第三十六話 大立ち回り
「加減は要らねぇ、本気で行くぜお前ら!」
ミツウロコを刻んだ大量のサイボーグがおれたちへ襲いかかってきた。圧倒的に数的不利だが、そんな人数差に物怖じしていては一城の主は勤まらない。
ゾウさんも龍二も俺からあまり離れず、お互いがお互いを助けられる位置にいる。そしてさらに、俺達が仕損じた敵は悠人がブチ抜いてくれる。
新しく入った仲間の能力を信じ、俺はサイボーグの波へ飛びいる。
「『ヴィルートランス・巨人断殺翼』!」
ゾウさんは左右非対称の大剣を振り回し、押し寄せるサイボーグを次々となぎ倒していく。ぶった斬る、ぶっ潰すといった言葉が似合うような彼の戦い方はまさに戦闘狂。様々な武器を持った鉄製のサイボーグをものともせず立ち回り、力強く敵を潰し回っている。
彼に吹き飛ばされた敵は山のように積み上がり、着実に数を減らしていってる。
「オラァ!」
双刃槍『龍頭龍尾』を巧みに扱い、リーチと双刃を活かして敵の包囲網を切り抜けている龍二。
彼は1度俺に、自分は剣の才が無いから槍を選んだと話したことがある。その判断が彼にとってどういった影響をもたらしているか、俺には分からない。だが戦いぶりをみるに、その選択は間違いじゃなかったのだと感じる。
敵との間合い、前後左右の空間把握、槍の穂とケツに着いた返しのある刀身の扱い。彼の判断は今の彼を形作っており、幾十のサイボーグに囲まれても決して引けを取っていない。
「囲め囲め!」
仲間2人の戦いぶりに感化していると俺が囲まれてしまった。しかしコイツら、俺の戦い方を知らない。
「無理ねぇか。俺の名が知れたのも最近だしな」
刀、槍、剣、斧。まずは尖兵が俺を囲み、逃げたところを後方の狙撃隊が狙うという戦法らしい。どこかで体験したデジャブを感じつつ、俺は腰のからくり刀に手をかけず周りをぐるりと見渡す。
「俺を相手に囲んだらどうなるか教えてやる! 『多聞流・瑠璃波』!」
狙いを定めたサイボーグに一気に近づき、相手を斧を奪い取ってそのまま殺す。周りの敵が混乱している内に次の敵へと斧を投げつけ、頭がかち割れた奴の持つ刀を拾ってさらに他の奴へと刀を振った。
そこから敵の陣は崩れ始めた。俺を囲っていた奴らはジリジリと俺から距離を離し、俺の間合いへ入る敵は1人も居なくなった。
そうなってくると敵は次の手を打ってくる。後方にいた狙撃隊が顔を出し、サブマシンガン、アサルトライフル、ショットガンを俺に向ける。
バァンッ!――
1発の銃声を皮切りに鉛の雨が俺へと降り注ぐ。この鉛の雨こそ、俺の得意な武器と化す。
俺は迷わず鉛の雨に自ら突き進み、オート防御の拡張装甲で弾丸を弾き落とす。そうなると当然敵は接近戦を警戒し距離を離そうとする。
ザッザッザッザッ!――
俺ははしゃぐ子犬のように敵陣に駆け込み、斬れる者を斬り捨てながら狙撃隊の射線をかき乱す。一か八か、誤射を躊躇いながらも引き金を引く敵の顔は、俺の最高の戦闘スパイスになる。
こうなってくると戦う事が楽しくて仕方がない。敵の引きつった顔、誤射されるかもしれないという歪んが表情、剣を振る事も引き金を引くことも躊躇う芯のもろさ。全てが俺の武器となる。
「数がアダになってんなァ!」
殺しては奪い、奪っては殺す。斬って拾って殴って拾って撃って拾って投げて拾う。そうしているうちに、俺の周りには敵が寄り付かなくなり、あからさまに俺の周りだけポッカリと空間ができる。
(そうなってくると俺のやる事は1つ)
俺はまず龍二へ向かって地を蹴る。彼の周りの敵は彼のそのリーチと双刃槍の独特な戦い方に対し、どう対処すべきかを考えている最中だった。
「手伝うぞ龍二」
俺に背を向けていた敵の頸は全て跳ね、俺と龍二が合流した事で周りの敵は一気に警戒心を強める。
「大将ってホントイケメンすぎ。戦いぶり見てたわ。凄すぎて私びしょびしょよ!」
「キモすぎ。斬られてしまえ」
「私も大将に良いとこ見せたいわ!」
俺の話をシカトし気合を入れた彼は、自らの義足からジェットブースターを展開する。両足のふくらはぎ付近から展開されたジェットブースターは、彼を軽く浮かせたあと、恐ろしく速い速度で敵陣へ斬込みに行った。
まるで、息を吹きかけると簡単に飛ばされるホコリのように敵は宙へ放られ、彼の斬込んだ道は綺麗に一本線となっている。
うわぁぁぁぁぁ!!――
別のところからも敵が宙へ放られている。恐らくゾウさんが暴れているようで、あちらこちらでサイボーグの水跳ねが見られる。
「余所見をするな!」
俺の後ろから斬りかかってくるサイボーグが一体。俺が振り返ろうとすると、重くこだまする銃声が俺の耳にまとわりついた。
ダアァァンッ!――
その銃声の主は俺の後ろにいたサイボーグの頭を綺麗に貫き、紐を通してマスコットにできるほどの綺麗な穴を作った。
この狙撃は悠人の『第五十三式対物狙撃銃』によるものだろう。俺は無言のグッジョブを悠人へ送り、再び戦線を掻き乱しに敵陣へ斬り込んだ。
たった4人で大手門から先を守っているが、雑兵のサイボーグぐらい今のところ何とかなっている。実際、大手門より先へは行かせていないし、着実に敵の数を減らしている。
しかし警戒すべきはあの3体のサイボーグだ。彼らが北条並びに輪廻の差し金なら一癖や二癖あるはず。このまま数を減らしつつ、アイツらが動き出したら対処する。
「お前たちJACKは4人構成と聞ク。他にも仲間がいるのカ?」
白いサイボーグは黒と銀の騎士に何かの指示を出す。するとゆっくりと彼らは動き出し、雑兵と入れ替わるように俺達へ向かってきた。




