4. 国王様
「あなたはだれ？」
「わしはローズじゃ」
「あ、そう、ですか」
いや、だれやねんこのじじい。
いきなり来て「わしはローズじゃ」？
お前は俺たちにとってどういう存在なのかを教えろって言うてんねん。
「この方は国王ローズ様だ」
「こく、おう」
シンパシー能力とか持ってないよな？
「いきなり来てすまないのう。
この町最強の冒険者パーティーが全員記憶喪失と聞いてのう。
隣の町から飛んできてしまったわ」
比喩？それとも物理的に？
この世界なら物理的に飛んでくる可能性もあるからな。
「それで大丈夫なのか？」
「はい。体は大丈夫です」
「そうか。それはよかった」
良くないわ。
記憶なくなってるかも知らんのやぞ？
「それにしても困ったのう。
国王軍でないとはいえ、ともに魔王を討伐する仲間じゃ。
それを失ったとなると先が不安じゃのう」
こいつ良い奴、なんかな？
「貴方はいい人ですね」
そのまま口に出すんや。
こいつすごいな。
「お主は戦士じゃな。
わしは当たり前のことを言っているだけじゃよ」
こ、れは、たぶん良い奴やな。
てか、親がいない子供のための施設作ってるやつが悪いやつなわけなかったわ。
「それじゃあ、わしはそろそろ失礼しよう。
これからも頑張ってくれたまえ」
「はい」
「ところで、お前たちの名前をまだ聞いていなかったな」
「あぁ、そういえばそうかもな」
「俺から行こかな。俺はユウジャだ」
「俺は魔法使いのフリッジ」
「俺は戦士のチーネ」
「俺は僧侶のファルファ」
「よし、とりあえず一人称変えよか。
めっちゃ書きずらいわ。」
「ん？書きずらい？」
「いや違うよ。こっちの話」
「そうか」
「あと、名前聞いといてなんやけどこれからも戦士、魔法使い、僧侶呼びで」
「それはそっちのほうがいいわ。ちょっとわかりずらいから」
「そうやな」
「じゃあ、これからどうする？」
「え？そら...いや、そうか。たしかに、なにすればいいんやろ」
「いや、お前らにはこれからも魔王討伐に向けて動いてほしいんだが...」
何を言うてんのこいつは？
俺らにはもう何の能力もないことをわかってないんかな？
ちょっと、頭悪すぎるな。
「えっと、俺たちにはもう何の能力も残っていないぞ」
「ん？どういうことだ？」
えぇ。
まじかこいつ。
なんでわからんの？
あれ、今思い出したけど俺達じいさんに能力なくなったこと言ったけ？
言うてないか。
どうしよ。
もう戦われへんよって言わな。
いや、まずはこいつか。
「だから、俺たちはもう強くないから魔王討伐なんてで....」
「いや！やろう！」
「そうやな！やろう！」
「えぇ？何を言うてんの？」
「いや、みんなが期待してくれてるんだからやろう！」
「いや無理やろ。能力ないのにどうやってするん？」
「俺達ならできる！」
あかんこいつらなんも考えずにしゃべってる。
多分『魔王討伐』って言葉にあこがれてる。
「いや、わかるよ。魔王討伐にあこがれてるのは分かるんやけど、無理やから」
「俺達ならできる！」
しばきまわしたろかな。
そしたらわかるかな。
「なぁ魔法使い。お前からもなんか言ったてくれ」
先にこいつ味方につけよ。
「お前、魔法使いやろ？
もしかしたら、魔法使えるようになるかも知らんで？」
あーだるいだるいだるい
地味に誘惑されること言うな気持ち悪い
「魔王討伐目標にせんでも魔法ぐらい使えるようになるって」
「やるなら魔王討伐しよう！」
「そうだ！しよう！」
「ちょっとお前ら一回黙れよ」
「待て、ユウジャ」
えぇ。
こいつもしかして...
「俺達ならできる」
だるいって。
もう、心の底からだるいって。
「あぁ、分かった分かった。
ならお前らだけでやれ。
俺は知らん」
「待てよユウジャ」
「なんやねん」
「世界最強のパーティーの勇者が魔王にビビってるのか？」
俺はその勇者じゃないねん。
俺はただの学生やねん。
めんどくさいよ
「あぁ、そうやな。ビビってるよ」
「おいガンディ！この世界に新聞はあるんか？」
「ある」
「へぇ。なら明日の新聞の見出しは
『最強の勇者は魔王にビビっている！？』だな」
「そうやなそうやな」
「あと、魔王倒したらめっちゃモテると思うで」
「よし、魔王倒しに行こか」
