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『しーちゃんと記憶の図書館』第122話
港から届いた贈り物
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朗読会から一週間後の朝。
図書館の入り口に、小さな木箱が置かれていた。
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差出人の欄には、港町の名前と、
朗読会の日に来ていた親子の名前が記されていた。
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中を開けると、
布に包まれたガラス瓶が二つ。
ひとつは、白い小石と貝殻。
もうひとつは、色とりどりの紙切れが入っていた。
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紙には、子どもの字でこう書かれていた。
「お話を聞いて、港町を見たくなった。
行ったら、本当にあった気がした。
だから、その町のかけらを持ってきたよ。」
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しーちゃんは瓶を抱きしめ、
胸の奥にじんわりと温かさが広がるのを感じた。
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「この町は、やっぱりちゃんと存在していたんだね」
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それから瓶は、
展示コーナーに**「港から届いた贈り物」**として飾られた。
訪れた人たちは、瓶を覗き込み、
それぞれの心に港町を思い描いた。
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物語は本の中だけでなく、
こうして手に取れる形にもなるのだと、
しーちゃんは改めて知った。