第14話 新メンバー加入でいざ出発!
転売組織のアジトは静まり返っていた。
ローランドはボコボコにされて再起不能。
チンピラたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
散乱する薬草を前に、ミリアが腕まくりして気合を入れる。
「よし! これを病人に届けますよ!」
ミリアはさっそく薬草の仕分けを始めた。
「傷に効くもの、熱を下げるもの、解毒用……」
手際よく分類していくミリアの姿に、結衣も思わず感心する。
「早く終わらせよう! カドラスの人たちが待ってるよ!」
結衣も袋詰めを手伝い始めた。
「チッ、重ぇな……ったく」
文句を言いながらも、薬草の詰まった袋を肩に担ぐジーク。
不機嫌そうな顔してるけど、なんだかんだ頼りになる。
一方で、青い鳥はというと――
(三人で協力してると、なんかチームって感じするね! )
(うるさい! アンタも手伝え!)
(僕は荷物運びとかできないんだ! ごめんね!)
結衣が蒼を睨むが、蒼はヘラヘラ笑うだけだ。
三人は息を合わせて薬草を運び出し、カドラスの市場へ戻った。
混乱していた市場も、薬草が戻ってきたことで少しずつ落ち着きを取り戻していく。
病人やその家族が「ありがとう!」と笑顔で薬草を受け取る。
その姿に、結衣も思わずガッツポーズだ。
「やったね! これぞ正義の力! 大勝利!」
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三人は店に戻って一息ついた。
薬草の入った袋を見つめながら、ミリアはポツリと呟く。
「大きな町で売るだけじゃ、本当に必要な人に薬が届かない……ローランドみたいな悪党がまた来たら、私一人じゃどうしようもありません」
その声には、悔しさと不安が混じっている。
そんなミリアの肩を、結衣がバシッと叩く。
「ミリアはひとりじゃないよ! 私たちがついてる! 転売ヤーだろうが魔王だろうが、私がぶっ飛ばしてやるんだから!」
どうやら事件を解決して調子に乗っているようだ。
そんな結衣を見て、ミリアは目を丸くした。
そしてクスッと笑う。
「結衣さんの言葉って、本当に元気が出ますね」
ミリアはジークを真っ直ぐに見て、頭を下げた。
「ジークさんもありがとうございました。私ひとりじゃどうにもなりませんでした……ローランドに立ち向かうなんて、とてもできなかった」
ジークは荷物を下ろし、鼻を鳴らした。
「……あの悪党に食ってかかったんだ。お前、意外と度胸あるな」
その言葉に、ミリアは少し驚いた。
が、すぐに優しく微笑む。
「ジークさんだって、とても強くて優しいです。私、ちゃんと見てましたよ」
「……別に優しくなんかねぇよ」
一瞬目を逸らしたジーク。
目ざとく気づいた結衣が、ニヤニヤ顔で近づいていく。
「ほー、ジークってば照れてる? ミリアに褒められて嬉しいんだ?」
「うるせぇ! 照れてなんかねぇ!」
「んー? どうして焦ってるのかなー?」
「だからうるせぇんだよお前は!」
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結衣は助けた人々から、魔王についての情報収集までちゃっかり済ませていた。
ひとりのおじいさんが、咳き込みながら話してくれた。
「王都アルヴァニスの図書館に、魔王について書かれた古文書があるって話だよ。昔、旅人から聞いたことがあってね」
その言葉に蒼が目をキラキラさせて飛び回る。
(それってすごい手がかりだね! やっと魔王に近づけるよ!)
「王都に行こう! 魔王の情報ゲットしたら秒で倒して元の世界に帰るんだから!」
「お前、自分が帰ることしか考えてねぇのかよ……」
「何よ、悪い!?」
拳を握りしめて意気込む結衣。
呆れ顔でツッコむジーク。
ミリアはクスクス笑いながら、ふたりのやり取りを見守る。
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その夜――
ミリアは薬草袋を抱えながら静かに呟いた。
「母は薬草で人々を救っていました。小さな町や村まで歩いて薬を届けていたそうです。でも私は……まだまだです」
その真剣な声に、結衣も思わず聞き返す。
「え? どうしたのミリア?」
「今回の転売事件で分かりました。カドラスで薬草を売るだけでは限界があります。だから私、自分の足で届けます! 行商します!」
その決意に結衣は目を丸くした。
そして大きな笑顔を浮かべる。
「ミリア、それ最高じゃん! じゃあ私たちと一緒に王都行こうよ! 魔王倒して、ついでに薬草も届けちゃお!」
ミリアは少し照れながら、力強く頷いた。
「はい、お願いします。困ってる人を助けたいから」
「おい、勝手に同行人を増やすなよ」
ジークが肩をすくめる。
しかし、表情を和らげて言った。
「……まあ、王都へ行くなら途中に村もあるだろうし、道中の稼ぎにも困らねぇだろうから悪くねぇけどな」
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翌朝、三人は王都アルヴァニスへ向かう準備を始めた。
結衣はバッグに青石と赤石を詰め込み、ジークはダガーを磨き、ミリアは薬草袋を背負う。
(アルヴァニスってどんなとこかなー? きっと王都だから超キラキラしてるよね!)
(アンタが言うと不安しかないわね)
蒼がウキウキ飛び回る。
結衣がツッコむ。
いつもの流れだ。
ミリアが荷物を背負い直し、笑顔で締めた。
「さあ、行きますよ!」
カドラスの街を後にし、三人は王都アルヴァニスへの道を歩き出した。
魔王討伐と薬草を届ける旅は、まだまだ続きそうである。
でも、なんか楽しくなってきたかも――
そう思いながら、結衣は青い空を見上げた。