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リベリオン  作者: のらねこ
第二章 JACK vs 神奈川 死線合戦零戦線
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第三十九話 雲外蒼天


 逃げている道中何度か敵兵に追いつかれ戦闘はしたが、こちらには近接アタッカーが3人も居る。蹴散らすのは簡単だった。


 大涌谷にある箱根城から猛ダッシュでガン逃げをかまし、安全地帯に指定した芦ノ湖付近の森へ来た。もう既に全員集まっており、全員指示待ちの状態だった。


「まず、侵攻してきたヤツらのリーダーは、多分自分の体になにか仕込んでるタイプのサイボーグだった。だからあの場で俺が斬ることを躊躇った。城ごと爆破してヤツらを消し、横浜に向かう」


 色々言いたそうなヤツは当然いる。しかし予め城に爆弾を仕掛けてることは伝えてあるし、彼らも子供じゃない。城がこういう使い方をされる事は承知の上だっただろう。


「横浜に行ってどうすんだい?」


 五十嵐(いがらし)からもっともな意見を言われる。それに関しては俺に考えがあった。


「源氏に交渉しに行く」


「「なっ……!?」」


 俺が彼らにこの事を話したのは初めてだったために当然の反応だった。困惑や疑問の声もあがる。しかし源氏に交渉するというのは前々から考えていた策でもあった。


 俺、岳陽(がくよう)、ゾウさんは約2ヶ月前の徳川軍横浜スタジアム侵略で生き残った数少ないであろう優秀な人材。戦国大名を落とした武功もあり、JACKという組織も耳には入っているはず。


 俺たちの有用性と北条討伐までの一時共闘を申し出れば俺達にも道はある。そこで源氏に吸収されて御家人になるなら、俺は源氏の勢力として征夷大将軍を目指す。


 もとより俺は御家人から成り上がって征夷大将軍をめざしていた。もしもの事があれば大将ごっこが終わるだけだ。


「とりあえず箱根城は爆破しよう。岳陽(がくよう)やってくれ」


「あいあい大将。他のみんなも良いな?」


 彼らは黙って頷く。


 岳陽(がくよう)宙にあるARモニターを操作し爆破ボタンを押した。


 ドガアアアァァァァァンッッッッ!!!!――


 空は揺れ、空気は淀み、音が耳を刺す。鼓膜が破れたかと錯覚するほどの轟音と痛みが辺りをつつみ、爆破の熱波と衝撃は易々と俺達の膝を地に着けさせた。晴空に立ち上るキノコ雲が微かに炎を纏うほど、あの場の爆発は凄まじい。


「さ、ここも危ねぇ。さっさと向かうべ横浜に」


 敵からの襲撃を受けるも誰一人怪我はなく、10人全員揃って逃げることが出来た。欲を言えばあの白いサイボーグから情報を取りたかったが、あのままいつまでも斬らずにいればこちらが不利をこうむることになっていた。


 俺達は芦ノ湖沿いの森を縁に沿って歩き、やがて街へと出ることが出来た。


 街は騒然としていて慌ただしく、大涌谷から立ち込めるキノコ雲に不安を感じる人が多いようだった。店は締まり、子供は急ぎ足で建物へ避難し、武器を担いだ大人達が安全を確認している。


「あ、坂東(ばんどう)さん!」


 彼を呼び止める男がいた。その声に周りの人達も反応し、俺達はあっという間に街の人たちに囲まれてしまった。


 城はどうなっているのか、何が攻めてきたのか、街は大丈夫なのか。様々質問が飛び交う中、坂東(ばんどう)が声を出した。


「俺達は負けてしまった。エース将軍と同じ軍の人間が攻めてきていたので一筋縄ではいかず……」


 彼の言葉を黙って聞いていた街の人たちは、次第に怒りを露わにして俺達に武器を向けてきた。


「俺達はあんたらが攻める前は割と平和だった! なのにエース将軍を倒してあんたらが統治するようになってからめちゃくちゃだ! オマケに攻め込まれたのに負けて逃げてきた? ふざけるな!」


