第二十二話 箱根城攻略④
「『多聞流・瑠璃川上』!」
生身の人間やサイボーグが入り乱れる敵兵達に飛び込み、頸を目掛けて剣一閃。一気に2人の首を跳ねたところで刀を反転、逆手でもう一度踏み込んで2度目の一閃。逃げきれなかったサイボーグの首を跳ね、計3人を撃破。
「さぁさぁ楽しくなって参りましたァ!」
俺は名刺をばら撒きながら刀を振るう。
「…………JACKってなんだァ!? 大将ならお前を殺せば終わりだなぁ!!」
俺の名刺を拾った敵兵は武功を上げるため味方を鼓舞し、何故か敵の士気が上がり始めてしまった。
かったるい隠密行動などせず初めからこうすれば良かった。実力勝負なら俺達は雑兵なんぞに負けはしないし、エース将軍と手合わせした感じ、全然センセーの方が強いし怖い。
「おめぇらなんかにゃ終わらせられねぇぞ!」
押し寄せる敵兵を刀で切り伏せ、放たれる弾丸を拡張装甲で弾き、爆発兵器を持つ敵は優先して排除した。仲間の数が減っていく敵兵の士気はだんだんと落ちていき、俺が3階への階段に着く頃にには、俺を狩ろうとしていた敵は俺に狩られまいとする弱者に変わり、攻撃や守りも消極的になっていった。
俺の勢いと剣技に気圧された敵兵は足がすくんでいるようで、俺が1歩進むと敵が2歩下がる。
(これなら無駄な体力使わなくて済むな)
俺は刀を納刀して階段を駆け上がり、急に和風な空間になった3階のふすまを勢いよく開ける。到着した場所は岳陽との集合場所に指定した大広間。先程の廊下ほどの奥行と幅があり、天井も5メートルほどはあるまさに大広間。
さらに、そのど真ん中に正座で待っている袴を着た中年男性が1人。そばには1本の刀。
「友達見てませんか?」
俺は男に尋ねた。すると男は俺の横を指さしてこう言った。
「多分そこで寝てるよ」
男が指をさす方を見ると、オレンジの鎧殻を着ている男が横たわっていた。うつ伏せの状態で顔は見えず、しかし伏せている腹の部分からじんわり血が畳へ滲み出ている。
間違いない、岳陽だ。
「っめぇ……」
俺は一気に頭にキてしまい刀を抜いた。すると俺の殺気を感じ取り男も刀をとる。男はゆっくりと立ち上がって刀を腰に差し、柄に手を置いて少し腰を落とす。
「や………………め……ろ………………」
「!? おい岳陽大丈夫かよ!」
死にかけの虫のような弱々しい力で顔を上げる岳陽。震える手で頭部の側面を触り、俺に何かを送ってきた。
それは彼と男の戦いの映像だった。男はゆっくりと立ち上がり自分の名前を名乗った直後、岳陽の視界から消えるように猛スピードで前進し、彼の眼前で目にも止まらぬ斬撃を繰り出した。
岳陽は反撃する間もなく膝から崩れ落ち、斬られた傷ごと男に蹴り飛ばされてしまった。
「なるほどな。初見殺しじゃねぇか」
男は一礼した後俺を見て名乗った。
「我こそは『坂東 龍成』。主の命により、ここから先は1歩も通さん」
坂東と名乗る男は直後、音もなく俺の目の前まで迫ってきた。
ギイイィィィン!!――
初見殺しの必殺の居合抜刀。俺は拡張装甲を素早く前に出すことでヤツの一太刀を受け止めた。坂東は俺の拡張装甲と鍔迫り合いをしているが、俺の両手は空いているためすかさず俺も刀を振り下ろした。
危険を察知したのか坂東は俺から距離を離し再び刀を鞘に収める。
「また同じ手で来るんか? だったら俺にも考えがあるぜ」
俺は刀を鞘に収めてトリガーに指を掛ける。
そして坂東との間合いを慎重にはかり、まさに一触即発のオン・ユア・マーク。どちらかが相手の動きの起こりを察知してそれよりも早く刀を抜くかの勝負。大昔の西部劇のガンマンも、抜刀術の達人達も、こうしたスリルを味わっていたのだろうか。
ジリジリとお互いが詰め寄り、今か今かと機会を伺う。
頭部プロテクターもしていない坂東は、汗が目に入ろうが、ヨダレが垂れようが全く動じない。視点はまっすぐ俺を見つめ続け、汗とヨダレが混ざり合った何かが彼の顎から垂れ落ちた瞬間。
ヒュッ――
カチッ――
2振りの刀は交わること無く振り抜かれた。




