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悩み事と解決方法

初めまして。僕は日本人ではありません。日本語勉強中です。何か間違いや誤りがあるかもしれません。その時はどうかご容赦ください!

これは僕の初めての小説であり、連載小説でもあります。これから一生懸命に、週1回新しい話を投稿するように頑張ります。

よろしくお願いいたします!ぜひ感想を聞かせてください!

 長い眠りから目を覚ました直後最初に頭に浮かんだのは「自分の部屋にいる」という感覚だった。けれど周りを見回してみるとそれが違うことにすぐ気づいた。ここは僕の部屋じゃない。というより僕の家ですらなかった。


 窓の外は真っ暗だ。ということはおそらく十時間ほどは眠っていたのだろう。僕は誰かの家のベッドの上に寝かされていた。


「ここはどこだ?誰が僕をここに運んだ?どうして?何のために?」


 そんな疑問が次々と浮かんできたけれどそれらはすぐに僕の腹の叫びに消された。何日食べていなかったのかは分からない。でも体の状態はあまりにもひどくてこの部屋の家具を全部食べてしまえそうな気さえした。


 それを防ぐために僕はベッドから起き上がりこの家の主人を探すことにした。階段を下りて一階へ行くとリビングには六人の人がいた。全員大人で一番若そうな人でも見た目は三十歳くらいはありそうだった。


 僕の姿を見ると彼らは嬉しそうな顔をして僕をテーブルへ招いた。


「あなたたちは誰ですか?」


「質問はあと。まずは食べなさい」


 そう優しい声で言ったのはその中で唯一の女性だった。僕はもう本能に逆らうことができなかった。テーブルに並べられた料理に飛びつき胃が許す限り、いやそれ以上に食べた。

 

 最初は食べること以外何も考えられなかった。でもお腹が満たされていくにつれて部屋の全員が僕を見ていることに気づいた。少し恥ずかしくなった。

それでも空腹のほうが勝っていた。僕は差し出される料理をひたすら食べ続けた。夕食を食べ終えると僕はもう一度同じ質問をした。


「あなたたちは誰ですか?」


一番年上の男が答えた。


「我々は『エレス』。この国で最大芸術愛好家のサークルだ。私は副リーダーの佐藤 蓮(さとうれん)


「 じゃあ、僕が探していた人たちって……あなたたちですか?でもどうして僕はここに?」


「大変な目にあったな、坊主。うちの仲間があと数分遅れていたら今頃お前はここで話していなかっただろうな」


 やっぱり夢じゃなかった。僕は本当にもう少しで命を落とすところだった。最後の最後までただの悪い夢であってほしいと思っていた。けれどその言葉で僕は完全に現実に引き戻された。まだ頭はショックから完全には回復していなかったけれど時間が経つにつれて少しずつ楽になっていった。


「佐藤さんの仲間が僕を助けてくれたんですよね?その人はここにはいないという意味ですか? お礼を言いたいんですが」


「残念ながら誰も彼の名前も顔も知らない。彼は芸術対策隊で働いて我々の潜入エージェントだからな。安全のためだ。会う必要がある時は彼のほうから連絡が来る」


「そ...そうですか……」


 僕は少し残念に思いながらも頷いた。でももう一つの疑問はまだ解決していない。


「それで……僕はどうやってここに?」


「その男の話によると、その日にお前の顔を見た芸術対策の兵士を全員始末して痕跡も全部消したらしい。そのせいで彼はかなり面倒な状況になった。潜入がバレる可能性もある。だから今は身を隠している」


 まただ。周りの人たちが僕よりもずっと多くのことを知っているような感覚。どうしてただの少年のためにそこまで危険を冒すんだ?彼らに信頼される理由なんてどこにもないはずなのに。


「佐藤さんどうしてそんな危険を冒してまで僕を助けたんですか?」


「我々は党と戦う人間を集めている。近いうちに革命が起こる。そのためにはできるだけ多くの人間が必要だ。一人増えるだけでも大きな力になる。それにお前みたいに若くて元気な奴は戦いでも役に立つ。国を変えたいんだろう?」