「そうだそうだ!」「我慢ならねぇ!」


 街の人たちは俺達に次々と武器を突きつけ、溜まっていた不満を爆発させる。不慣れな統治や街の人たちとの交流の少なさから、彼らの不安を取り除くことが出来なかった。


 俺は今まで自分中心で物事を考え、何事も楽観して生きてきた。それを今、大勢の他人との関わりを通じ、統治者や人の上に立つ者としての考え方が甘かったと自覚する。


「申し訳ありません」


 俺はこの時、初めて自然と頭が下がった。自分でも自覚があるほど自己中で気分屋で楽観的な俺が、考えるよりも先に体が動いた。


 彼らの不安や恐怖が直に伝わり、俺が招いた結果だと嫌でも思い知らされる。統治者とは、大将とは、一城の主とは、俺が考えるよりも遥かに重いものだった。


 そして当然俺の謝罪ひとつで街の人たちが納得する訳もなく、今にでも斬りかかってきそうな勢いで罵声をあびせられる。


 重い。重すぎる。


 予想以上に俺の人格を否定するような罵詈雑言が飛び交い、俺が頭を下げたことによって不満を吐露する人たちの暴言がエスカレートした。


 気持ちの切り替えが得意な俺でも、これはさすがに堪える。


 左胸がグサグサとナイフを突き立てられているかのような痛みに襲われる中、俺の隣に誰かが1歩出てきた。


「大将を責めないでやってくれ」


 頭を下げていて顔は見えていないが、その声だけで誰か分かる。


「コイツには夢があンだ。今はまだバカで何も出来ねぇが、もう1回コイツが上に立つ時はもっと良い人間になってる」


 聞き慣れた声のはずなのに、いつもより柔らかく聞こえる。


(しも)は今潰れるには惜しいんだ。頼むよ」


 この力強くも少し抜けた声は、今の俺にとってはとても力になる。


 俺は地を見ていた。しかし微かに、たしかに視界に入って来た。俺と同じ方を向く仲間たちの顔が。


 俺一人の言葉では、到底街の人たちの不安や恐怖は取り除けないだろう。そして、彼らの不満も全て聞くことが出来ないだろう。だが今は俺と同じ方を向く仲間が9人も居てくれる。


「俺たちも怖いんだ。人の争う音は何回聞いても全く慣れない。俺には家族を守る義務があるから、あんたらは俺を守ってくれよ」


 矢面に立ち武器を構えていた男が刃先を地に向ける。


「俺も将来の夢がある」「私には愛する人がいる」「守るべき店がある」


 一人の男を皮切りに、街の人たちは次々と武器を下ろしていく。彼らの声は怒声からか細い声へと変わっていき、一人ひとりが落ち着いて俺達に気持ちを伝えてくれた。


 彼らは辛かったのだ。不安定な統治が、首がすげ代わった街が、命の危険を感じることが。だからこそ、俺が、俺達がなんとかしなければならなかった。


「皆さん、思っている事を素直に伝えてくれてありがとうございます。俺には自覚が足りませんでした。箱根城が無くなってしまった今、俺達は少しの間ここを離れ、今回の侵攻の首謀者を討ちに行きます」


 俺は顔を上げ、俺を見る街の人たち一人ひとりの目を見て伝えた。


「それまで待っていてください。100%命の保証があるとは正直言えません。しかし、ここは俺の街です。絶対皆さんを見捨てたりはしません」


 俺も彼らに正直に告白した。これで彼らに石を投げられようものなら、俺は甘んじて石を受けることにしただろう。


 だが彼らは石を投げるどころか、俺の肩をがっちりと掴んで頭を下げた。既に彼らの手に武器はなく、拳を固めてただ俺に頭を下げている。


 (あぁ、この人らも向いてる方向は同じなんだな……)


 俺達はもう一度全員で地に視線を落とし、シャキッと背を伸ばして彼らに背を見せる。その背を見た彼らが何を思ったかは分からないが、少なくとも俺はこの背で彼らに俺の意思を伝えた。


 次この場所に来た時は、胸張って前を見る。って。

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