正直言うと何がそんなに皆を魅了するのかあんまり分かんないですけどね~。本は本だし、絵は絵だし。特別なものは何もないと思うんだ少なくとも僕にとっては...でも前に言った通り僕は両親のためにここにいるんです!」
そういうことか。芸術のために何でもする覚悟のある、とことん芸術を愛する人たちだけが集まっていると思っていたがここにいる誰もがそれぞれの理由を抱えているのだ。おそらくここで軍事訓練を受けている二百人の兵士全員に尋ねれば、百以上の異なる理由を数え上げることができるだろうとしても驚かない。
朝食を終えて黒田中尉が早朝に指定した場所へ向かう途中僕と新しい知り合いは同じ学生で共通の話題をすぐに見つけてほとんど途切れることなく話しながら昨日ほとんど気を失いかけた場所――ランニングトラックまで歩いて行った。
ついに自分の班のメンバー全員を見ることができた。女子が約十五人残りは全員男だった。四つのグループは、二つがランニングトラックで持久力を鍛えて残りの二つがリングで徒手格闘、ナイフ戦、護身術を学ぶように分けられていた。午後には訓練場所を交代することになっていた。
とても暑く日差しの強い日だった。何人かの男性兵士は制服を脱いでいた。時間が経つにつれて体温をさらに上げるだけのTシャツを着たまま走るのは本当に暑かったので僕もそうしたかったが自分の体を見せるのが恥ずかしくて自分の愚かさゆえにこの暑さに耐えなければならなかった。
昨日がまさに地獄だったという考えは僕に悪戯を仕掛けた。今朝の訓練と比べれば昨日なんて公園の散歩のように思えた。僕たちは休みなく走らされて次に筋力トレーニングをさせられてその後障害物コースに送られたが疲労が溜まっていたためやはり最後までクリアすることはできなかった。この二日間で過去 一年間で走ったよりも長い距離を走ったように思う。もし朝食にあと一グラムでも多く食べていたら恐らくこの午前中の訓練を無事に終えることはできなかっただろう。
僕たちの訓練は第一班と第二班の格闘訓練よりも早く終わった。昼食までまだ少し時間があったので僕は友達を探しに行った。彼が訓練している場所に着くとちょうど誠がリングに立って他の兵士の一人と戦っているところだった。
驚いたことに、それまでの十七年間の「盲目」の期間を経て、たった二日間で周りの人々の顔全てを見ることに完全に慣れてしまっていた。誰一人として顔が隠されたり塗りつぶされたりしている人はいなかった、がその想いはこの瞬間で終わった。誠が戦っていた相手の顔。その顔は、一週間前、一ヶ月前、一年前に僕が見ていた全ての人々の顔のように塗りつぶされていたのだ。僕は衝撃を受けてすぐに疑問が湧いた。「なぜ?なぜ彼の顔だけが識別できないんだ?」以前は誰かの顔が見えないことは全く普通のことだった。それには何の不思議もなかった。なぜなら、生まれた時からずっと人々の顔が見えなかったからだ。脳がまだ完全に形成されていなかったために記憶に残っていない日々でさえ塗りつぶされて黒く消された人々の顔で溢れていたはずだ。おそらく、その理由で僕は友達を作りたくもなかったというよりも作れなかったのだろう。だって顔の見えない人とどうやって友達になれる?
