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氷は冒険者になれなかった ――負価を抱いたまま、世界は進む  作者: たからの
名を持たぬ氷

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2/20

凍帰(とうき)

――暗い。


いや、暗いというより、ぬるい。


「……ここ、どこだ……?」


冷の意識は、溶けかけのゼリーみたいに曖昧だった。

上下も前後もわからない。

ただ、じわじわと――自分が消えていく感覚だけがある。


「……あー……これ完全に胃の中だわ……」


少女に砕かれ、噛まれ、飲み込まれた。

氷としての自分は、今まさに水へと変わろうとしている。


「二度目の人生、短すぎだろ……」


そのとき。


――カチン。


ごく小さな、しかし確かな冷えが生まれた。


《特殊条件達成》

《状態:摂取/消滅寸前》

《凍理が発現――

 《凍帰とうき》》


「……凍理?」


理解するより先に、

冷の“核”のようなものが、ぎゅっと一点に引き寄せられる。


溶けかけていた水分が戻り、

存在そのものが――


凍り直した。


「……っ、冷てぇ!!?」


熱を拒むように、

冷は再び“氷”としての形を取り戻す。


しかも。


「……溶けない……?」


胃液に触れても崩れない。

むしろ、周囲の熱を奪っている。


《凍理《凍帰》進行中》

《存在再構築完了》

《氷状態での意識固定を確認》


「待て……これ、復活って言葉じゃ足りねぇな……」


少女の体が、わずかに震えた。


「……さむ……?

 なんか、お腹冷える……」


「それ俺だ!!

 胃の中で凍帰してる氷だ!!」


数分後。


「……変だな……」


少女は首をかしげ、コップを手に取る。


「水、飲も……」


ごくごく、と水が流れ込む。


その瞬間。


「――引き寄せられてる!?」


冷の氷が水分を取り込み、ほんのわずかに大きくなる。


《凍帰反応を確認》

《凍理定着率:上昇》


「……なるほど」


冷は悟った。


「凍帰ってのは、

 死に戻るんじゃない。

 氷として“在り直す”ための動きなんだ」


少女はまだ知らない。

自分の体内に、


世界の想定外で生き延びた、

凍帰する氷の存在がいることを。

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