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リベリオン  作者: のらねこ
第二章 JACK vs 神奈川 死線合戦零戦線
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第四十四話 同盟結成試験


「ようこそ横浜城へ。私は『源軍守護隊隊長』の『変若(おち)』と言うものです。以後お見知り置きを」


 若く丁寧で綺麗な女性がお出迎えしてくれた。黒髪に銀髪のメッシュが入ったストレートロングに、幾重にも重なっているであろうパステルカラーの十二単、落ち着きの中に妖艶さが混じる深みのある声。


 変若(おち)と名乗るその女性は、ニコッと優しい笑顔を俺達へ向けてくれた。


 もれなく龍二(りゅうじ)以外の男性陣が鼻の下を伸ばしながら彼女を見つめる中、呆れた顔をする花香(はなか)とサトリ。そんな事には特に興味もなさそうな胡桃(くるみ)


「ささ、ここで立ち話もなんですから、早速客間へ案内致しますね」


 こちらです、と細くて綺麗な指を滑らせ彼女は俺達を誘導する。かなりの美女っぷりに興奮冷めやらぬ男性陣は、ゆっくりゆったりと彼女の後を着いていく。


 僅かに新緑の香りがするフローリングの床と、夜のためあまり外が見えない耐圧窓ガラスが俺達を迎える。そして白を基調とした壁に沿っていくつもの角を曲がり、ゆるやかな階段を降りるとちょっとした広間に出た。


 たくさんの源軍の兵士に囲まれながらも、俺達と先生は変若(おち)さんの後を着いて歩いた。源軍の兵士をよくよく見ていると、刀や弓といった原始的な武器を持つ者が多かった。


 もう少し歩いて何階か階層を下り、名も無き一室の、白く無機質な自動ドアの前へ俺達は案内される。


 自動ドアが開き部屋の中へ通されるが、その光景は全く予想していないものだった。


 縦にも横にも幅広く傷だらけの白い壁と、空間把握が鈍るほどの高い天井、血汚れやオイルが染み込んでいるであろう燻った白い床。


 ここに居る誰もがギョッとした顔でこの空間を眺めていると、先生が肩を回し始めアップをとっていた。


「さぁて、問題児共、ここを見りゃわかると思うが、もうやる事は分かっちょるな?」


 鞘に収まっている物干し竿(宝塔鬼刃)を身体全部使って抜刀し、その長く重そうな刃先を俺達へ向ける。向けられた刃と先生の眼差しはとても鋭く、状況が飲み込めていない俺達はただ武器に手をかけるだけ。


刃左衛門(じんざえもん)さん、どこへ行っていたのですか。まだ刀を抜かないでください」


 どこからともなく聞こえてくる声。男性とも女性ともとれる中性的なその声色は、今の神奈川県民ならおそらく1度は聞いたことあるであろう声。


 自動ドアが開き、その声の主が姿を現した。


「賭場に行っとったんじゃよ。それより、この問題児共を呼んだのはお前さんかい? (みなもとの)


 美少年とも美少女ともとれる中性的な顔立ち、身長は約180センチほどあろうタッパ、岳陽(がくよう)の鎧殻にも似た赤と青の甲冑を着込み、腰にはあの有名な名刀『膝丸(ひざまる)』と『髭切(ひげきり)』がぶら下がっている。


 横浜スタジアムで見たあのホログラムのまんまで登場した、現神奈川県の県将軍、(みなもとの) 義経(よしつね)


 そしてその隣には、5メートルほどある身長の大男が立っていた。白い袈裟を身にまとい大量の武器を背中に担ぐその風貌。生で見たのはこれが2度目になる。弁慶だ。


 義経(よしつね)は先生に向けてため息をつき、呆れるのも程々に俺達を観る。見られるのは良いのだが、その目付きがすごく体にまとわりつく。言うなれば、相手を認識するための()()ではなく、分析や情報収集のための()()という感じ。


「たった4人で箱根城を数時間で陥落させ、1ヶ月でその数を10人に増やし、根城にしていたその城を敵ごと爆破してここへ来た。それが君たちJACKという組織、という認識で合っているかな?」


「そうだ。俺達は北条(ほうじょう) 時宗(ときむね)が源軍に侵攻する計画を見つけて戦力を集めてた。だがお察しの通り邪魔されそうになったから、いっその事あんたらと協力した方が得策だと思ってここに来た」


 相手が県将軍であろうと堂々と、それでいて変に上から目線じゃないよう敬意を持って義経(よしつね)と交渉する。


「少数精鋭の戦闘力に加えて、俺とオレンジ鎧殻(岳陽)大剣(ゾウさん)の3人は2月の徳川軍襲来から生き残った生還者でもある。運と戦力は保証する」


 付け加えた情報を聞いた義経(よしつね)は少しばかり目を開いて驚いた顔をする。横浜スタジアムでの出来事は、神奈川県を統治する源軍においてひとつの失態。そこからの生還者となると、運と実力を兼ね備えた俺達は、彼にとって良くも悪くも放っては置けない存在となっているだろう。


 しかし彼の表情はすぐに戻り、まるで俺からの提案を知っていたかのような切り返しをしてきた。


「お前達が本当に戦力になるのなら、一時的に源軍とJACKとの間で同盟を結んでも良い。だが……」


 義経(よしつね)の言葉の先には先生がいた。ようやくか、という表情で物干し竿(宝塔鬼刃)を肩に担ぎその細い目で俺達を観る。


 ここで俺は義経(よしつね)の意図と先生との巡り合わせの意味が理解できた。何も伏線(匂わせ)が無かったが、こいつは恐らく横浜スタジアムの時から俺達の事を知っている。先生とも面識があるのならば、その前から知っている可能性さえ出てくる。


 どこで誰がどのように俺達をサーチしていたかは知らないが、俺達が彼らに泣き付くのは分かりきっていた事らしい。


 だからこその先生というわけなのだろう。


「問題児共、誰から来るかの? むしろ全員いっぺんにでも良かろう」


(みなもとの) 義経(よしつね)とどんな関係を持ってるんすかセンセー」


 担いだ物干し竿(宝塔鬼刃)を払い、刃先を傷だらけの床へ近づける。非常に長いその刀身ゆえに重さも相当なはずだが、齢70にして人間離れした筋力と握力で刃を静止させている。


 俺の問いに先生はニヤリと笑い、その静止した刃を俺達へと向ける。


「一本取ったら教えてやるわい!」


 多聞流(たもんりゅう)第十一代目師範代とJACKによる、同盟結成試験の火蓋が切られた。

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