しかし、このキャンプに来てから全てが変わった。大佐やその側近たちの顔、訓練してくれる中尉であり兼トレーナーたちの顔、同じ屋根の下で暮らす人々の顔、同じ班になった人々の顔が見えたのだ。なのに、なぜ彼の顔だけが見えないんだ?彼だけが他の全てとは違っていた。普段の僕の日常ではそういう人物はいつも誠だった。しかし彼の場合はそれが逆の方向に働いていた。つまり彼は両親以外他の全ての学生や教師の中で唯一顔を識別できる人物だったのだ。
誠の訓練が終わるのを待って彼に挨拶して食堂へ向かう途中、僕は自分の小さな発見について彼に話すことにした。
「え?人の顔が見えない?それってどういうこと?」
「つまりね、まるで黒いマジックで塗りつぶされて、×印が付けられてるみたいなんだ。顎から額が髪の毛に触れるところまで、顔全体が。その表面全部が黒いマジックで描き潰されてるんだ。」
「へえ、それはまた…なんで前に行かなかったんだ?」
「難しい質問だね...ただそれが僕にとっては日常的だったから他の人にとってそれが普通じゃないなんて思わなかったんだ。だから、ただそれを受け入れて生きてきたんだ。唯一知っていたのは、僕のおじいちゃんだけだった。小さい頃、それは将来、僕の役に立つ特別な特徴なんだって言ってたよ。それが何を意味するにせよ...」
「じゃあ、俺の顔はいつも見えてたのか?」
この質問の後、僕は親友と友達になったきっかけを思い出して彼にその話をした。それはまだ幼稚園の頃のことだった。自分が誰と話しているのか、目の前に誰がいるのか理解できなかったため自分らしくいられる相手を誰一人として見つけられなかったのだ。だから、おもちゃやかくれんぼや鬼ごっこなどの様々な遊びをしていた他の子供たちとは違って僕はいつも部屋の隅か、幼稚園の外庭のベンチに一人で座った。
おじいちゃんが「おとぎ話」と呼んでいた小さな物語を思い出していた。おじいちゃんが夜に話してくれたことを頭の中で想像していた。それが、おそらく僕が初めて芸術に触れた瞬間だっただろう。最初は保育士の先生たちが来ては、他の子供たちと遊ぶように言った。生涯を孤独に過ごさないためにも、彼らと共通の言葉を見つけることを学ばなければならない、と。しかし僕はその提案を断り続けた。数週間の失敗の後彼らは諦て二度とこの件について声をかけてこなくなった。
しばらくして、新しい子供が僕たちの幼稚園にやって来た。それが誠だったがその時はまだその名を知らなかった。彼は初日からなぜ僕が隅っこに座って誰とも遊ばないのか興味を持った。ほんの数分間であっても誠は一日も欠かさず話しかけてきて、また他の子供たちと遊びに走っていった。彼はまるで保育士の先生たちのように毎日僕のところに来ては話しかけてきた。しかし、彼らとの間には一つの大きな違いがあった。先生たちは何度かの失敗の後で諦めたが、誠は数ヶ月もの間毎日毎日話しかけ続けたのだ。最初のうち、僕は彼に冷淡で彼が始めた会話をほとんど続けようとしなかった。そして、窓の外の木々の飾りの色が変わるにつれて彼に対する僕の態度も呼び方も裏上くんから誠くんに変わっていった。最初に話してから季節が二度変わったある日誠くんは何ヶ月も続けてきたようにまた話しかけに来た。
その日はまるで昨日のことのように細部に至るまで今でも覚えている。その日誠の顔が変わり始めたのだ。正確に言うなら顔そのものが変わり始めたのではなく、その上にあったものが変わり始めたのだ。周りのほとんど全ての人に見えていた落書きが徐々に消え始めた。一週間後ついにこの長い半年間ずっと話しかけてくれていた人の顔を完全に見ることができるようになった。
「すごいじゃないか!なんで言わなかったんだ?そんな大事件なのに!」
「分からない...ごめん...」
「ああ、そんなに気にすんなよ。怒ってないって。ただ大分驚いただけだからさ。今日の夕食時に高橋さんを見つけて話してみようぜ。」
「高橋さん?」
「ああ、それは、君が顔の見えないって言ってたあの男のことだよ。高橋純って名前だ」
昼食を終えて僕は格闘訓練の場所へ向かった。スパーリングパートナーは今朝その約束をした森山くんだった。僕たちは防御と攻撃の技を教わった。それは本当に有益で同時に面白かった。技を練習してグループ内での全てのスパーリングを終えるとかなり暗くなっていた。それはただ一つ、夕食の時間を意味していた。