「もちろんです! そのために佐藤さんたちを探していたんです!」


 けれどその言葉は頭の中で何度も反響し少しだけ不自然に感じられた。

普通の人ならこの説明で十分納得するだろう。でも僕は違う。前にも似たことがあった。紀美子と彼女の仲間たちはほんの数時間しか知らない人間のために命を捨てた。それ以上深く考えるのはやめた。どうせ答えは出ないと分かっていたから。ただ一つ気になった言葉があった。彼曰く戦いで役に立つって...まさか。


「あなたたちのサークルって何人くらいいるんですか?」


「このサークルだけで五531だ。お前が入れば532人になる。入るんだろう?」


「もちろん入ります。でも……五百人ちょっとで革命なんてできるんですか?」


「我々が唯一のサークルだとは言っていない。ただ最大だと言っただけだ。他にもサークルはあるよ」


 なるほど。そういうことか。僕はもっとこの人たちと話したかった。まだ聞きたいことは山ほどある。そもそも、ここにいる人たちのほとんどの名前すら知らない。けれど佐藤さんの次の言葉が僕の予定を完全に変えた。


「もう帰る時間だ、ヒロくん。健太(けんた)が君を送る。準備しろ」


「待ってください! まだ質問があります。お願いです、何が起きているのか教えてください」


 佐藤さんは落ち着いた声で言った。


「そのうち全部分かる。だが今はお前への最初の任務だ。無茶なことはするな。ただ待て。お前の命に危険はない。いつも通りに生活しろ。時が来たらこちらから連絡する」


 その後僕の顔にはマスクがかけられた。この家の場所を知られないためらしい。まだ完全には信用されていないのだろう。まあ当然だ。彼らは僕を初めて見たばかりなのだから。運転手の佐藤健太の話ではさっきの女性は彼の母親で僕と話していた佐藤蓮は彼の叔父らしい。


 彼の父親はそこにはいなかった。どこにいるのか聞こうかとも思ったけれどなぜかその時の僕の頭は「聞かないほうがいい」と判断した。余計な質問はやめておいた。その代わり僕は別のことに夢中になっていた。車に乗ることだ。僕は人生で初めての経験になった。窓の外で何が起きているのか気になりすぎて僕はこっそりマスクを片目だけ持ち上げて外を見た。街灯や家の窓の光がものすごい速さで後ろへ流れていく。僕は今まで車に乗るという体験を想像したことすらなかった。長距離の移動はいつも地下の黒い坑道だった。隣を走る車もいないし歩道を歩く人もいない。地上を移動する時はいつも自分の足だけだった。でも今目の前に広がっている景色はまるで映画みたいだった。祖父が言っていた「映画」というものの説明にはぴったり当てはまっていた。流れていく映像。車輪の音。エンジンの音。ほかの車の音。言葉では説明できない空気だ。車に乗れる人たちは毎日こんな景色を見れるのだろうか。...なんて幸せなんだろう。


 車で家まで送ってもらいようやく目隠しを外された。正直最後のほうはほとんど意味がなかった気もする。健太さんは僕を車から降ろすとそのまま家へ戻っていった。そこで僕はふと気づいた。


「どうして彼は僕の家の住所を知っているんだ?どうして佐藤さんは僕の名前を知っていた?だって僕は何も教えなかった。」


 身分証明書も持っていなかった。知る方法なんてないはずだ。生まれて初めて会ったはずの人たちが僕は想像できる以上に彼らは僕のことを知っていた。しかも彼らは僕にほとんど質問をしてこなかった。


 それってつまりこの一週間に僕に起きたことを全部知っているってことなのか?もしそうだとしたらどうして?僕は監視されていた?でもなぜ?僕は何者なんだ?どうしてそんな注目を集めるんだ?

