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第16話 初日野営

薬草の群生地を離れ、次のレンジャー拠点に到着する頃には、森の闇が一層濃くなってきていた。

拠点は円形で、中央を通る道が半分に分断している。そして、両方に同じような設備が用意されており、二パーティーまで泊まれる仕様になっている。


全員が外周にある焚き火台付近に荷物を下ろす中、私は通過記録書に日付と、恥ずかしいパーティー名を記入する係を任される。他のメンバーはその間に火を起こしたり、晩飯の準備を始めたりしていた。拠点には調理器具や基本的な備品が常備されており、それらを使えば食事の支度はスムーズだ。


記録を書き終えた私は手が空いたので、焚き火台近くのまき割り台に向かった。棚に積んである薪を割り、適当な大きさに整えては火に放り込む。この単純作業が、意外にも心を落ち着けてくれる。


やがて、干し肉と干しキノコで炊いた米が出来上がった。それを器に盛り分けたウィローラが皆を呼び集め、焚き火を囲む形で座るように促す。

今日のメニューは、その炊き込みご飯と、焚き火台の網で焼いた採れたてのキノコだ。素朴ながら香ばしい香りが漂い、食欲をそそる。


食事を始めた頃、ウィローラが話を振る。

「二人とも、初日どうだった?」


ケレアニールが先に答える。

「想像以上に暗くて怖かった。歩きづらいし、視界が悪いと、つい怖い妄想ばっかりしちゃうね」

次にヴィロミアが口を開く。

「私は住んでいた森を思い出して、懐かしい気持ちになったわ。やっぱり採取って楽しいわね」

二人の感想は対照的だった。


それを聞いてウィローラは優しい笑顔でケレアニールにアドバイスを送る。

「最初のうちは怖いのが当たり前だよ。でも、三日もすれば慣れて、ヴィロミアさんみたいに『採取が楽しい』って感じるようになるはず」

「そうかな…」

ケレアニールはまだ不安げだ。


そんな彼女にウィローラは励ましの言葉を続ける。

「大丈夫!普通は初日に取り乱して鎮魂草に頼る人だって多いんだから。それを使わずにここまで来れたんだから、ケレアニールちゃんはすごいよ」

その言葉に、ケレアニールは少しだけ笑顔を見せた。焚き火の揺れる炎が、彼女の顔を温かく照らしていた。



その後はたわいもない会話をしながら食事を終え、ケレアニールとヴィロミアには先に寝るよう促した。

拠点の寝台は中央を通る道に沿って三つずつ並び、それが二列で計六つある。それぞれ一人用の簡易的なスペースで、木組みの屋根と木の台、魔物の毛皮が敷かれている程度だ。十分な設備とはいえないが、森の中ではありがたいどころだ。


二人が寝台に向かうのを見届けた後、私はウィローラと一緒に洗い物を始めた。せっかくなので、新技?の羊毛スポンジを披露したら、ウィローラが感動していた。

「この毛玉使いやすくてめっちゃいいね!」

毛玉って………まあ、毛玉だけどさ…

「羊毛スポンジって技名あるから、覚えといて」

「えっ…これ技なの?」

「………」

なかなか痛いところをついてくるじゃないか…



その後、見張りは私とウィローラが交代ですることになった。最初は私の番だ。ウィローラが疲れた様子で肩を落としながら中央の寝台に向かうのを見送った後、焚き火台に薪をくべて火を絶やさないようにする。


見張りといっても、拠点の周囲には身の丈ほどの高い柵と、音が鳴る木の実を使った警報装置が設置されている。そのため直接危険が迫ることは少ない。しかし、万が一に備えて即座に動ける人がいるかどうかは、生死を分ける大事なポイントだ。冒険者にとって見張りを立てるのは基本中の基本である。


辺りが完全な闇に包まれた頃、拠点に設置された時計が決められた時間の経過を知らせた。それを確認してから、私はウィローラを起こし、交代を告げる。彼女が寝台に向かう私に軽く「お疲れ」と声をかけてくれた。


寝台に潜り込むと、体に疲れがずっしりとのしかかってくるのを感じた。敷かれた毛皮の肌触りに癒されながら、私はそのまますぐに眠りに落ちた。

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