誠といわゆる食堂で合流して高橋さんを探しに行こうとしたその時突然後ろから誰かに呼び止められた。
「おーい!待ってよ!」
振り返って後ろを見なくてもそれが誰でまさにその人が僕を呼んでいるのだと分かった。森山くんだった。彼がこちらに歩いて来る間僕は誠に事情を説明して今のところ高橋さんに会いに行くのは延期しようという決断をした。僕の特異な点について他の誰にも知られたくなかったからだ。新しい友達に対して完全に正直でないような気持ちもあったが自分についてほとんど知らない人間に完全に心を開いて信頼するにはまだ難しすぎた。
夕食を終えて今日一日で消費したエネルギーを回復すると誠に別れを告げてそれぞれのテントへと向かった。この日の夜テントの隣人たちは昨日ほど元気がなかった。それもそのはずこんな地獄のような一日の後では、ベッドに倒れ込んでバタンキューしたいだけだろう。今夜はほとんど誰も話さずに黙ってそれぞれの小さな用事を済ませて眠る準備をしていた。ほんの三人がタバコを吸いにテントの外へ出て行って戻ってくる頃には他の者は皆ベッドに入って眠りにつこうとしていた。タバコの匂いをぷんぷんさせたこの三人が明かりを消してそれぞれの寝床に就いた。こうして、キャンプでの二日目が終わった。
金曜日が来た。今日から一ヶ月前までの、どんな金曜日でも僕はいつも気分が高揚していた。なぜなら学校へ行けば次の二日間は好きなだけ眠れて残りの時間はおじいちゃんと話して何も心配せずに過ごせるのだと分かっていたからだ。そしてこの何年も続いた習慣は四週間前に崩れてしまったからこの金曜日それは完全に終わりを告げた。初日から続く筋肉痛は治まるどころか昨日の地獄のような訓練でさらに悪化して僕を含め多くの新兵はベッドから起き上がるだけでも一苦労だった。僕が一番下の段で良かった。二段目からどうやって降りていたか想像もつかない。
ただただ今日の訓練プログラムが昨日の繰り返しでありませんようにと祈るばかりだった。僕と同じ班の兵士たちの祈りは聞き届けられた。今日は、少なくとも午前中は、休息日だった。革命をどうやって実行するかについての計画を説明され始めた。説明によるとこれは計画のごく一部であって計画の大部分はここでの二週目に説明されるということだった。今のところ僕たちの目標が正確に何であり革命軍の将軍が革命によって何を意味しているのかについて、簡単に説明された。
これまで彼らがどのようにこの国を変えようとしているのか僕は完全には理解していなかったが全ては思っていたよりもずっと単純だった。彼らの計画は次のようなものだった。つまり、党に所属しているこの国の統治に関する決定を下している者を全員処理こと。しかし僕たちの主たる目標はただ一人の男だけだった。計画を説明してくれた中尉の話によれば、この一人の男が党全体を振り回している。そして事実上我が国の唯一の統治者なのである。党員の中にも彼の政治を支持している者ばかりではなく芸術の復活を支持するとそれを人類の最高の財産と考える者さえいると知った。これらの人々こそが我々の同盟者なのであるが無論、名前も顔も誰も知らない。もし彼らのことが露見すれば彼らにどんな地獄が待ち受けているか想像するのも恐ろしい。
昼食時に誠と会って僕たちは高橋さんを探しに行った。森山くんが他の人たちと昼食を取っているのを確認して上ついに高橋さんを見つけた。幸運なことに彼は一人でエネルギーを補給していたおかげでそれほど苦労せずに会話を始めることができた。
「こんにちは、高橋さん!昨日はリングでやられたっすね!いくつか技を教えてくれませんか?」
「あ?ほっといてくれ。飯を食べてるんだ。」
この言葉を聞いてすぐにこの人物が何者なのかを知るのは容易ではないだろうと悟った。あとは親友のコミュニケーション能力を信じるしかなかった。
「なんでいつもそんなに攻撃的ですか?ほら、リラックス。俺たちは敵ではありません」
「……」
彼が何か囁いたが、僕にも誠にも何て言ったのか聞き取れなかった。
「ここはどうですか?もう慣れました?」
返事はなかった。もうこれ以上彼から何か情報を引き出すのは無理かと僕はほとんど諦めかけていた。しかし僕の親友は困難に直面してもそう簡単に引き下がるつもりはなかった。
「俺の親友を紹介したいんです。光川ヒロっていんだ。彼はたまたま他人の顔を見えないって言うから変じゃないですか」
「顔を見えない?どういうこと?」
