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第5話 パーティーメンバー

私が席に着いたのを確認すると、ウィローラはさっそく話し始める。こういう場で社交性の高い人がいてくれると、本当に助かる。

「じゃあ、まずは自己紹介から始めますか!」

彼女の提案に全員が頷く。

ウィローラはそれを確認すると、勢いよく立ち上がった。


「では、私から!ウィローラ・アラストゥルと言います!ファーストネームで気軽に呼んでください。種族は半天使で、今使える固有魔法は全身発光と浄化魔法、それとこの翼で少し飛べます!」


ウィローラは背中を向け、小さな白い翼を羽ばたかせてみせた。手のひら二つ分ほどの純白の翼が動くたびに、薄桃色のポニーテールやフリルたっぷりのミニスカートが揺れる。

その様子を、隣の女性が慈愛に満ちた表情で見守っていた。その気持ちはよくわかる。ウィローラは小柄で細身、表情も豊かで、まるでうさぎのような愛らしさがあるからだ。


「私もメーケもこの街は長いので、案内なら任せてください!服とアクセサリーのお店なら、いっぱい知ってます!」

そう言って胸を張り、自分の平らな胸を軽く拳で叩く。そして座りながら、じっとこちらを見つめてくる。

次やれってことか……へいへい、やりますよ。


「じゃあ、次は私」

私は片手を軽く上げながら、気乗りしない感じで立ち上がる。


「メーケシャ・ラムバーラです。私もファーストネームで呼んでください。種族は羊の半獣人で、固有魔法は雷魔法と、この羊毛を増やせることです」


そう言いながら、クセだらけの髪を少し持ち上げてみせる。視線を集めるのが恥ずかしくて、そそくさと「よろしくお願いします」と締めくくり、すぐに座る。


ウィローラが「え~それだけ?」とでも言いたげな視線を送ってくる。

悪かったな!気の利いたセリフなんて思いつかないんだよ!


「次、やります」

隣で声がして、ウィローラの視線から逃げるようにそちらに目を向ける。


「名前はケレアニール・ニツァショテです。私もケレアニールと呼んでもらえたら嬉しいです。種族は氷の半竜人で、固有魔法は氷魔法全般。基本的に何でも作れます」


彼女は両手の上に氷でできた花を形成する。その釘付けになるような美しさはよく知っている。


彼女と私は同じ教会の出身だ。独り立ちの年齢になってからは、別々の道を選んだため、もう会うことはないだろうと思っていた。

絹のようにサラサラな濃い青髪は、肩にかからない程度に切り揃えられている。ウィローラと同程度の低身長に、落ち着いた白基調の服と膝丈のスカートが、控えめでおとなしい印象を与える。しかし、頭上の角は胸の内に秘める強い意志のような力強さがある。まさに彼女の性格そのものだ。


「服もアクセサリーも好きなので、案内を楽しみにしていますね」


彼女が笑顔をウィローラに向けると、ウィローラも親指を立てて「任せて!」と応じる。


「最後は私ね」


ケレアニールが座るのと同時に、最後の一人が立ち上がった。


「ヴィロミア・ニャンティと言います。私もファーストネームで呼んでほしいわ。むしろそうしてちょうだい。ファミリーネームは私には可愛すぎるから」


苦笑いを浮かべながら話す彼女は、私と同じくらいの長身だ。


「種族は精霊で、固有魔法は魔法の影響範囲の拡大です」


そう言いながら、彼女は背後から半透明の羽を4枚出現させる。それは光を乱反射させながら、虹色に輝いている。同時に、腰ほどの長さの髪がふわりと広がり、宙を漂う。その髪は、頭頂部の薄い青から毛先の桃色へと自然に色が変化しており、神秘的な印象を与える。私ほどのクセ毛ではないが、多少毛先は丸まっていた。


羽が透明になっていき、完全に消えた後、彼女はさらに続けた。


「今は旅人をしています。以前は学者や研究者、あと僧侶とかもやっていました」


その言葉を聞き、彼女の落ち着いた服装が妙にしっくりきた。飾り気はないが高級感のある素材と細やかな刺繍、大きな魔石のイヤリングが、彼女の知識と経験を象徴しているようだ。