疑問が次々と頭に浮かんでいたが家のドアを開けた瞬間その思考は止まった。父の声が聞こえたからだ。


「やっと帰ったか? どこに行っていたんだ。心配していたぞ」


「友だちの家に泊まってたんだ。連絡しなくてごめん」


「友だち? わかった」

 父は確かに「心配していた」と言った。けれどその表情と声の調子からは僕にはそう見えなかった。でもその疑念を確信に変えられない理由が一つあった。ここ数日両親の顔を見ていなかった間ある変化が起きた。僕は彼らの顔を以前ほどはっきりと認識できなくなっていた。少しずつ街や学校で見かける普通の人たちの顔と同じように見えてきていた。もちろんまだ人混みの中で見分けることはできるがこの変化が続けばその能力もいずれ失われてしまう気がした。


 その後ここ三日間で起きた出来事をもう一度頭の中で振り返りながら僕はベッドに入った。だがなかなか眠れなかった。理由はさっきまで十時間も眠っていたことはもちろんそしてもう一つの理由は僕の親友の誠だった。僕は彼に何と言えばいいんだろう。どうやって謝ればいい?約束を破ったことを彼は怒っているだろうか。


 結局夜明けの数時間前になってようやく眠りについた。そして僕の耳元で鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ました。目覚ましを止め身支度を終えると僕は学校へ向かった。行く間ただ一つ祈っていた。


 運命が誠と顔を合わせる前に少しでも長く考える時間をくれますようにと。それくらい僕は彼に会うのが怖くて同時に会いたくなかった。学校へ向かう道の途中いろいろな考えが頭に浮かんだ。中には嘘をつくという最悪の案もあった。最初は悪くない考えのように思えたがもう一度よく考えてみて僕はすぐにその考えを捨てた。二度の裏切りほど最悪なものはない。


 鳥のさえずりや風の音はやがて登校してくる生徒たちの声にかき消されていった。そのせいで僕は完全に考えに集中することができなかった。結局はっきりした結論が出ないまま学校に着いた。


 いつもの春の晴れた日。いつもの学校。いつもの生徒たち。数日前も数週間前も数ヶ月前もすべて同じだった。ただ一つだけ違うものがあった。それは僕の心の状態だった。今まで感じたことのない感覚で溢れていた。でもそれを言葉で説明することはできなかった。語彙力も感情を理解する力もまだ足りなかった。


 どうやら僕と誠は登校の途中で行き違ったらしい。授業が始まるまで僕は彼に会えなかった。しかし最初の授業の後の休み時間誠が僕のクラスに飛び込んできて大声で叫んだ。


「ヒロくんは今日も来なかった!?」


 僕は彼を見た。彼も僕に気づいた。怒りと安堵が混ざった表情で彼はさらに大きな声で言った。


「お前ってやつは...!」


 クラスのみんなと先生がこちらを見ている中僕はすぐ席から立ち上がって何も言わずに誠の手をつかみそのまま校庭へ連れていった。歩いている間彼は何も言わなかった。おそらくここで怒鳴ると周りの生徒に迷惑になると思ったのだろう。そして僕たちの声が他の誰にも届かない場所まで来ると彼は叫んだ。


「一体どこにいたんだよ!?お前の親が言ってたぞ!金曜からずっと家にいなかったって!土曜も日曜も月曜も!どこに行ってたんだ!」


「芸術対策の兵士を尾行してたんだ...」


 僕は嘘をつかないことにした。もうすでに約束を破ってしまっった。もし嘘までついたら僕は本当に最低のクズになってしまう。


「お前頭おかしいのか!?一人で行かないって約束しただろ!死にたいのか!?」


「ごめん...我慢できなかった...」


「ああもう……本当にバカだな!」


「本当ごめん...」


 誠はため息をついた。


「でもなんで今まで帰ってこなかったんだ?あいつらを国の反対側まで追いかけてたのか?」


「実は...」

 僕はあの時から今までに起きたことを全部話した。カフェの時と同じように誠は途中で口を挟まなかった。ただ黙って聞いていた。でも彼の表情を見ればその瞬間ごとに何を感じているのかは分かっていた。話し終えると彼は少し笑いながら言った。