「俺自分相当わかりませんが直接聞いてもらいましょうか」
「え?僕の話?」
「この流れ君以外誰かあるわけないだろう」
「そうね...」
誠はどういうつもりそれを聞くよく分からないが乗ることにして僕の事情を高橋さんに話した。もちろん、彼の顔をこの合宿にいる新兵中で唯一見えないこと省略しておいた。
「うん...変な話だね」
「でしょう?いつも変わるって言います!だからヒロ以外誰かあるかなって思っていろんな人に尋ねます。」
わざわざ僕の事情を話す必要はなかったと思うがもしかするとこの言葉がなければ高橋さんは心を開いてくれなかったかもしれない。
「そうか。まぁ何か面白いことを見つけたら話してね」
「ぜひ!代わりに俺に技を教えてください!」
「お前な~」
「光川ヒロです。よろしくおねがいします。」
「ああ。」
「結構大人っぽく見えるけど、もう大学は卒業したんですか?」と誠は攻撃を続けた。
「ああ、もう5年前にな。大学じゃなくて、専門学校だけど。パティシエやってる。」
「え?本当ですか?!すごいっすね!全然そんな風には見えません!なあ、ヒロ?」
「うん、本当にパティシエには見えないっすよね、どっちかって言うと警官って感じかな」
顔は見えなくても体格を見ればなぜ彼が第一班にいる簡単に分かる。つまり最強の班にいるのかは明らかだった。それまで僕はパティシエに対して全く正反対のイメージを持っていたが高橋さんはそれを変えてくれた。
「どうしてここに来たんですか?家族か友達の誰かが一緒に来たんでしょう?どこにいるんですか?」
「いや、一人だ。」
「え?本当に?ここで一人は珍しいっすね。今まで話した奴はみんな誰かと一緒に来ております。高橋先輩が初めてだ!」
「先輩ってやめて」
「いやです。まぁもう邪魔しないでおきます。またあとですね」
沈黙を「うん」と受け取って僕と誠は別のテーブルに移って食事を続けた。高橋さんが特に変わった人間だとは思わなかった。むしろ逆だった。数年前に僕の親友と出会っていなかったら僕はこんな人間になっていたかもしれないと思った。
「高橋先輩変だと思わなかった?」
「別に普通じゃないかな。そっちは?」
「なんとなく君を思い出したんだよ。」
その言葉は図星だった。誠はいつものように人をよく理解して誰にでもアプローチする方法を見つけることができている。まさにそうやって彼は僕が誰も入れたことのない閉ざされた世界への鍵を見つけたのだった。
新しい知り合いについてさらに数分話し合った後僕たちは昼食を終えてそれぞれの班へと戻った。午後は格闘訓練が待っていた。僕のスパーリングパートナーはまた森山くんだった。訓練を重ねるごとに、僕たちはますます親密になっていっていつの間にかお互い名字ではない名前で呼び合うことになった。もう彼に小さな秘密を打ち明けてもいいと思えるようになった。もっともそれを秘密と呼ぶよりは誰彼構わず話すようなことではない、というだけのものだが。そしてこいつがそういうことを打ち明けられる、あの狭い人々の輪に入ることができたという事実はただ一つを意味していた。僕は新しい友達を見つけたのだ。
夕食時そのことを親友に自慢すると彼は冗談めかして彼を嫉妬させるようなことはするなよと言った。真剣な顔だったので冗談だとすぐには分からなかった。しかし僕が変な顔をすると誠は大声で笑ってそれがただ僕を楽しませて同時に彼自身の気分を上げるための方法だったのだと分からせてくれた。
この日僕のテントの隣人たちは皆使いきれないほどの余分なエネルギーを持て余しておいて深夜まで様々な話題で盛り上がった。芸術の話で始まってどんな女性が好みかという話に続いて革命が終わったら何をするかという話で盛り上がりかけていたその時、担当官の黒田中尉がテントにやって来て僕たちをランニングトラックに連れ出して10キロを走らせた。その後疲れてはいたが満足げにテントに戻ってまるで死んだように眠った。夢の世界に落ちる数分前にここ数時間で起こったこの騒がしい出来事全てを頭の中で反芻して一つの結論に達した。やはり同じ釜の飯を食う仲間たちを知っておく方がいい。そうすれば彼らはただ隣に立つだけの同盟者ではなく困難な時に決して見捨てることなくまた見返りに同じようにしてくれる真の戦友となるのだから。