私とはまるで対照的な感じがした。


それにしても、みんな恵まれた種族だな……私だけ羊なんて、なんだか申し訳ない気分になる……




ヴィロミアは椅子に座りながら、私とウィローラの方を向いて話し始めた。

「それにしても、この街は自然と共に生きている感じが良いわね。特に教会が素晴らしかったわ」

ケレアニールもすぐに頷く。

「私もこの街に来て挨拶に行ったとき、あの光景に圧倒されて、しばらく動けませんでした」

メニューを見て注文しているウィローラに代わり、私が返事をする。

「確かに、教会の中心に大樹が生えている光景は珍しいですよね」

ヴィロミアが感慨深げに続ける。

「そうそう。それに、あの木彫りの女神像!一度見たら忘れられないわ〜」

「わかります!見上げるほどの大きさで、神木に直接彫られた迫力は圧巻でした!物語の世界みたいでした!」

二人がうっとりした表情を浮かべているのを見て、私まで嬉しくなる。この街がそんなに気に入ってもらえたなんて、まるで自分のことのように誇らしくなる。


「ところで、二人はどの教会に挨拶に行きました?」

私は興味が湧いて尋ねた。

二人はそれぞれ冒険者カードを取り出し、挨拶に行った教会でもらえる教会印を見せてくれる。ヴィロミアは南の教会、ケレアニールは東の教会だ。

「主要な教会は東西南北にそれぞれあって、神木に彫られた女神像が違うんです。見比べるのも面白いですよ」

私がそう説明すると、ヴィロミアが目を輝かせる。


「ああ、それ、パンフレットにも書いてあったわ!」

あららら〜もしかして、ヴィロミアさんはパンフレット熟読派かな。わかるよ、その気持ち。眺めるの楽しいよね。

「例えば、西の教会は森の女神が祀られていて、弓を持った狩人の姿なんですよ」

「中央神樹から見て森の方角ね。女神の名前はツェアル・ローダシル・メトゥーラ様だったわよね?」

「さすがですね、正解です」

思わず笑ってしまう。パンフレットの隅々まで覚えているなんて、すごい記憶力だ。


一方、ケレアニールが少し首をかしげて質問してくる。

「全ての主要教会に神木が生えているんですか?」

「そうみたいよ。それに……」


ヴィロミアが続けて説明を始めたので、私は注文を終えたウィローラからメニューを受け取り、軽くパラパラめくった。適当に蒸し鶏とサラダをメニューに付いた魔石から注文し、隣のケレアニールに渡す。

すると、「何がおすすめ?」と聞かれたので、無難に美味しいものをいくつか教える。彼女は注文を済ませると、ヴィロミアにメニューを回した。


ヴィロミアはメニューをしばらく眺めた後、あるページを広げて私たちに聞いてきた。

「この『珍味』って、食べたことあったりするかしら?」

私は首を横に振る。ウィローラも同じだったようだ。

「そうなのね。じゃあ、ケンタウロスの睾丸焼きと悪魔キノコの生食味わいセットを頼んでみようかしら」

その大胆さに思わず目を見張る。

僧侶時代の反動だろうか…

「いいんじゃないですかね」

なぜか視線が合ったので、肯定しておいた。


食事が運ばれた後は、たわいもない話をしながら過ごした。

街中に設置されているゴミ捨て用の食虫植物は他の街ではスライムを使っているらしい。故郷の教会でもスライムだったような気もするが、もう思い出せない。

後は、今腰掛けているキノコ製の椅子などが話題に上がった。キノコごとに形状が違うため座りごごちも変わってくる。どうやら二人はまだ慣れていないらしく、座るたびに異なるむず痒さがあるから統一して欲しいと漏らしていた。私は慣れてしまたったからなのか、もう何も感じない。


最後に、お互いの冒険者カードに連絡先を登録し、店を後にした。

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