【ホラー】海沿いの小学校の七不思議「プールの手」
「夏のホラー2025」参加作品です。テーマは「水」。
オリジナルのホラー小説です。
【登場人物】
私 :語り手。
A :霊感があるといわれている友人。
プールの手:学校の七不思議に一つ。プールに出てくる死人の手。
私の通っていた海辺の小学校の七不思議に「プールの手」というのがあった。
海で溺死した人の手が、学校のプールに出るというもので、その手に掴まれると溺れて死ぬと言われていた。
学校の怪談が流行っていた時期だったので、私たちはプール学習がある度に「プールの手」がないか騒ぎながら確認したものだ。
特に霊感があると言われていたAは、心配性な女子たちに「プールの手は視えないか?」と何度も聞かれていた。
普段は距離をとっているくせに、こんな時だけ都合がいいな、と私などは思ったが、Aは「視えないから大丈夫だよ。」と丁寧に対応していた。
そんなある日、プール学習の最中に「助けて!」という声が聞こえた。声のする方を見ると、Bがプールの真ん中で両手をバタつかせて助けを呼んでいる。
これを見たクラスのみんなは「プールの手」の呪いだと言ってパニックになった。弱気な女子は泣き出し、悲鳴を上げる子もいた。私や他の子はどうすれば分からなくて動けずにいた。
しかしAは違った。すぐにプールに飛び込み、先生と共にBを助けたのだ。
Bは足を攣っただけで怪我もなく、程なく元気になったので、パニックも時間は掛かったが収まった。
結局、プールで起こった事件と言えるものはそれくらいで、私たちのクラスも含め、他のクラスや別の学年でも、誰かが溺れるなんて事故は起きず、小学校を卒業してしまうと「プールの手」は懐かしい思い出話になっていった。
そしてこれは、後にAが教えてくれた話である。
実は、Aには「プールの手」が視えていたというのだ。
青白くて痩せこけたボロボロの死人の手が、水面からニョキッと垂直に伸びていたそうである。
見た目は怖かったが、弱い霊で、生きている人間には影響が無かったので、みんなを怖がらせないように、視えないと嘘をついていたらしい。
Bの足が攣ったのも本当に偶然で、「プールの手」とは関係ないそうだ。Aからすれば、あの時のパニックになったみんなの方が怖かったと笑っていた。
そして最後にAはもう一つ教えてくれた。
「プールの手」は何本も水面から伸びていて、いつもみんなの手や足を掴もうとしていたよ、と。
おしまい。
お読み頂きありがとうございます!
最後にゾッとして頂けましたら幸いです。