第四十三話 開門
「あ、君この人の関係者かな? さっきから中に入れてくれってうるさいから帰らしてくれないかな?」
呆れた顔をした源軍の兵士が武器を構えながら俺に話しかけてきた。物騒な物を俺と先生に向けてはいるが、あくまで牽制の為のようで敵意は無い。
この人達には申し訳ないが、俺も何故かここに居る先生と同じ立場の人間。中に入れてもらうようお願いしてみた。
「俺達も源 義経さんに逢いに来ました。JACK一同、アポ無し訪問で申し訳ないですが、お願いします」
はぁ? と言いたげな顔をした兵士はARモニターを出現させ、とあるニュースの画面を俺達に見せてきた。そこには、今日俺達が派手に爆破してきた箱根城の消火作業に従事する消防隊員の姿があった。見出しは、『謎の組織JACK崩壊か!? 爆破された箱根城の謎』と書いてある。
「なんで本拠地が爆破されたJACKさん達がここに来られるんですかね? 頭のおかしなじぃさんだけじゃなく、可哀想な若者まで来ようとは……」
兵士は武器を下ろし再び呆れるような顔をして俺達に言い放った。こんなニュースを見ていたのなら、俺達がJACKだと信じてもらえないのも確かだ。
それでもここを通らなければ、どちらにせよ先に進むことが出来ない。このままでは天下統一はもちろんの事、戦国大名の北条でさえ倒す事もままならない。
「はぁ!? 問題児、いつの間にこんな城持ってたんじゃ。そんでいつの間に組織なんか作りおったんじゃ」
驚いている様子の先生だが、そのほっっっそい目のせいで全然びっくりしてる感が無い。
「えと、とりあえずこの人は……?」
坂東が後ろから声をかけてきた。彼らにしたら会うのは初めてだし、声を聞くのも、その存在さえ俺は話していなかった。岳陽とサトリには話した事があるが、この場にいるヤツには改めて紹介しなくてはならない。
俺が中学を卒業してからずっと剣術を教わっていた先生であり、『多聞流第十一代目師範代』。
背負っている刃渡り2メートル強の物干し竿、『宝塔鬼刃』を愛刀とし、己の戦術センスが何よりも快感としている変わった爺。三度の飯より全賭け博打、スリルがあるなら命も捨てる、そんな言葉がよく似合う超絶怒涛のギャンブラー。
「『多聞 刃左衛門』センセーだ」
「よろしく頼むな、問題児の友達」
先生は細く平行な目を僅かに湾曲させ口角を上げる。JACKのメンバーが物珍しそうに先生を見ながら、各々が彼へと挨拶をする。
「あの、初対面での自己紹介ならよそで――、……はい?」
目の前の兵士が急に誰かと話をし始める。険しかった顔が少し緩みつつも、次第に疑問を抱えた表情へと変わっていく。一体何の話をしているのか分からないが、彼は時折俺達と先生をチラチラ見ながら会話をしていた。
そしてほんの少しの時間が過ぎ、眉をひそめた兵士が俺たちへ向き直った。彼の目線は俺と先生に向いており、小さめのため息をついた後口を開いた。
「……義経様がお呼びだ。中に居る別の者の指示に従って行動してくれ。ただ、くれぐれも変な気は起こさないように」
彼の最後の一言でJACKの何人かが、ギクッという効果音が聞こえたかと思うほど狼狽した。あくまで交渉は俺がやるし、ワンチャン殺り合おうとしてる奴が居たと思うと先が思いやられる。
天守大門の鈍重で分厚い扉が開き、俺達と先生は中へ通される。
なぜ先生がここに入りたがっていたのか、そしてなぜ、要件も伝えていない俺達が中へ通されたのか。不確定要素や疑問な点が残るが、罠の可能性も考慮しておかなければならない。
「(岳陽、バレない程度にスキャンと情報収集よろ)」
「(言われると思ったわ。バレそうになったら辞めるからな)」
北条を倒すため、義経からの協力を仰ぐため、俺達JACKは横浜の海中御殿へその身を投じた。




