表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷は冒険者になれなかった ――負価を抱いたまま、世界は進む  作者: たからの
凍理、外界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/37

正解の横展開

ここ、最近どう?」


別区画の作業者が、

何気なく聞いた。


新人は、

少しだけ胸を張る。


「問題ないですよ」

「箱があるんで」


箱。


その言葉は、

説明として十分だった。


「調整、減らした?」

「はい」

「前の区画と同じです」


同じ。


それだけで、

納得が生まれる。


理由は、

共有されない。

結果だけが、

伝わる。


「楽になるな」

「人、減らせる」

「数値、見てればいい」


判断が、

軽くなる。


《凍理:環境補正》

《反応:継続》


氷は、

何も変えない。


変えないことが、

変化になる。


別の区画で、

同じ配置がされる。


距離。

人数。

換気。


完全には一致しない。

だが、

“だいたい同じ”で済まされる。


「前例があるから」

その一言で。


《凍理:負荷増》

《反応:遅延》


遅れは、

まだ目に見えない。


「ちょっと蒸すな」

「まあ、箱あるし」


その言い回しが、

自然に使われる。


氷の中で、

何かが沈む。


(……こっち……

 前より……)


言葉にならない。

比べられない。


《負価:進行》

《削減対象:比較》


比較が、

成立しなくなる。


だから、

違いは問題にならない。


新人は、

別区画でも同じ説明をする。


「細かい調整、いらないです」

「赤出たら、呼べばいい」


それは、

教えられた通り。


誰も嘘をついていない。

誰もサボっていない。


ただ、

箱が“前提”として、

広がっていく。


《凍理:存在成立》

《状態:常用・多点》


多点。


一つだったものが、

複数になる。


負荷は、

分散される。

――はずだった。


だが、

分散されるのは、

人の注意だけ。


氷は、

同じように、

応え続ける。


少しだけ、

深く。

少しだけ、

遅れて。


「便利だな」

「これ、他でも使えるな」


便利。


その評価が、

最後の確認を消す。


箱は、

どこでも同じだと、

信じられる。


誰も、

置き場所の違いを数えない。

人の密度を比べない。


必要がないから。

今は、問題がないから。


《凍理:負荷累積》

《状態:不均衡》


不均衡。


だが、

警告は出ない。


だから、

進む。


その日、

何かが壊れたわけじゃない。


ただ、

「同じ判断」が、

別の場所で、

当たり前に使われただけだ。


氷は、

黙っている。


黙って、

応えている。


――それが、

一番、信頼される振る舞いだったから。


次で、

どこか一箇所だけ、

“間に合わなくなる”。


そのとき、

誰も「原因」を見つけられない。


なぜなら、

正解は、

もう共有されすぎていたから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