第四十話 箱根から横浜へ
城を手にした時に得た多くの財産。それをほんの少しだけ使い、大勢乗れる無輪車をレンタルした。悠人が運転手を担い、酔いやすい龍二が助手席に座り、あとは適当に席を埋めて横浜へ出発した。
現在時刻は午後18時25分。向こうへ着く頃には21時前後と言ったところだろうか。
神奈川県はどこの地域でも公共交通機関が通っているが、統治する人間が変わると、値段やルールも変わる。電車、バス、タクシーなんかが変化を顕著に感じることが出来る。
それに比べて有輪車用の高速道路や、無輪車用の空中道路は割とどこにでも通っている。値段もルールも似たり寄ったりで、公共交通機関よりは使い勝手が良い。まぁ、ひとたび戦いが起きれば、巻き込まれてしまう危険もあるが。
そんなわけで今は無輪車用の空中道路を通って横浜へ向かっている。昔は空を飛ぶなんて夢物語だったみたいだが、俺にとっては日常の光景だ。手の届きそうな場所に雲も太陽も月もある。
太陽と月が空の支配を交代し始めている斜陽の空。もうあのキノコ雲は見えない。
「源氏って横浜と鎌倉と横須賀に城持ってますけど、どうして横浜に行こうとしてるんですか?」
運転手の悠人から質問をされた。
歴史的要因で鎌倉に常駐するか、元米軍基地のある横須賀に軍事的要因で常駐するか、文化的要因で横浜に常駐するか。たしかに選択肢は多い。
しかし俺には、源氏もとい、源 義経が常駐するのは横浜だと言える理由がある。
「俺達は横浜スタジアムで徳川軍に襲われたのは知ってるよな? あん時弁慶が単身で敵陣に乗り込んでったんだよ。弁慶つったら義経の右腕だろ? だからスタジアムの被害報告から現場へ駆けつける速度を考えると、『横浜城』に居るのが妥当だと思うんだ」
悠人もそうだが、話を聞いていたほかのメンバーも納得したような相槌をうつ。だが今の俺の話は100%合っているとは限らない。横浜城には弁慶だけが常駐し、他の城に義経が居る可能性だってある。
インターネットの『全国戦国武将目録』というサイトにも、横浜城に義経が居ると書いてあった。その情報を鵜呑みにする訳では無いが、俺の考えと合わせると信ぴょう性も増してくる。
それに俺達の目的はあくまでも彼らとの協力。念入りに作戦や行動を立てることは、かえって彼らに失礼というもの。まぁ、どうせいつか潰すが。
「もし向こうが家来になれとか言ってきたらどーすんの?」
「それはオレも気になってたー」
花香とゾウさんも質問してきた。俺は半笑いで、何を当たり前なこと聞いてるんですか、と言わんばかりの声色で答えた。
「家来にしたけりゃ俺を奪いに来いって言ってやるさ。俺達はJACKだろ? 逆に源氏をジャックしてやろうぜ」
「いやーん素敵! さすがあたし達の大将ね。ほんと愛してるわ!」
食い気味にホモ野郎が割って入ってきた。コイツはいつも俺に絡んできやがる。
「大和はほんと大将が好きだな。顔は確かに良いが、どこに惚れたんだ?」
五十嵐が茶化すよう(龍二に話しかける。すると彼は、よくぞ聞いてくれました! と言わんばかりの顔で助手席から顔を覗かせる。




