第十五話 決闘②
重そうな大剣を軽々と振り回し、本気で攻撃を当てるつもりで猛攻を繰り出すゾウさん。その猛攻を拳で受け流しながら隙を見て殴りを入れるサトリ。両者1歩も引く気はなさそうで、見ているこっちはとても楽しい。
「……らァ!」
「ふんっ……!」
ゾウさんもサトリもゴリゴリのインファイターのため、間合いを見極めながら的確に攻撃を入れている。
一見リーチで勝るゾウさんが優勢に思えるが、己の拳に絶対的自信のあるサトリは、リーチ差をものともせずゾウさんの懐へ飛び込んでゆく。
「アタシは何言われても行かねぇよ!」
ギイィィンッ――
「戦いが好きそうなアンタがなんで来ないんだ!」
ガギイイィィンッッ――
「……お前らには関係ないな!」
大振りな大剣の振り下ろしをスレスレでかわし、サトリはゾウさんへ踏み込み鉄山靠をお見舞する。
「ぐっ……」
モロにサトリの攻撃を喰らったゾウさんは仰け反り、その隙にサトリは彼の顔面に拳を振り抜く。彼のマスク型の頭部プロテクターは易々と砕かれ、サトリのメリケンサックはゾウさんの返り血がべっとりと付いていた。
顔面をモロにぶん殴られたゾウさんは大きくよろけるが、倒れないギリギリの体勢で踏みとどまった。
大剣状態では小さく動くサトリを捉えきれないと考えたのか、ゾウさんはスタジアムで見せた大剣のほのかな光を再び深紅の大剣から放出させる。
「『ヴィルートランス・第十三審判』」
大きな大剣の片刃が鍔の辺りからゴトンと外れ、レバーアクション式の長めなソードオフショットガンが姿を現した。彼の深紅の大剣は大太刀とショットガンに分離し、左右それぞれの手でそれらを持った。
「めちゃくちゃ良いなその武器! アンタを負かしてその武器バラしてやるぜ!」
どこか元気が無かったサトリはゾウさんの武器を見ると興奮し始めた。己のセンスとロマンを追い求める彼女には、ゾウさんの変形合体大剣はまさにロマンの塊なのだろう。
バァンッ!――
カチン――
動き回るサトリに容赦無くショットガンをぶっ放すゾウさん。ショットガンなんて近い距離で撃たれれば、常人では即座にぶち抜かれて死んでしまうところだが、サトリは上手く弾丸の拡散範囲の外に逃げている。
右手で大太刀を振り、左手でショットガンを撃ちレバーアクション。傍から見たら、ゾウさんはサトリに負けずとも劣らない狂人のような戦闘スタイルとなっている。
サトリの拳は段々とゾウさんへ届かなくなり、彼女はゾウさんの刃と弾丸を避けるのに必死になっていた。必死になりすぎて、もはや曲芸師かと見紛うほどにへんてこりんな動きを見せる。
「オレも少しは強くなっただろう!」
大振りな攻撃でサトリを誘い、反撃が来るか来ないかという所でショットガンをぶっ放す。弾丸が無限供給されているのか分からないが、ゾウさんはリロードをするような素振りは見せない。
反撃の隙がないと諦めたのか、サトリはゾウさんから大きく距離を離して拳を下ろす。
「あンな死ンだ目してたのにめっちゃ強くなったンだな。やっぱりアタシの見立て通りだ」
サトリは両拳に着けたメリケンサックを打ち付けてニヤリと笑った。
「少し本気で遊んでやるよ。これでアタシに一撃でも入れられりゃ『JACK』とやらに入ってやる」
打ち付けたメリケンサックを離すサトリ。するとバチバチという放電音と共にサトリから爆煙が舞い上がった。
「なんだよこれえ」
「うへぇ」
俺と岳陽は舞い上がる煙で咳き込んだ。煙は冷たく吹く風によりすぐに晴れ、中心にいたサトリが姿を現した。
「うお、なんじゃありゃ」
彼女は全身真っ白いラバースーツのような鎧殻に身を包み、頭部プロテクターは当然のようにマスク型で顔を覆っていた。マスクまでも真っ白いが、大昔の能面のように口元に赤い飾りがある。
拳に握られていたメリケンサックは姿かたちも無く、サトリは完全に鎧殻のみを纏っている。
「拳鍔鎧殻混合装具『NEHAN』。アタシの最高傑作だ」
サトリは再び拳を構える。ゾウさんは彼女の真っ白い身体からは隠しきれないほどの闘志を全身に浴び、興奮と恐怖が入り混じったような笑顔で顔を歪ませる。
彼もショットガンと大太刀を構え戦闘態勢に入る。
「さぁ、第2ラウンドだ!」
サトリはゾウさんへとぶん殴りかかった。