訓練合宿四日目一部の者は非常にせっかちで早く銃器を使った訓練を始めたがっていた。僕は彼らの望みを全く共有していなかった。もし可能なら銃器には一切触れたくなく自分の能力と可能性の範囲内で革命に別の方法で貢献したいとさえ思っていた。午前中はまたしても筋力と持久力の地獄の訓練に戻って午後は格闘訓練が続いた。三度の食事はそれぞれ異なる人々と共にした。
朝食では同じテントの別の人々と少し親しくなった。正確には、浜野陽翔と浜野海翔という双子の兄弟で二人とも第一班にいた。彼らは僕よりたった6歳年上だったが既にそれぞれ妻と子供がいた。彼らが妻がこんなに若くして未亡人になるかもしれないにもかかわらずこの国を変えて真の道へ導こうとするその意欲に僕は打たれた。その質問を彼らに投げかけると彼らは自分自身と互いを信じているので実の兄弟のような人物が背中を守ってくれているなら自分の命を恐れることはないと言った。
昼食は竜二と過ごした。彼はじわじわ僕に対してため口を使い始めた。僕は自分のおじいちゃんのことそして彼のおかげで初めて芸術というものを知ったことについて話した。
夕食では親友と僕は高橋さんに付き合った。彼は全身で僕たちに会えてあまり嬉しくないという態度を示そうとしていたが誠はそんなことで全く止まらなかった。彼は高橋さんの信頼と友情を勝ち取るための攻撃を続けた。もちろんそれと同時に彼がここにいる他の全ての人々と何が違うのかを理解しようと試みながら。このようにして四日目は終わりを告げて特に重要な手がかりを得られないまま僕たちはそれぞれのテントへと戻った。
一晩明けるとまだ銃を渡されていないことに対する不満がまるで目に見えて成長する。それは僕のテントや班だけではなかった。耳に入ってくる周りの人々の話は全てただ一つ、銃器と射撃についてだけだった。午前中は格闘戦の準備訓練を行った。訓練してまだ五日目だが、ここでのスパルタ的な環境のおかげでほんの数日で合宿に入る前よりもはるかに強くになって自信を持ち始めた。
これは事前に計画されていたのかそれとも司令部が一般の兵士からの苦情を受けてそのような決定を下したのかもしれないが、いずれにせよ午後には手榴弾の扱い方について教えられた。手榴弾には敵の視界を遮るものから人を殺すことさえできるものまで。非常に多くの種類があった。これにより不満は少し収まり始めた。もしこれが当初の計画通りだったならその計画は成功したと言えるだろう。
しかし僕の感情は周りの人々とはかなり異なっていた。胸に何か奇妙な感覚を覚えた。一つの認識が訪れた。今僕は手に誰かを殺すことができる物を持っている。誰かの命を奪うことができる。そんなことを、こんなにも簡単にしていいのだろうか?そう今でも自分たちがしていることはこの国と将来の世代のためになるはずだと理解している。しかし自分たちが与えたわけではないものをこんなにも簡単に取り返しのつかない形で奪ってしまっていいのだろうか?なぜなら、僕たちが戦おうとしている相手にも家族がいるのだ。彼らにも、失いたくない人がいるのだ。彼らは僕が愛した女性を奪った。愛する人を失うことがどういうことか僕は身にしみて知っている。以前はそれを実行する「機会」も「手段」もなかったのでこれまで考えたことはなかったが今は全てが変わった。
僕はその両方を手に入れた。もし僕の意思だけで決められるなら彼女の死に関わった全ての者を恐怖にもかかわらず僕の臆病さにもかかわらず自ら殺したいとさえ思った。今この物を手にして僕は突然これらがどれほど恐ろしいものかを悟った。それらに触れただけでかつて考えもしなかったような考えが頭をよぎった。武器はあなたに力を与えて強さを与えると言うが、実際にはあなたをその奴隷にするだけだ。最終的にはあなたがそれらを支配するのではなくそれらがあなたを支配するのだ。もし僕の中で暗い塊となって日々蓄積されていた増大し続けていた復讐心を実行に移せばいつか僕にも、僕が殺した者たちが人生で最も大切にしていた人々が、復習に来るだろう。この復讐の悪循環は決して止まらない。僕、僕の手で命を落とした者たちの子供たち、そして僕の子供たち、僕ら全員がこの二つの呪われた物「武器」と「復讐」の奴隷となるのだ。
全ての人々を変えさせる別の方法はないのだろうか?社会の頂点を変える必要があるのだろうか?この国の全ての人々を変えればいいのではないか?そうすれば党もどこへも行きようがない。なぜなら党は人々とその軍隊という形で表現される支持基盤を完全に失って全くの孤独な存在となるからだ。このように矛盾しておりながらも似通った非常に多くの考えが文字通り数秒のうちに冷たく鋭く鋼をも切り裂く槍となって僕の脳を貫いた。
