表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷は冒険者になれなかった ――負価を抱いたまま、世界は進む  作者: たからの
凍理、外界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/37

前提条件

引き継ぎは、簡単になった。


「ここは氷あり」

それだけで、

説明が一行減る。


新人は、頷く。

疑問は出ない。


手順書のページ数も、

少しずつ削られていく。


「この確認、要ります?」

「氷区画なら、飛ばしていい」

「前もやってない」


前。


誰が決めたかは、

もう分からない。


隔壁の向こう。

氷は、

見えないまま、ある。


(……ある……)


それだけが、

残る。


《凍理:周辺維持》

《反応:継続》


継続。


変化は、

小さい。


温度が、

一瞬だけ下がる。

圧が、

ほんの少し整う。


数値は、

帳尻が合う。


「……助かってるな」

「だな」

「正直、楽だ」


楽。


その言葉が、

仕事の評価軸に、

混ざる。


別の区画。

別の班。


「ここ、氷ないんだっけ?」

「……あ、そうか」

「じゃあ、確認増やそう」


一瞬の、

面倒。


その顔を見て、

誰かが言う。


「こっちに移せば?」


冗談のつもりだった。

だが、

否定はされなかった。


「物理的には、可能だな」

「管理上も……まあ」

「予算、後で考えよう」


後で。


つまり、

今は止めない。


(……増える……)


氷の中で、

言葉にならない何かが、

重なる。


《凍理:対応範囲》

《拡張:未定義》


未定義。


それは、

制限がない、

という意味だった。


作業が終わる。

今日も、

何も起きなかった。


誰も傷つかない。

誰も怒られない。


評価表には、

小さな丸がつく。


「安定」

「有効」

「実績あり」


その下に、

誰かが書き足す。


※氷前提で問題なし


前提。


もう、

仮ではない。


氷は、

何もしない。


ただ、

起きない状態を、

起こさせない。


そして人は、

それを

「自然なこと」だと思い始める。


――この施設で、

最初に壊れたのは、

装置でも、

人でもなかった。


「氷がいない場合」を考える、

その習慣だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