第十二話 ゾウ頂点へ
「お前こんなのも出来ないのかよ」
オレだってやろうとしてるんだよ。でも上手くできないんだ。
「何回言えばわかるんだよ。お前のために割く時間、もったいないと思わないのか?」
できないもんは仕方ないだろ。やってもやっても、ちっとも上手くならない。
「ほんと頭が悪いな。お前には何ができるんだ?」
「使えないな」
「お前居る意味ある?」
うるさいうるさいうるさいうるさい。
そんなの、オレが1番思ってるに決まってんだろ。特別な能力、賢い頭、適切な対応力、何一つ持ち合わせてない。
なんの取り柄もなく、なんの力もない。周りからはバカにされ、ベストを尽くしても文句を言われる。
物心ついた時から右腕は義手で、親がメンテナンス代を渋るほどの貧乏家庭で育ち、役立たずの木偶と言われて生きてきた。
好きな事も嫌いな事も無く、ただ生命維持のために身体を動かす毎日だったが、そんな日々に変化が訪れたのは16になる年だった。
神奈川県川崎市へ派遣バイトに行った春、頭のイカれた賊が仕事場を荒らしに来た。次々と周りの人間が殺されていったが、死への抵抗が無かったオレは特に暴れることも無くその時を待った。
その時――
十数人はいるであろう賊をたった一人で壊滅させた女が現れた。金髪、ツーブロ、特徴的な蓮の剃り込みが入っている髪型をしており、胸にはサラシを巻き、スカートの上には上着を巻いている。
「アンタ、なンでそンな死ンだ魚の目してンだよ」
その女は無理やりオレを立たせホコリをはたく。そしてオレをジロジロ見たあと、身体をベタベタ触ってくる。
「うン! アンタは武士になるべき!」
女はオレの背中をべしべし叩く。
「……なんでですか」
オレに秀でたものは無い。ましてや武士なんて、常に死と隣り合わせの職業。他の人よりも劣っているオレなんか絶対にすぐ死ぬと思った。
しかし目の前の女はまっすぐオレの目を見てこう言った。
「絶対アンタは強くなるから!」
女はオレにデコピンをかまして颯爽と去ってしまった。
この時のオレは、この女何言ってんだ? としか思わなかった。だが同時に、初めて人から認められた気がした。単純な俺はその女の言葉を真に受け、武士になる道を歩み始めた。
金も無い、友達も居ない、親には頼れない。だからオレはゼロから1人でやれる事を考えた。
「……帰って筋トレするか」
その日からは派遣バイトと筋トレに全神経を注いだ。1日8、9時間の派遣バイトの後は寝るまで筋トレをする。
一日たりとも休まず続け、気づけ1年後の梅雨。誕生日を迎え17歳になったオレは、頻繁に出入りしていた有名武器工房で特注品の武器を作ってもらった。
それが、俺の相棒である深紅の変形合体大剣『護國宝浄』。なんの力もないオレが、力ある者になるための相棒だ。
暗く後ろ向きな性格は、筋トレと相棒のおかげで明るく前向きに変わった。いや、もう既に、あの女と出会った時から変わりつつあったのだろう。
オレがオレを必要だと感じるために、きっかけをくれたあの女との僅かな繋がりのために、オレは強くなるために強い奴と戦い続ける。
「――っと、着いたな」
出会って間もない霜と池田と天下統一を目指すことになったが、オレのやることは何も変わらない。
強くなれるならなんだってする。それが、オレの今やるべき事だから。