このような状態から立ち直るには時間だけでなく外部からの助けも必要だった。誠は何度か大声で呼びかけてようやく僕に届いた。
「おい、聞こえてるのか?」
この言葉の数回繰り返しの後でようやく僕の脳はこの地球に降り立って今どこにいるのかを理解することができた。
「あ...ああ、うん。ごめん、何て言ったんだっけ?」
「いや、もういいよ。どうしたんだ?さっき会った時から様子がおかしかったぞ。何があった?」
「いや、何でもないよ。本当に...」
「何でもない?冗談だろ?お前がこんな風なのは初めて見たよ。ずっとぼっとしてる。全くここにいないじゃないか。話せ!」
僕はマックスに頭の中を巡っていた考えを話した。冬眠から突然目覚めたような激しい復讐心それにすぐ続いた恐怖そしてもしかしたらこの訓練合宿や革命は全て間違っているのではないかという考えについて。
「お前にこの一ヶ月に起こったことを視野に入れば全く普通のことだと思うぞ。多くの人間は一生かかってもお前に起こったようなことは経験しない。誰にもそんな経験をしてほしいとは思わない。他の人間ならただ自分の部屋に閉じこもって出てこなくなるかあるいはもっとひどいことになっていたかもしれない。でもお前はベッドから起き上がる力を見つけただけでなく自分の権利のために芸術のために戦うためにこの合宿に来たんだ。それは簡単なことじゃない。お前は本当に強い人間だ。俺はお前を誇りに思うよ!」
これらの言葉を聞いて僕はとても嬉しかった。いつものように僕の親友は僕がその瞬間に最も必要としている言葉を理解して上で僕にその言葉を贈った。「彼なしでどうやって生きてきたんだろう...」という考えがベッドで眠りにつく前にさらに何度か僕の脳を訪れるだろう。
午前中僕の脳はまだ上の空だった。何を、どのようにしたのかあまり覚えていない。昼食時再び友人の顔を見た時楽になった。ただ一つだけ後悔していたのはもっと早く出会えなかったことだ。昼食休憩の後最大の試練が待っていた。僕たちは射撃場に連れて行かれた。それはただ一つ銃器を撃つ時が来たことを意味していた。新兵たちは皆大喜びだった。しかし、僕にとってはそれは本当の拷問だった。二週間前僕が拷問を受けた時頭を冷たい水に漬けられるよりも銃を手に渡された方がもっと早く白状していたのだろう。それほど僕はこれらの恐ろしい物体を手に持ちたくなかったのだ。
各兵士に拳銃と自動小銃が支給された。それらをどのように使うべきか、照準の合わせ方、弾倉の交換の仕方、分解と組み立ての仕方、そして最後に射撃の仕方が説明された。これら全てに数時間を要した。そのため実際に射撃する時間はそれほど多く残されていなかった。皆ができるだけ多くて早く撃ちたがっていたので、僕は苦もなく列の最後尾に並ぶことができた。ついに自分の番が来て三発撃ったところで中尉が今日の訓練は終わりだと告げた。
この日まで訓練ではほとんど限界まで体を酷使していたが今日は違った。体は力とエネルギーに満ちていたが感じている疲労はそれまでのどの日よりもはるかに大きかった。自分自身との内なる戦いと自分のしていることが正しいのかどうかを理解しようとする試みが僕の脳を過飽和状態にして完全に疲れ果てていた。
自分の番を待っている間僕は標的を撃つ他の人々を観察していた。ある一人の人物、それは女性だった。彼女の表情が銃を手にする他の兵士のそれとは異なっていることのために僕の目は引きつけられた。これまでそのようなものを見たことはなかったが鏡を見れば全く同じ表情をしているだろうと確信した。そのため僕は彼女と知り合いになってみたいと思った。中尉の言葉の後で彼女を見つけて話しかけようとしたが見つけることができず食堂とシャワーを素通りしてまっすぐ自分のテントへと向かった。今はそんなことをしている場合ではなかった。後になってもちろん夕食を抜いた決断を後悔するだろうがその時は食堂へ行く気力もなかった。
合宿に来て初めてろくに眠れないまま僕は朝食へと向かった。そこでは、親友が昨夜の夕食に僕が見つからなかった理由を詰め寄ってきた。事情を説明すると誠は僕の状況を理解して自分の朝食の半分を分け与えてくれた。これから始まる訓練の日のために体力を回復できるように、と。