「いっそ殺されてればよかったのにな。そうすれば来世ではもう少しマシなバカになれたかもしれない」


 もちろんそれは冗談だった。僕を励まそうとして言ったのかもしれない。

怒っていないことを示したかったのかもしれない。あるいは僕には分からない別の理由があったのかもしれない。


そして彼は前にも僕を驚かせたあの言葉を言った。


「...嘘をつかなかったことありがとうね」


「うん、ここで嘘なんてつけるわけがない」


「それでも感謝してる」


 その言葉を聞いたあと僕はようやく気づいた。授業開始のチャイムはもう数分前に鳴っていた。僕たちは急いで教室へ戻って席に座った瞬間僕は自分の内側のすべてが落ち着いていくのを感じた。心も、頭も、魂までも。それは拘束されていた間ずっと求めていた感覚だった。あの期間僕はたくさんのことを考え抜いた。けれどどの考えも最後までたどり着くことができなかった。


 今だって僕はまだすべての答えを見つけたわけじゃない。それでも失ってしまうかもしれないと思っていた親友との会話のあとで彼はもう一度僕のそばに残ってくれただけじゃなく今の僕に必要だったこの感覚まで与えてくれた。それだけで十分だった。


 その日も学校は終わった。朝の会話のおかげで僕は残りの七つの授業に集中することができたし試験に必要な知識もしっかり頭に入れることができた。昼休みに家へ帰る時は誠と一緒でなければいけないと命令されて放課後学校の門の前で彼と合流すると僕たちは一緒に帰ることになった。


 帰り道僕たちはいろいろなことを話した。僕を助けたあの人たちは誰なのか。どうして僕のことを知っているのか。そもそも、彼らを信用していいのか。けれど二つの頭で考えても僕の中に引っかかっている疑問のすべてに答えを見つけることはできなかった。


 分かれ道に着いたとき誠はそう言った。


「今日の夜お前の家に行く。もし家にいなかったらもう二度と俺を友達なんて呼ぶな」


「分かったって。大丈夫だよ」


 僕たちはそこで別れた。僕は家へ向かった。家はいつもと同じだった。

寒さをしのぎ眠ることで疲れを取るための場所。ただ最近はその「眠る」ということすらうまくできていなかった。


 今日あったことを今までのように紀美子に話したくなった。そんな簡単な行為で僕はいつも救われていた。僕はズボンの左ポケットに手を伸ばしていつもそこに彼女の写真を入れていたがそこには何もなかった。完全になくなっていた。もう何日も前からそこには写真は存在しない。もうつものように彼女の顔を気まぐれで見ることができない。その事実が僕をさらに悲しくさせた。僕は耐えきれなくなり泣いた。最初に彼女を失ったあの日とまったく同じように。もちろん人を失うこととただの紙切れを失うことは比べられない。でもその紙切れは僕にとってそれほど大切だった。それは僕が失った人の代わりだったから。


 この写真はいつも僕の側にいてくれる。いつも僕を支えて慰めてくれると思っていたがその夢は崩れた。もちろん地下に閉じ込められていた週末の時点で写真がなくなっていることには気づいていたがその時は僕の頭は別のことで手いっぱいだった。どうやって死なずに済むか。どうやって体力を保つか。どうやって狂わずにいられるか。どうやってここから生きて出るか。


 ようやく今その問題がすべて消えた瞬間紀美子を失ったという重さがまた僕の肩に落ちてきた。きっと今の僕はまだそれを受け止められるほど強くない。僕は誠が来るまでずっと泣き続けていた。


 その日以降僕の親友は何度か僕の家に来た。そうして一日が過ぎ、二日が過ぎ、一週間が過ぎ、二週間が過ぎた。僕の毎日は勉強と暗記と試験の準備で埋め尽くされていた。


 この二週間僕の気分はまるで天気に支配されているみたいだった。晴れた日は落ち着いていて人生の大事な時期に向けて勉強するに専念していた。雨の日や空が雲に覆われている日は何もしたくなくなった。ただベッドに横になって天井を見つめながら考えていた。


 空の状態に関係なく日が経つにつれて佐藤さんの言葉への懐疑はどんどん大きくなっていった。


「そのうち連絡する」


 そう言われたのにこの十四日間彼らの気配を一度も感じなかった。もしかして僕のことを忘れたんじゃないか?もう必要ないと思われたんじゃないか?

