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猫耳メイドと日向ぼっこ

よろしくお願いします。

 絹枝が自宅の別邸に帰ると掃き掃除をしていたメイドのリリコが尻尾を大きく振って出迎えた。


「おかえりなさいませ、お嬢様。」


「ミーコ、ただいま。おやつりあるで。」


絹枝は転生前に飼っていた三毛猫を思い出しながら頭を撫でて言った。


「お嬢様、私はミーコじゃありません。リリコです。」


「すまんって。ミーコもうちをお嬢様っていうのやめてや。何だかむず痒い。」


「だから、ミーコじゃありませんって。」


リリコは真っ赤な頬を膨らませて絹枝に怒るが、それすらもリリコは愛らしくなる。


「ミーコ、天気もええし外でお茶しよか。中々なビックニュースもあるんでんな。」


「ニュースですか。」


「ひっくり返る程の大ニュースや。」


絹枝は勿体ぶったように言うとリリコの顔が曇ってくる。


「お嬢様、先程王妃様からお手紙が来たのですがそれと関係あるのですか。」


「チャーミングのおかんからか?」


「ええ、かなりの急用なようです。」


リリコは心配そうに絹枝を見るが、とうの絹枝は何か思い付いたと言わんばかりに笑い出した。


「こりゃあ、ええ。お茶飲みながら読んでみよ。今日はもらいものの紅茶あったやろそれ淹れてや。」


「大丈夫ですか。何かあったんじゃ。」


「気にする事やないて。ミーちゃんはにゃんにゃんいってくれればええねん。」


「私は猫じゃありませんよ。」


リリコはピンと立ったオレンジ色の耳で怒りを表現する。


 指輪などの売却金をいつもの場所に仕舞うと庭のテラスでリリコの用意したお茶と午前中に買っておいたケーキを出して2人でティータイムを始める。


「ミーちゃんに美味しいとこあげるわ。」


絹枝はショートケーキのイチゴをリリコの皿の上にのせた。


「お茶をご一緒させていただいているだけでなく、こんなによくしていただきありがとうございます。」


「何言うとんねん。水臭いわ、ミーちゃんは成長期なんだからしっかり食べなあかん。」


「子供じゃありませんし、名前もリリコです。」


リリコはもらったイチゴを美味しそうに食べて言った。


「そういや、手紙ってどんなんや。」


「そうでした。こちらになります。」


リリコは思い出したように王妃の手紙を絹枝に渡す。


「何が書いてあるんでしょうか。」


リリコは真剣な眼差しで手紙を読む絹枝を心配そうに見守る。


「そりゃあそうだわな。」


「何が書いてあったんですか?」


「倅との婚約破棄について話がしたいそうや。」


「エルメデス王子と婚約破棄されたのですか。」


リリコはびっくり仰天と言わんばかりに立ち上がる。


「王子さんの方が妹のアリアにほの字らしくてそっちに乗り換えたらしいわ。」


「アリア様にですか。」


「まぁ、うちはどうでもええねんけどな。どっちみちこの国にはおさらばするつもりやったし。」


「お嬢様、国を出て行かれるのですか。」


リリコはあまりのショックで絹枝の膝に倒れてしまう。


「別にこの国に未練はないからな。おとんとおかんもうちの事なんてどうでもええやろ。」


「そうなりましたら、私はどうなりますか。アリア様の所へ行かされるのですか。」


リリコはアリアの元で奴隷のようにこき使われていた日々を思い出して涙を流し始めた。


「何泣いとんねん。」


「お願いします。捨てないで下さい。どんな事があっても、マリアベル様について行くのです。」


「捨てへんよ。ミーコはうちのひ孫みたいなもんや。涙を拭きや。お茶淹れなそうな。」


絹枝はリリコを椅子に座り直させるとお茶を淹れてリリコの前に出す。


「明日、王妃さんのとこ行って話してきたらさっさとこの国を離れるからその準備を始めておいてや。うちらで世界一のたこ焼き屋になるだからな。」


「たこ焼き?以前、お作りになられたあの料理ですか。」


「そうや。まぁ、他にも手広くやるつもりやからミーコには苦労かけるが大丈夫か。」


「もちろんです。私はどこまでもマリアベルお嬢様について行きます。」


リリコは同僚からも亜種の為に虐げられていた自身を救い出してくれた絹枝に絶対の忠義を持って頷く。


「ミーコはほんまええ子やな。ほら、これも食べ。」


絹枝はクッキーをリリコの口に入れると可愛がっていた三毛猫の事を思い出しながら哀愁に浸っていた。


 翌日、絹枝は馬車で王妃の待つ城に着くと奇怪な目に晒される。城中で婚約破棄の話は広まっており、使用人ですらヒソヒソと話をしている。絹枝はそんな空気に臆する事なく王妃のいる部屋へ歩く。


「随分と楽しそうやな。今日何かええ事あるんか。」


絹枝は何だか面白くなりメイドに話しかけるとメイドは気まずそうに「申し訳ありません」と頭を下げてそそくさと逃げて行った。


「テールズ様、こちらになります。」


「ありがとな。ほれ、飴ちゃん。」


絹枝はポケットから飴を側近に渡すと静かに部屋の中に入って行った。



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