第十八話 箱根だー!
――西暦2121年3月10日――
「山だ!」
「たまごだ!」
「「「「箱根だー!」」」」
俺達は箱根に来ていた。俺と岳陽は親に自立するとだけ伝えて横浜から出てきた。もちろん猛反対を喰らったが、天下を獲る人間を拘束することは出来ない。
なぜ箱根に来ているのか。
今の神奈川県は戦国大名が何名かいる。源 義経、北条 時宗、『カール・エース』。この3名が神奈川県の主な戦国大名となっている。
横浜、横須賀、鎌倉は義経が支配し、相模原の辺りを時宗が支配。箱根の辺りをエースが支配と、ある意味三つ巴のようになっているのが神奈川県の現状だ。主要な都市を支配している義経が神奈川県を支配する武将ということにはなっているが、他の2名が支配する地域はルールなど多少違ったりもする。しかし政策や法律などは義経が定めたものに則っている。
「箱根久しぶりに来たけど、何回みてもすげえなあ……」
箱根と言えば大涌谷が有名だが、谷間から天に伸びるギラギラの箱根城もとても有名だ。谷をまるまるお城にしてクソデカ要塞を築いてしまうぶっ飛んだ発想の建設立地と、見た目のド派手さが県内外から評価されている。見続けると目が痛い。
箱根を統治しているエース将軍は名前の通り外国から来た武将で、和風の城なのに赤や黄色、緑など目に留まる色で城が建てられている。
「はんほうひへはははひほひひほうへー」
ゾウさんが黒い卵を頬張っている。食べ終わってから喋ってくれ。
「昼時だし、まずは昼飯でも食い行こうぜ」
岳陽が腹を押えながら提案してきた。たしかにここに来るまで何も食べていなかった俺達は、すぐにでも飯が食いたいと、さっきから腹の虫が鳴っていた。だからゾウさんは先に卵食ってたのか……?
「ありあり。ンじゃ行くべ。何食べたい?」
「天丼!」「ラーメン!」「ハンバーグー」
見事に割れた。
「ちなみにアタシは蕎麦が食いたいから蕎麦行くぞ」
じゃあ聞くなよ。ぶっ飛ばすぞ。
そう言いたげな他2人も言葉を押し殺してサトリに着いていく。
そうして俺達は芦ノ湖近くの蕎麦屋に立ち寄り、俺は天丼、岳陽はうどん、ゾウさんは蕎麦のランチセット、サトリはオムライスを頼んだ。
蕎麦食いたいやつが蕎麦頼んでないなら蕎麦屋入らなくて良いだろ、なんて考えていたら順々に頼んだものが運ばれてきた。
「エビ頂戴よ颯太」
「絶対ヤダね。1番好きなもんやるわけねーだろバーカ」
「ゾウさんの美味しそうだね」
「蕎麦屋なのになんで池田はうどん食っての?」
少し閑散とした店内で俺達の騒ぐ声が響いている。きっとはたから見たらやかましい若者なんだろうなと思いながら飯を食べ続けた。
途中サトリがオムライスにケチャップをかけすぎたり、ゾウさんが蕎麦をひっくり返したり、岳陽がうどんをバカにしたサトリにガチギレするなどのハプニングはあったが、腹は満たされたので戦が出来るようになった。
お店の人から嫌な顔をされながら会計を済ませ、店を出てから箱根城までのルートを調べた。
「ルート調べんのは良いんだけどさ、まさか大手門から堂々と行くんか?」
慎重派の岳陽から当然の質問が来た。俺もさすがに「天下統一組織『JACK』でーすwwwお城落としに来ましたーwwww」なんてやろうとは思っていない。
「あんなド派手な城なんだから入口も多く作られてんだろ。だからいくつかの入口から各個で侵入して天守閣目指すぞ」
『JACK』は俺たち以外誰も属していない。だからこそできる少数精鋭の隠密突破。不安要素が約2名居るが、多分死にはしないだろうという信頼もある。
戦国大名と言っても、軍が優秀であったり、本人が優秀であったり、立地が良いから攻めづらいと有名になった、など様々理由があって名が上がる者もいる。
今回の標的であるカール・エース将軍は、外国人である珍しさと、箱根という山々の立地により攻めづらい場所に拠点を置いていることで力を付けた戦国大名だ。しかも彼はサイボーグであり、様々な武器や換装装備の手数勝負で戦うのが特徴らしい。
「戦国大名ってのは名前と戦闘スタイルが知られてンのが弱えよな」
サトリの言う通りで、名が売れ味方が着く頃には、自分の長所短所戦い方が全国に知られる状態になる。俺達が潰しに行けるのは、名が売れていない今が最も簡単だろう。
箱根城に向かってたらたら歩いていると、ルート検索を終えた岳陽が俺達全員に情報共有してくれた。
「とりま城の全体像と侵入ルート候補。あとググッた感じの城内兵士数の概算」
俺達はこの情報を元にして作戦を練り箱根城へカチコミに行く。決行日は兵の少なくなる日か、何かの祭りで意識が逸れる日が好ましいが……。
「んじゃ、腹も脹れたし、新しい義手と相棒を試しに行こうぜー」
「そうだな! 戦国大名の戦闘データも取りたいしさっさと行くぞ!」
ん?
ちょっと待て?
「行くってどこにですかね?」
サトリとゾウさんは「なに当たり前な事聞いてんの?」って顔でこっちを見る。俺の疑問がおかしいのかと思い隣の岳陽を見てみたら、俺と同じ反応をしていた。やっぱりこの2人がおかしい。
「ちょうど侵入ルート4つあるし先行ってるぜ!」
そう言うとサトリとゾウさんはものすごい勢いで走って行った。置いてけぼりになってしまった俺と岳陽はこの状況を理解するのに10秒かかってしまった。
「やべ、行くぞ岳陽!」
彼らに追いつくよう俺達も鎧殻を起動して全力ダッシュをする。箱根城へ向かう途中、岳陽のクソデカため息が何度も吐き出されていた。