それとも僕は邪魔者であの方法で消したかっただけなんじゃないか?


 誠は僕の親友だけのことはあって僕の心が弱くなる日をちゃんと分かっていた。そしてそういう日には必ず僕の家に行くという約束をしていた。僕が一人で何か取り返しのつかないことをしないようにためだった。彼が来ると僕たちはたいてい学校でその日に起きたことを話したり試験の勉強をしたり退屈になると外へ散歩に出たり時間を過ごしていた。


 その途中で僕を助けたあの人たちについていろいろな推測をしていた。現実的なものもあれば完全にバカげたものもあった。でもそんな話をしているうちに僕は少し申し訳ない気持ちになった。彼らは僕の命を救ってくれたのに僕は彼らを疑っている。もし彼らが本当に悪い人間だったなら大切な潜入エージェントを危険にさらしてまで僕を助ける理由なんてないはずだ。


 そんなある日のことだった。母が僕の部屋に入ってきて言った。


「友達が来てるわよ」


 僕は少し驚いた。


 誠は今日来ると言っていなかったからだ。階段を下りながら僕は思った。

きっと抜き打ちで様子を見に来たんだろう。僕がまた何か無茶を考えていないか確認するためにでも玄関に立っていたのは僕が思っていた人じゃなかった。


 そこにいたのは二週間前に僕を家まで送った運転手佐藤健太だった。周りに誰もいないことを確認すると彼は言い始めた。


「時間きた。荷物をまとめろ。出発しろ」


 もしかしたら僕に事前に誰かが情報を伝えていて僕が何か知っていると思ったのかもしれない。でも僕にとってその言葉は生まれたばかりの赤ん坊に親が泣かないように言う言葉と同じくらい意味不明だった。


「荷物?どこへ行くんですか?」


「お前まだ知らなかったのか?」


「……」


「軍事合宿だ。必要最低限のものだけを準備して。下着と着替えを少し持っていけ。残りの服や装備は向こうで支給される。五分だけだ」


「家にはどれくらい帰れないんですか?」


「合宿は十四日間だ」


 十四日間!?でも両親には何て言えばいいんだ?それに突然いなくなったら誠は絶対におかしいと思うだろう。しかも僕は試験の準備もしなきゃいけない。


「すみません。でも本当に行かなきゃいけませんか? 今は試験勉強の時期で…」


 言い終わらないうちに彼が大きな声で遮った。


「ふざけてるのか? お前自分で入りたいって言ったんだろ? 革命の話もしたはずだ。どうやって革命を起こすと思ってる? お茶飲み間高尚な議論かよ?俺たちは戦争に行くんだ。分かりやすく言ったつもりだぞ」


「は...はい」


 その言葉を口にした瞬間僕は自分の置かれている状況をやっと理解した。これまで僕は何を考えていたんだろう。革命が平和的に終わるなんてありえない。戦いがある。犠牲も出る。僕たちの側にも敵の側にも。つまりこの十二年間学校で必死に詰め込んだ知識はもう二度と役に立たないかもしれない。


 でももう後戻りはできない。この二週間頭には時々紀美子に会いたいという思いが浮かんでいた。でもそれを正当化できる理由を僕は見つけられなかった。やっと理由が見つかった。この国を次の段階に導く音楽や本や彫刻や映画や絵画や映画館や劇場やその他多くの芸術が当たり前にある世界にすること。


