29 金髪のはげのチビのデブ
「君たちに頼みがあるんだ」
「一応聞きます。
なんですか?」
「私には会いたい人がいるんだ。
ただ、私の力だけでは会うことはできない。
そこで、君たちの力を貸してほしい」
「俺たちにどうしろと?」
「まずは、この町の話をしようか。
ここはブルーシティー。
国王軍でも5本の指には入るほど栄えている町だよ」
「そうなんですね」
「この町はもともとは国王の兄の町だった。
その頃の町は治安が良く、政治の支持者も多かった。
しかし、約15年前国王の兄が死んだ。
そこからこの町は国王の町となった」
え?なになに?
何の話?
この町の話になんか興味ないよ?
早く本題はいれよ。
「そこからは最悪だ。
政治は王国のためのものに変わっていき民のことはまるで考えない。
不満を持つ者が多く現れ、政治の支持率は大きく下がった。
反王国軍なんてものができるほどにね。
国王は多くの町に施設をおいていることを知っているかな?」
「え?あ、はい。
たしか、魔族に親を殺された子供を保護するための施設でしたよね?」
「表向きはね」
「え?」
「実際は国王軍の者が子供の親を殺し、
その子供を奴隷のように鍛え上る施設だよ。
魔王を殺すためにね」
え?え?え?
何を言うてんのこいつは?
魔王を殺すために親を殺して子供を無理やり鍛え上げた?
いや、いや、いや。
そんなわけ
「証拠はあるんですか?」
「ない。だが、確実だ」
.............金髪のはげのチビのデブの言うことやろ?
信じれるわけないな。
「まぁ、まだ信じれないだろうね。
だが知っているものは知っている」
「そうですか」
「どうせこの後信じることになるからね」
「え?どういうことですか?」
「話の続きをしようか」
話の続きをしようか?
え?
俺の質問の答えは?
会話になってないよ?
「施設で鍛えられたといったが、
今の魔王軍の四天王ロータとペロンはそこで育った。
親を王国に殺されたことを知らず、
王国のために冒険者となり、
元魔王を攻撃した」
「え?元魔王?」
「そうだ。
今の魔王は15年前に元魔王を殺そうとした勇者だ」
「えぇ?」
「いや、勇者ではないか」
「ん?それはどういうことですか?」
「あぁ、いや、なにもない」
「....そうですか」
絶対になんかあるやん。
「今の魔王軍の四天王と魔王は王国軍に恨みを持った元勇者パーティーだ」
待って待って待って。
なんでこのおじさんはそんなことを知ってんの?
「あなたはなぜ、そのことを知っているのですか?」
「......私はその時の勇者パーティーの商人だよ」
あかんあかんあかん。
脳パンクする。
「と言っても、私が起きた時にはもうすべて終わった後だったがね」
「え?どういうことですか?」
「いろいろあって私たちは全員で魔王と戦った。
私、僧侶、戦士ガマガエル、魔法使いロータ、武道家ペロン、そして勇者クレーだ。
しかし、勇者クレー以外の仲間は全員、元魔王の最初の攻撃で即死した。
勇者クレーは戦士、魔法使い、武道家を蘇らせて魔王と戦った。
私と僧侶が蘇生されたのは勇者クレーが魔王と名乗るようになってからだ」
「貴方がやばい人ってことは分かりました。
それで頼みとは何ですか?」
「それなんだが、今話した話には1人足りない人間がいる」
「足りない人間?」
「勇者クレーから勇者パーティーを奪い、
追放され、勇者クレーに攻撃をしかけ、
最後は勇者クレーと共に魔王と戦った勇者。
そして、恐らく現国王軍最強の人間
ヒストグラだ」
「ヒストグラ.....」
誰やねん。
てか、勇者出てきすぎじゃ。
「15年前ヒストグラは酒場で勇者クレーを攻撃した。
周りにいた人も巻き込んでだ。
そこには国王の兄がいた」
「まさか....」
「あぁ、15年前ヒストグラは国王の兄を殺した。
それによってあいつは今罪を償っている」
「国王の兄を殺す罪なんて、死刑以外あるんですか?」
「あいつは、魔王討伐に大きく関わり、力を貸した。
それによって死刑は免れた」
「それなら、その人にはどんな罪が?」
「10000勝だ」
「え?」
「この国の地下には闘技場がある」
「は?」
「王国が開催するコロシアムだ。
戦うのは魔族やモンスター、罪を犯した人間などだ。
名のある人物や、富豪はそのコロシアムを見ることができるんだ」
「見る?殺し合いをですか?」
「そうだ。
そして、彼らは金を賭ける。
その殺し合いの結果にね」
「そんなことをして、王国が許すんですか?」
「言っただろう?
そこは王国が運営している。
君たちが思っているほど王国はクリーンじゃないよ」
「そうなんですか」
「まぁ、とにかく、ヒストグラはそのコロシアムで10000勝しないと外に出れない」
「10000勝なんて、無理ですよね?」
「そうだね。
ヒストグラなら、勝負に勝つことはできるだろう。
だが、毎日出番があるわけではない。
それに、毎日出番があるとしても27年はかかる。
だが、私は彼と話をしなければならない。
協力してほしい」
「.......少しいい仲間と話してもいいですか?」
「あぁ、構わないよ」
「無理やろ」(魔法使い)
「無理やな」(戦士)
「無理や」(僧侶)
「やんな」
「一応報酬だけ聞く?」
「そうやな」
「すいません。
その依頼、受ける方向でいこうと思うのですが、
報酬は?」
「え?報酬?」
「えぇ。
これは依頼ですからね。
報酬はいただきます」
「ははは。そうかそうか。
これは私としたことが、商人を名乗っていられないね。
分かった。
500万ゴールド。
これでどうだ?」
500万ゴールド=1000万円
「よし。やるか」
「そやな。やろ」
「当たり前やろ」
「分かりました。
その依頼、俺たちが引き受けましょう」
「取引成立だね」
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあ、早速だが、コロシアムに行こうか」
「え?いけるんですか?」
「私だけなら無理だね。
ただ、君たちがいれば行ける」
「え?俺たちが?」
「四天王を倒したというのは君たちが思っている以上に大きいよ」