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リベリオン  作者: のらねこ
第二章 JACK vs 神奈川 死線合戦零戦線
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第四十六話 圧倒的戦力差②


 慎重に相手の出方を観察し対抗策を考えている岳陽(がくよう)胡桃(くるみ)、誤射を警戒し一撃必殺の対物狙撃銃アンチマテリアルライフルを安易に撃てない悠人(ゆうと)は先生の射程圏外から様子を伺っている。


 実際、俺でも先生の実力を全て引き出せたことは無い。最高でも70パーセントほどしか先生強さを知らない。そんな先生から1本取るだなんてどだい無理な話だが、もしかしたら全員でならやれるかもしれない。


「大将の強さの秘訣教えてもらうっすよ!」


 双刃槍(龍頭龍尾)を振り回し先生へ斬りかかる龍二(りゅうじ)は、やけに張り切りながら武器と踊る。俺の事を知りたいと思う彼にとって、先生は絶好の相手ということなのだろうか。


 龍二(りゅうじ)は先生の物干し竿(宝塔鬼刃)に勝るリーチで上手く立ち回り、先生の間合いの外からいやらしく牽制している。


「ッッラァ!!!」


「はああぁぁ!」


 隙をついてサトリと花香(はなか)が鈍器を振りかぶる。だが奮闘も虚しく、先生は彼女らの攻撃をひらりとかわしてチョップをかます。


 上手く遊ばれた彼女らは頭を押えてうずくまってしまう。


「女の子にゃ手ェ出したくないんだがのう」


 先生は頭をポリポリと掻きながら俺達の方を見る。さらに、野郎共がかかって来いと言っているかのように、わざとらしく手招きをして煽ってきた。


 この煽りにカチンと来てしまったのか、鼻息を荒くして龍二(りゅうじ)五十嵐(いがらし)が先生へと走り出す。


「挑発だ! 安易に突っ込むな!」


 彼らも分かっているはずだが、俺は静止の言葉を彼らに叫んだ。しかし俺の言葉は彼らに届かず、分かりやすく直線的な攻撃で先生へ武器を振るった。


「お前さんは経験不足、お前さんは狙いが甘い」


 先生の胴を狙った双刃槍(龍頭龍尾)は簡単に見切られて足蹴にされ、先生の首を狙った大太刀(影月)は簡単に物干し竿(宝塔鬼刃)で受け止められてしまった。


 突きの体勢のまま槍の穂先を地面に突き刺し、それを足蹴にされて先生から見下ろされる龍二(りゅうじ)と、重さがあるはずの斬撃をいとも容易く止められてしまった五十嵐(いがらし)。彼らは歯を食いしばりながら必死に先生へガンを飛ばす。


「まずは2人じゃの」


「――ッ!?」


 先生が言い終わる頃には、彼らの両足の甲から勢いよく血液が吹き出ており、地面に立つこともままならないような痛々しい傷ができていた。


「ングッ……」


「いっでえぇ……」


 2人はその場で倒れてしまい武器も地面に転がる。しかし何故か先生はトドメを刺そうとはせず、その視線は俺とゾウさんと坂東(ばんどう)に向いていた。


 狙いがこちらに来たと察知した坂東(ばんどう)(影丸)を鞘に収め抜刀術の構えをする。彼の得意技である居合抜刀だが、あのバケモンに通用するとは思えない。


「ほう、居合か。だったら……」


 先生は身体を大きく後ろへ捻り、顔はまっすぐ坂東(ばんどう)を捉える。2メートル強の物干し竿(宝塔鬼刃)を水平に構えて切っ先を彼へ向けた。


 体を後ろへ捻っているのに、顔はそのまま正面を向けて弓を引き絞るよう武器を水平に持つこの構え。見た目はへんてこりんだが、そこから繰り出される技の威力はバカにできない。


 お互いジリジリと間合いを詰めていき、見えるはずのないお互いの間合いの境目がちょうど交わった瞬間。


「『多聞流(たもんりゅう)瑠璃彗星(るりすいせい)』ッ!」


 恐ろしく早い坂東(ばんどう)の居合抜刀が先生の胴体を捉えそうだった一瞬。居合抜刀をも超える神速の一突きが先生から放たれ、鞘で加速した坂東(ばんどう)(影丸)の腹と衝突した。


 ヒュンッ――!


 ボガアアァァァンッ!――


 有り得ない速さの居合抜刀をそれ以上の突きで返したため、その一瞬に蓄積された運動エネルギーが坂東(ばんどう)の身体を軽々と吹き飛ばした。


 飛ばされた先の壁に衝突した彼はガクりと意識を失いその場で倒れてしまった。相当な衝撃があった音が、先生の技の威力を物語っている。


「勝てねぇ……」


 思っていても口に出してはいけない。それが大将なら尚のこと。そんなこと分かってはいるが、この埋めようのない経験とセンスを前にし言葉が勝手に口から出てしまう。


 地面にうずくまる龍二(りゅうじ)五十嵐(いがらし)、そして壁にめり込みながら意識を失っている坂東(ばんどう)を見るに、先生は俺達を殺そうとはしていない。


 命までは取られないのであれば、ここは1度引いて体勢を立て直すのも良い。甘い考えだが、トドメを刺さないということは、俺達に何かしらの利用価値があると思っている証拠。


 この圧倒的戦力差は現状の俺達が何をしても埋めることは出来ない。一旦ここは逃げ…………


「本気、出さないの?」


 焦って視界が狭くなり、自然と下を向いていた俺の目線を、彼はたった一言で上げてしまう。


 深紅の大剣(護國宝浄・解)を肩に担いだゾウさん。筋肉質で頼もしい背中がそこにはあった。


「1個作戦考えてくれや。そしたら全力カバーしてやる」


 岳陽(がくよう)胡桃(くるみ)悠人(ゆうと)の3人は後方で今か今かと俺の指示を待っている。


「さすがにアタシも全力出すわ」


 ガチンッと拳を打ち付けたサトリは、バチバチという放電音がしたその一瞬で真っ白いラバースーツの鎧殻に身を包んだ。マスク型頭部プロテクターを展開し、武器を一切持たない彼女は鋭い目つきで先生を刺す。


 頭を押えながら怒っている様子の花香(はなか)も『大槌(強零)』を構えて先生を睨みつける。


 抜けきっていないサボり癖、楽な方へ向かう自分への甘さ。箱根を出る時にそれは捨てたはずなのに、無理だと決めつけ諦めて、挑戦もせずに言い訳ばかりを考えていた。


 パァンッ――


 大将としての意識を強く改め、無意識に手を抜く不誠実さを取り払う。そのために今、顔面に根性を入れ直す。


 そもそも俺は頭部プロテクターすら展開せずに戦っていたことに気づいた。傷付いた仲間に対して自分が情けないと思い、同時に自分の間違いに気付かされた。


「悪ぃお前ら。勝てようが勝てまいが、俺も本気で行かせてもらう」


 拡張装甲を展開してからくり刀(リベリオン・ジャック)を構え、小さな綻びや付け入る隙を見逃さないよう俺も先生を刺すように観る。


「修行中みたいに手ェ抜いてたら死ぬぞ問題児!」


 俺のやる気と闘志を感じてか、先生はニヤニヤしながら俺へ飛び込んでくる。


 ガギイィィィンッッ!――


 物干し竿(宝塔鬼刃)からくり刀(リベリオン・ジャック)が火花を散らせながら、同盟結成試験の第2ラウンドのゴングが鳴り響いた。

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