第二十八話 箱根城攻略⑦
長い螺旋階段をひたすらサトリと駆け上がり、途中どちらがボスを倒すかで言い争いながらも、ようやく天守閣への扉の前までたどり着いた。
「ここ開けたらいきなりズドンとか無いよな……?」
「ンな卑怯なことしねぇだろ」
そう言ってサトリが大きく重そうな鉄扉に手を掛ける。
扉の先は広くひらけた箱根城の天守閣。床は畳やフローリングなどではなく鋼鉄でできており、屋根の内側や柱、展望部の柵など全てが硬そうな金属で作られている。
大涌谷と箱根の街を一望できるその天守閣に、たった一人で鎮座する重装のサイボーグ。クソ長廊下での言葉を思い出し、思わずニヤついてしまうほどワクワクする敵将がそこには居た。
「待たせたな。エース将軍」
俺の言葉に反応したエース将軍は赤い単眼をギロリと光らせる。その重厚な体躯をゆっくりと動かし、感動の再会(小一時間ぶり)を分かち合おうとお互いの武器を構えようとした瞬間。
ドガアアァァァァァァンッッ!!!――
俺の横から物凄いスピードでエース将軍に飛び掛り、一角単眼の頭部へとメリケンサックをはめた拳を叩きつけるサトリ。凄まじい轟音と激しい火花が散り、鎮座していたエース将軍はぶっ飛ばされた。
ギャグかと思うほど清々しいサトリの横槍は、俺のやる気を削ぐのに十分な効果を発揮した。
「アタシが大将ぶっ飛ばせば、颯太は何もしてない置物大将としてデビュー戦を飾れるぜ!」
「ここは男と男の勝負だろ! なにてめぇが突っ走ってぶん殴ってんだよ、このクソアマ!」
「ンだとテメェ! 置物大将はアタシがコイツをぶっ飛ばすまで指でも咥えて眺めてろ!」
そう言って高らかに笑いながらサトリは再びエース将軍を殴りに行く。
倒れていたエース将軍はすぐさま体勢を立て直し、向かってくるサトリに応戦する。
エース将軍は彼女の拳に危機感を抱いたのか、俺の時とは違う装備を展開しサトリを迎え撃った。足部のブースターで機動性を確保しつつ、脚部に付いたミサイルランチャーで牽制、2本から4本に増えた腕に更に攻撃的な機銃やヒートエッジを装備し、背面に付いた6本のレーザー砲で自在に回避困難なレーザーを放つ。
はっきり言って異常なまでの装備だが、そのどれもがサトリの攻撃を邪魔していることは確かだった。エース将軍の攻撃は手数が多いため、攻撃に攻撃を重ねて隙を極力減らしている。
攻撃の隙間を縫って近づいたとしても、頭部に付いているバルカン砲や胸部のニードルキャノンによって本体に攻撃を入れることが出来ない。
「ソウタの方が楽しいナ、お前より」
「あァ?」
エース将軍の挑発にサトリが乗ってしまい、イライラしていた顔が更に般若のような険しい顔になってしまった。そこからのサトリの行動はまさに鬼。
鎧殻も着ずに生身の体でエース将軍に突撃し、メリケン1本で猛攻を始めた。放たれる弾丸は全て見切り、振り下ろされる刃は全て躱し、拳の届く部位には迷わず攻撃を叩き込む。防戦一方だったサトリは次第に攻撃を加えていくようになり、そして段々と攻撃をする割合の方が増えていった。
「これでも喰らいなァ! 『業・日蓮』!」
ガガガガガガンッッ!――
ガッチリと握られた拳をエース将軍の右脚に向け、目では捕らえきらないほどの速さで六度叩き込む。サトリの拳の重さと速さはエース将軍の想定よりもはるかにパワフルだったため、反応が遅れて全撃モロに喰らう。
「オゥ、やりますね」
カラフルな分厚い装甲は砕け、右脚のミサイルランチャーは使い物にならなくなった。
「なんじゃ…………そりゃ………………」
砕けた装甲の隙間から顔を覗かせたのは、骨格でも肉体でも無く、隠された本物の脚だった。
エース将軍は俺と戦っている時、武装をパージするような行動をとっていた。そして前情報にあった、様々な武装を用いて手数多く戦う彼の戦闘スタイル。俺は今まで、このエース将軍は、改造に改造を重ねてして戦う改造中毒者かと思っていた。しかし実態は、自身を改造した上で戦車に乗るような|脳筋改造中毒者《ファッキンmodジャンキー》だった。
しかし分からないのは、サトリに装甲を破壊されて痛がらないのはまだ分かるが、俺に右肩を斬り落とされたのに痛がっていなかったことだ。
さすがに肩は本体とくっ付いていたはずだし、いくら改造を施そうが痛みまで取り除くのは……。
「サトリのやつ派手にやってんな」
「うおっ!?」
急な声に驚き変な声が出てしまった。
「おめーかよ岳陽! 意外と早めに終わったんだな」
坂東に斬られた岳陽の傷をペチンと叩きながら、彼の後ろにいたゾウさんにも挨拶をする。傷を叩かれた岳陽は面白い顔をしながら悶え、おそらく人間が表現できうる限界の変顔を披露した。
そんな変顔を終えたあと、次は神妙な顔でとあるデータを送ってきた。
「この城で起きた出来事と、あの将軍についてのデータだ」
送られてきたデータを押してARモニターを展開すると、そこには驚くべき事が書かれていた。