 そして面倒なことを考えずに彼女と祖父に会えるかもしれない。その考えはとても魅力的に思えた。でも一つだけ引っかかることがある。大きな引っかかりだ。それは誠だ。


 僕は彼に何と言えばいい?どうやって説明すればいい?それを考えていた時健太が時間について注意した


「時間がないよ。早く荷物をまとめろ!」


 僕は自分の部屋に駆け込んで荷物をまとめながら誠のことを考えていた。もちろん彼をこの冒険に巻き込むつもりはない。命の危険がある場所に連れて行くなんて僕には権利も資格もない。でも何も言わずにいなくなるのも嫌だ。


 だから僕は机の上に手紙を残すことにしてそこに状況をすべて書いた。すべて本当のことだった。親友に嘘はつけない。


 家を出る前両親には「友達の家で試験勉強する」と伝えた。そしてもし誠が来たら部屋に通してほしいとも言った。そこに手紙があるからだ。両親は僕の部屋に興味を持たないので安心して机の上に置くことができた。


 もしかしたらこれが最後に見る顔になるかもしれない。そう思いながら両親の顔を見つめ心の中で感謝しようとした。悪いことも良いこともすべて含めて彼らは僕の一部だった。でもそれはもう遅かった。この十四日間僕は勉強や考え事に夢中で両親の顔をほとんど見ていなかった。だから最後に顔を見たのは二週間前の火曜日だった。


 車に乗ると僕の心は落ち着かず溜まった思いが一気に溢れそうだった。

また映画のような景色を楽しもうとしたが目隠しをされれどこへ向かうか分からなかった。今回は覗くことしなかったって言うよりできなかった。隣にはもう一人の男が座っていたから。出発直後説明を受けた。


「まだ何も教えられてないらしいな。じゃあ全部話す。俺は小林 一輝(こばやしいつき)。よろしくな」


「僕はヒロです。よろしくお願いします」


「佐藤さんが言った通り軍事合宿に行く。お前を含め二百人が革命の訓練を受ける。格闘、武器、射撃、応急処置そして革命の計画も教える。質問はあるか?」


「...ありません」


「よし。お前は最後のグループだ。他の兵士はすでに訓練済みか別の合宿で同時に訓練中だ」


「兵士」その言葉で全身に鳥肌が立った。僕は覚悟を決めたつもりだった。

芸術のある世界のために戦う覚悟を決めたはずなのに。でもその瞬間覚悟はちょっとだけ揺らいだ。


 紀美子がくれた命をこんなに簡単に手放していいのか?彼女は「芸術を楽しめ知らない世界を知れ」と言った。しかし僕は、一冊も本を読まず、一枚の絵も見ず、音楽も聴いていない。何も知らない。あの日と同じ僕である。


 もしかすると僕は何か間違っているのかもしれない。でも正しい行動が何かは分からなかった。


「合宿には二百五十人ほど集まる。残りの五十人は教官だ。俺たちも含めてな」


「僕たち? 小林さんたちもですか?」


「もちろん。俺は格闘術担当だ。容赦はしない。佐藤さんは武器を教える。他にも教官がいる。料理人や森で生きるための人員も合わせて六十人くらいだ」


「森……?」


「ああ。そこへ向かう」


 説明はそこで終わった。車輪とエンジンの音だけが鉄格子での静けさとは違う静寂を破っていた。その間も僕は彼女のことを考えてどう行動すべきかを考え続けた。


 彼女はそう言った。

「この国を変えられるのは君だ。私たちの英雄だ」


 だから今僕は彼女が望んだ道を歩んでいると実感した。しばらくして僕は落ち着きを取り戻しふと時間を尋ねた。


「今何時ですか?」


「夜中の二時だ」


 もうこんな時間か...僕は少し眠ることにした。まだどれくらい移動するか分からない。俺の寝を遮ったのは佐藤さんの声だった。


「やっと着いたぞ!」


 夜は深く月の光が雲の間から差し込み二週間の屋根になる大きなテントまでつまずかずに歩けるくらいには明るかった。この十四日間は僕自身も、世界の見方も、そして未来も、すべてが変わる。

感想を首を長くしてお待ちしております。

第四話は3月19日 10時00分に投稿します!

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