僕は今日は射撃場に全く行かなくて済みますようにと残された最後の力を振り絞って祈ったがあたかも僕を嘲るかのように運命は予期せぬ贈り物を用意していた。朝食が終わるとすぐに僕の班は僕が最も行きたくない場所へと向かった。数日前僕は自分だけがこの感情を抱いていると確信していたが昨日目にしたあの女性をもう一度見かけて心の中でほっとした。僕だけではない。僕と同じように考える戦友がいる。訓練終了後昨日の過ちを繰り返さないためにすぐに彼女に近づき、話しかけた。
「初めまして僕は光川ヒロと申します。お名前は?」
「私は星野アンナです。何か御用でしょうか?」
「星野さんの顔に恐怖が見えたので...間違っていたらすみません。星野さんもこれをやりたくないんじゃないですか?」
「やっぱり、気づかれちゃいましたか...指揮官に私のこと報告しますか?」
「いいえ、そんなことはしません。僕が気づけたのは、僕も同じような感情を抱いているからです。正直に言うと僕は武器が嫌いなんです」
「ああ、そうだったんですか。私だけじゃなくてよかった。」
昼食時に話を続けて僕たちはお互いのことをより深く知った。僕は自分について少し話しその代わりに彼女の情報を得た。彼女は22歳で、医学部の学生だった。きっと彼女の嫌悪感と恐怖は僕のものよりもさらに強いだろう。人を治療し助けたいと思いながら殺さざるを得ないということがどのようなこと、想像するのは難しくほとんど不可能だ。僕は彼女をとても哀れに思った。彼女は第一班にいる兄にここへ連れてこられたのだと話した。星野さんを連れてきたにもかかわらず兄は彼女とほとんど時間を過ごさず。そのため彼女は非常に孤独を感じてて誰にも打ち明けられないでいた。彼女の言葉によれば僕の存在は彼女にとって真の救いとなった。
「僕たちは国のためそして愛する芸術のために戦っているって分かってるんだけどそれでもですね。本当に難しいですね…」
「光川くんに同意するわ。」
「でも、もし...」その瞬間僕にはまさに天才的なアイデアが浮かんだように思えた!
「どうしたの?」
「もし、班の指揮官に武器を扱わなくてもいい仕事を提供してもらうよう頼んでみたらどうかな?星野さんは実際は医者だ、戦争には医者が必要でしょう。僕もきっと何か役に立てるはずです!」
この言葉を聞いて星野さんは僕のアイデアを支持して昼食休憩が終わらないうちに僕たちは指揮官用のテントへ急いだ。僕たちの班の指揮官山田明中尉を呼び出して僕たちの状況を話して可能であれば別の場所に移して他のどんな仕事でも僕たちにできる仕事を与えてくれるよう頼んだ。しかし僕たちは非常に大きな声ではっきりと揺るぎない拒否を受けた。
「お前たち、正気か?どこへ来たか分かっているのか!自分たちで承知の上で来たんだぞ!彼女が医者だって?我々には医者はもういるんだ!足りないのは革命の推進力である兵士だ!だから『ノー』だ!はっきり分かったか?もう一度こんなことを聞いたら容赦はしないぞ!俺の前から消えろ!」
「まあ、とにかく試してみる価値はあったよね。」
「ごめんなさい、僕のせいで星野さんまで変な目で見られました」
「本当に気にしないで。私自身光川くんの提案に賛成したんだから。それに光川くん自身いい結果を期待してたんでしょう?大丈夫、本当に気にしないで!むしろ逆に助けようとしてくれてありがとう!感謝してるんだから!」
最後にこれからもお互いを支え合って助けが必要なら助け合うことを約束して僕たちは次の訓練の場所へと向かった。待っていたのは二日ぶりの筋力と持久力の地獄の訓練でその間に僕たちの体は完全に回復してさらに鍛え上げられる準備ができていた。訓練を終えて食堂へ向かうと誠と会って今日の出来事と新しい友達について話した。
「おお、もしかして何かいい感じなのか?」
「ち、違うよ!なんでそう思うんだよ!」
「ハハハ。冗談だよ。リラックスしろって!お前には、頼れる人間が俺だけじゃなくてよかったよ。」
合宿に来て初めてテントに戻った時には全員はもう眠っていた。理由は簡単だった――昔のように誠と長く時間を忘れられるくらい無邪気に話していたからだ。眠りについた時最初の一週間が終わりを告げた。この瞬間はここで過ごした時間を区切っただけでなくある友人との関係も変わる転換点でもあった。
感想を首を長くしてお待ちしております。
第五話は3月22日 10時00分に投稿します!




