第二話 第一試験開始
外側から見た試合場と実際立ってみた試合場はまるで違った。外側から見た時、正直506人も入らねぇだろと思っていたが、実際立ってみるとめちゃくちゃ広かった。
「いやー、さすがにアガるな!」
「いや、お前はアガらなくていい。すでにクソ浮いてる」
同じ試合場にいる人間は全員スーツで参戦している。ジーパンにパーカーというラフな格好はどうやら俺だけのようだ。完全に試験の重要性を見誤っていた。
少し恥ずかしいが周りの視線を気にしないよう指示を待った。
ブォン――
義経ホログラムが浮かび上がり、待機していた俺たちは一斉にホログラムへ視線を向けた。
「第一試験は体力テストだ。体力、筋力、腕力、技術力、判断力を見せてもらう」
義経が話を終えると、陸上競技にも使われるようなトラックが床に出現した。ほかにも巻藁やダンベルなど、見てわかりやすい古典的な試験用具が現れた。
トラックやその他の試験用具の近くにはAIホログラムが共に現れ、受験者に動きやすい格好になるよう指示を出した。
この場にいる俺を除いた505人は一斉に動き出した。生身や半サイボーグの人は鎧殻になったり、サイボーグの人はパーツ換装などをして、次々と各自が動きやすい格好になっていく。
「はぁ。一応聞くけど、その格好のままやるつもり?」
いつの間にか橙色のザ・甲冑って感じの鎧殻を纏っている岳陽が、俺を冷ややかな目で見てくる。
「寒いから俺はこれでいいんだよ。鎧殻は着込んでるし」
もはや何も言うまい、と言った顔をする友人を横目に周りの様子を観察した。修行時代に見聞きした人が居ないか、周りはどんな武装をしているのか、様々な人間を観た。
あらかた準備が終わる頃、服やパーツをドローンが回収していく。
「受験番号3-101、受験番号3-102、トラックへ向かっテくダサい」
全五種目ある第一試験のうち、俺たちはまず初めにトラックへと案内された。ちなみに、受験番号の101が俺、102が岳陽だ。
俺たちは人の集まっている所へ向かい、一緒に走るであろう人達とAIホログラムから話を聞いた。
トラックでの種目は3000メートル走と100メートル走のそれぞれ2種類。3000メートル走は速度の持続性の試験、100メートル走は初速の瞬発力の試験だろう。
51人が3000メートル走をやり、もう51人が100メートル走を行う。ここにいるのは506人中の102人がいて、ちょうどピッタリ割り切れる数居る。俺と岳陽の番号がハブられてるように感じたのは恐らく気のせいだろう。
「んじゃ俺3000行ってくるぁ」
「おう」
俺が先に3000メートル走、岳陽は100メートル走を行うみたいだ。
周りは全員サイボーグや鎧殻の奴らばかりで、俺のようなに服を着ている奴は誰一人居ない。視線を集めまくってて痛い。
「それでハ位置につイて。ヨーイ……」
50人分のレーンの1つ外れた場所で俺はクラウチングの姿勢をとる。こうして人口の少ない中50人も1列揃っているのを見るのは圧巻だった。
持久特化や速度特化のサイボーグや半サイボーグに比べたら、生身の俺が速さを持続させる点においては一歩出遅れるだろう。
しかしこの鎧殻があれば話は別だ。
鎧殻の小さな稼働音を確かめ、俺は意識を3000メートル先に置いた。
ピー!――
AIホログラムのスタート合図で51名が一斉に走り出した。