14. シャベル
「がはっ。ごほっごほっ」
「僧侶!ユウジャを回復しろ!」
「わかってる!『治癒』」
緑色の球が傷口に当たる。
その部分の痛みが引いていく。
結果から言おう。
見逃された。
最初の一撃で左腕を落とされ次にわき腹を切り裂かれた。
それが俺の一度の瞬きの間に行われた。
サーヴァンは「勇者を倒したのはお前ではないな」と言ってどこかに飛んでいった。
おそらく俺が弱すぎたから勇者を殺した奴らを狩りに行こうとしたんやと思う。
俺はほっといても死ぬから。
でも、仲間は近くにおった。
それで俺は生き残った。
「ありがとう」
「いや、いい」
「腕も治せるんだな」
「4、5回の回復が必要だけどな」
「さて、その魔族たちを回復してくれ」
「あぁ」
これも結果から言おう。
5人の魔族の中で生き残ったのは一人だけ。
最初に俺たちにあった奴だけだった。
「すまん。ありがとう」
「いや、いいんだ。それよりも残りの4人を助けられなくてすまない」
「なぜ謝る?悪いのはあのサーヴァンとかいういかれた野郎だ」
「違うんだ。俺たちはずっとお前たちに嘘をついていたんだ」
「嘘?」
「俺たちは冒険者だ。俺たちがあいつらの部下に殺されかけてこの村に逃げ込んだ。それであいつがこの村に来たんだ。だから、悪いのは俺達だ」
「何言ってやがる。
この4人の死の責任がお前達にもあるといっているのか?」
「そうだ」
「そんなわけがないだろう!
悪いのはサーヴァンだ!
逃げ込んで来たお前達じゃない。
あいつより弱かったこいつらじゃない。
この村にお前達を招き入れた俺や村長でもない。
悪いのはこの4人を殺したサーヴァンだ!
その証拠にお前たちは俺を救ってくれた。
そんな奴らに責任があるわけがないだろう」
「お前...」
「俺はシャベルだ」
「シャベル?」
「そうだ。お前たちは俺の恩人だ。名前を教えないわけにはいかない」
「そうか」
いや、分かる。
分かるよ。
この感動している雰囲気の時にこんなこと言ったらあかんのは分かってる。
でも、でも、逆じゃない?
普通俺たちが名乗るくない?
何勝手に名乗ってんの?
呼びずらかったけどな。
でも今じゃないやろ。
「シャベル。村の人たちはどうしたんだ?」
「別の村に逃がした」
「そこは安全なのか?」
「あぁ。安全だ。そこは魔王軍所属の村だ。
何かすれば、魔王が黙っていない。
今から俺達もそこに行くぞ」
「よし。わかっ....」
「どうした?」
「いや、魔王軍所属の村に俺たちが行っても大丈夫なのか?」
「え?」
「俺たちは冒険者だ。そいつらが魔王軍所属の村に行っても大丈夫なのか?」
「だ、い、じょう、ぶだ」
大丈夫なわけないやろ。
大丈夫じゃないやつのいい方やんけ。
「そうか。いいんだ。俺たちはほかのところに行くよ」
「いや、大丈夫だ。だから一緒に行くぞ」
「・・・」
「ユウジャ」
「なんや」
「いったんこいつの言う通りに動いてみよ」
「無理やろ」
「いや、俺たちは今こいつを救った。
それを持ち出せば大丈夫やと思う」
「・・・」
「それに、こいつについていかなかったら俺たちはモンスターと冒険者狩りその2つに気を使わなければいけない。こいつの村に行った方がはるかに楽だ」
「そうか。なら、ついて行こう」
「よう。シャベル。久しぶりだな」
「ロータさん....」
「お前の村が攻め落とされたらしいな」
「はい」
誰?
「シャベルよ!大丈夫だったか!」
「村長!あんたらも無事か!」
「あぁ、おかげさまで無事じゃ。
お主らも生きておったとは。
紹介しよう。
この方は四天王の一人ロータさんじゃ」
今すぐ荷物まとめて帰ろ。