寂しい公園と踊
今日上司から解雇命令がくだされた――。
「はぁ、やってらんねぇよ!」
俺、相原 耕造は少量のお酒が入った缶を右手にひとり寂しく、公園のベンチに座っていた。
俺は、都内有数の証券会社の広報部門に務めていた。証券会社の広報部門というのは、ブランドのイメージアップや数々の投資家と関係構築を図る仕事を担う。と会社のホームページに書いてあるが、実際俺は投資家と関係を図るよりも、部下が起こしたミスを俺が尻拭いしている回数のほうが圧倒的に多いと思う。それでも、俺はこの会社に入社してから今日までちゃんと働いてきたはずなのに――
昼休み、社長室に呼び出された。
社長室に入ると、異様な空気が漂っていた。目の前には、手を組んで黒革のキャスター付きの椅子に座っている社長と、その横に人事部長、そのまた横に下を向きながら変にかしこまって座っている俺の上司の姿があった。
あまりの空気の冷たさに圧迫感を覚えた。そして、社長は低い声で言った。
「相原くん、君の功績は私の耳まで届いているよ。」
「ありがとうございます。」
そのあと社長は何か言おうとしたが、何も言わなかった。
「単刀直入に言おう相原くん。申し訳ないんだけど今日で君は解雇処分とする。」
え……。話が飛びすぎて、社長が何を言っているのか俺には理解できなかった。その言葉と同時に人事部長は、解雇通知書と書かれた紙を俺に手渡した。
「いや待ってくださいよ、どうして俺が――。」
次は人事部長が口を開いた。
「君は、この会社に素晴らしい功績を残してくれた。そこは高く評価しよう。しかしね、相原くん。」
人事部長は解雇通知書の横に、写真と履歴書のようなものを突き付けてきた。
「じゃあ、これはどう説明するのかな。」
上司は俺に質問させる猶予も与えず、言葉一つひとつに圧をかけながら言った。
この会社に俺は必要ない?頭が真っ白になった。怒りとリストラを受けるショックが入り混じって、体中の感覚が、徐々に外に抜けていく。
「あぁ、わかったよ。こんな会社なんかどうだって良いね!」
俺は咄嗟そう言って、会社を飛び出して、今に至る。
「はぁ、人生ここまでかな。」
苦笑いしながら首を下に落とし、ため息をついた。俺は重い腰をベンチから離した。
チリリとズボンのポケットから着信音が鳴った。今の状態で電話に出たくないとつぶやくが、着信音は鳴りやまない。溜息をつきながら振動するスマホを取り出し、電話に出た。
家に帰っていた。
家に帰っている途中、道の隅っこに人溜まりができていた。なんだろうと思って、俺は、恐るおそる近づいてみると、人が取り囲む中心で音楽に乗りながら楽しく踊っているダンサーがいた――。




