第三十話 箱根城攻略⑨
はっきり言って1回目にクソ長い廊下で戦った時のエース将軍とは全く違った強さだった。サトリと戦っている姿を観察していたはずなのに、いざ自分が戦ってみるとその強さがよく分かる。
攻撃の隙を潰すように繰り出される次の攻撃、少しでも距離を離そうとすると飛んでくる回避困難なレーザー、攻撃を当てても怯まず反撃してくる違法改造ならではの戦闘スタイル。もはや、対人というより、対ロボとして戦っている気分になる。
「こんなにつまらなかったか?」
機銃、ヒートエッジ、機銃、機銃、ヒートエッジ、バルカン砲、ヒートエッジ、ニードルキャノン、機銃、レーザー砲。避けてもいなしても防いでも続く猛攻が、じわじわと俺の集中力を削いでいく。
何か弱点は無いか、何か付け入る隙は無いか、猛攻を凌ぎながら夢中で探し、考えている。しかし何度探しても弱点は見つからず、何度考えても楽に勝てるビジョンが思い浮かばない。
(楽に勝てるわけねぇか。一応戦国大名と呼ばれるにふさわしい実力派持ってるもんなコイツ)
息を上げ汗をかき、必死でギリギリ勝ち取る勝利より、本気を出さずに余裕を持って負ける方が性に合ってる。今まではそんな考えで良かったのかもしれない。
夢のために命をかける戦において、余裕を持って負けた先には死しかない。
楽して勝つなんて考えは横浜スタジアムの徳川軍の襲来で捨てたはずだったが、スカした根性が染み付いていて無意識に考えてしまっていた。
(息上げて汗垂らして必死にならなきゃいけないだろうが! 俺!!!)
こんな俺だからこそ、身の安全も周りの事も考えず、己のセンスと攻撃力に全振りした流派を学んだ。自分に甘くして良い代わりに、周りを黙らせるほどの圧倒的力を見せられる流派。
「『多聞流・瑠璃火花』!」
青い電光を纏った刀を飛ばして猛回転させる。1度喰らわせた技だが、エース将軍は反応しきれず左脚の装甲とミサイルランチャーを破壊する事に成功した。
両脚のブースターが半壊しているにもかかわらず、彼は慌てることなく攻撃を続ける。俺も被弾を恐れず前進し、全神経を集中させ攻撃と防御を織り交ぜて彼に挑む。
「本気出すんだから簡単に壊れんなよ!」
弱点も隙も最初から自分で作り出せば良かった。楽に勝とうとせず、己を信じ、勝利するという一点に向かう。俺にはそれが出来てしまう。
厄介な機銃は優先して破壊し、背中から伸びたレーザー砲は容赦なくからくり刀の特殊弾で撃ち壊し、ヒートエッジを握る4本の腕は全て鋼鉄の床に転がした。
速度を上げて刀を振り、少ない動きで大きな力を出せるようセンセーから教わった体捌きを思い出す。
「なかなか良い動きをする。ワタシもクソ本気を出そう」
――!?
攻めて攻めて攻めまくっていたが、彼の内に何かを感じとっさに距離を置いてしまった。すると次の瞬間、エース将軍の分厚く重そうな装甲がガシャガシャと隙間を作っていく。
「CAST OFF」
バァンッ!――
彼が纏っていた色とりどりの重厚な装甲が次々と弾け飛び、まるで破片手榴弾のように俺たちへ殻の断片が飛んできた。被弾しないよう俺や他のやつらは身を守り、ひとしきり装甲のパージが終わる頃には、重装甲で豊富な装備を担いだエース将軍はいなかった。
俺の視線の先にいるサイボーグは、黒いカラーリングに細い胴体をしており、そこから伸びる四肢はどこに触れても怪我をしそうな鋭利な形をしている。そして特徴的だった一角はVの字に開き、単眼だと思っていたフェイスパーツは外れて蒼い双眼へと変わっていた。
もはや剣と見紛うほど細く鋭利な脚で床に立ち、刃のような両手を構え、その綺麗に明るく光る蒼い双眼で俺を見る。
「ちゃんと自己紹介してなかったナ。『シダルダ』様の命令でこの城を守る『カール・アン・ツインエース』だ。よろしくな兄弟!」
自己紹介を終えたエース将軍、もといツインエースは激しい火花を散らせながら轟速で俺へと迫ってきた。




