第十三話 解脱なんか出来そうにない
用意されていた朝飯(?)を平らげた俺達は岳陽に送られた住所の建物に来ていた。42階建てのタワー型マンションで、1階から5階は様々なお店が入っている。
「連絡は俺がしといたから颯太が呼んでくれ」
エントランスで生体認証と所持武器の登録、直筆のサインを行い、ようやくオートロックで部屋番号を入力。アイツは42階の7番に住んでいるため、4207と入力して応答を待った。
……
…………
………………
「おー来た来た。とりま上がってきなー」
相手は聞き馴れた高い声で話す。
「さっさと開けろや」
「黙れー」
オートロックが開き建物内へ入る。その後も2回ほどオートロックを抜け、訳分からない部屋が沢山ある通路を歩き、ようやくエレベーターのある所まで来た。
エレベーターに乗り込み、暇な時間を潰すため、俺と岳陽はゾウさんの昔話を聞きいた。ゾウさんの話を聞きいている途中、彼が出会ったという女性の特徴にはすごく聞き覚えがあった。岳陽もそれを感じていたらしいが、言及する様子もなかったので俺も黙っていた。
42階デス――
「――っと、着いたな」
エレベーターのドアが開くと、2月の冷たい風が俺達を刺してくる。階層が高い分、吹き込む風も冷たくて痛い。
7番の部屋の前まで歩き、インターホンを鳴らす。
「開いてるから入ってきていいよー」
俺と岳陽は今から会うヤツの性格をよく知っている。しかし何も知らないゾウさんは、これから起こる事に驚いてしまうかもしれない。
「ゾウさん、ドア開けたら武器を構えるか伏せるかしてくれ」
「……?」
ゾウさんの頭にはハテナマークが浮かんでいた。まぁ、言っても分からないだろう。
俺は4207号室のドアを勢いよく開けた。
「――――っしゃオラァ!!」
ガギイィィン――!
飛んできた拳をからくり刀で受け止める。相手はメリケンサックをしており、鞘に当たった衝撃で火花が散るほどの凄まじい重さの攻撃をしてきた。
ソイツは金髪に蓮の剃り込みのある髪型に、鎧殻を着ずにサラシを巻いてスカートを履き、腰には上着を巻いている。
「あ、あんたは……」
武器を構えていたゾウさんの力が抜けていた。
そう。何を隠そう、ゾウさんが武士を目指すきっかけになったであろう女とは、目の前にいる戦闘狂のクソアマだから。
「お、いつかの死ンだ目してたやつ! 久しぶり!」
会話をしながらヤツは拳を振り抜いてきた。
「おわっ――!」
俺は拳を受け流しきれずに外の廊下へ転がり飛んでしまった。
「弱っ! 弱い人はこの『豪玉 サトリ』の家には入れませーン。ささ、岳陽と死ンだ目のやつは入っていいよー」
「入れろやアマァ!」
「来ンなよ雑魚!」
「またやってるよ……」
『JACK』としての活動について話し合うため、戦闘員兼発明家として豪玉 サトリを勧誘しに来た俺達。性格に一癖も二癖もあるこの女を言いくるめるのには時間がかかるだろうが、これからの目的には、昔からつるんでいる発明家の力が必要だった。
たとえ雑兵だろうが、少数の精鋭隊だろうが、持つ武器は一流が良いに決まってる。そこを信頼しているからこそ彼女が必要というわけだ。
サトリの家に上がった俺達は、鉄と油の臭いがする居間へと案内された。




