第十一話 JACK
戦国大名とは、県の統治が出来てしまうほどに名の知れた武将の事。神奈川県では源義経や、北条時宗などがおり、県将軍では無い他の人も戦国大名になる事が出来る。
ようは、力のある知名度が高い武将という事だ。
名が知れれば味方が増え、味方が増えれば戦も有利になる。俺の夢である征夷大将軍により近づけるというわけだ。
「でも、どうやって戦国大名になりゃいいんだ?」
「あ? そりゃお前、ココとココでのし上がりゃいい」
ゾウさんは頭と腕を指でトントンと叩く。簡単な話、実力で周りを黙らせることが出来れば、知名度アップに繋がり、戦国大名として名が知れ渡る。
スタジアム内で徳川軍が襲撃してきた際、夢のために全力を尽くし、俺の嫌いな頑張りを発揮すると自分で決めた。自分で自分を曲げるのはあまり好きではなく、自分に正直に生きてきた俺としては、夢を追って頑張る事が今1番のやるべきことだろう。
「戦国大名になるのはわかった。でもまず、諸々決めたいことがあるから、お前らうち来いよ」
俺は岳陽とゾウさんを手招き、最寄り駅から歩いて約15分ほどで着く実家へ案内する事にした。
彼らはこれに承諾し、警戒心MAXの住民を横目に駄べりながら実家へ歩いていった。
――霜山家――
ガチャ――
「ただいまー。ツレもいるー」
玄関で鎧殻の足部装甲を解除しながら居間に向かう。彼らも俺の後に続き、お邪魔しますと言いながら家に上がった。
「ちょいちょいちょい! 何戻ってきてんの? てか岳陽じゃん。久しぶり! 後ろの子は?」
情緒が分からん母にスタジアム内で起きた出来事とゾウさんについてを話し、一息付きに来たことを伝えた。
すると母は事情に納得し、キッチンからお茶とお菓子を持ってきて俺らの近くに腰かける。
「なんで居んの? どっか行ってくれ」
「テメェそれが母に対する態度なんか?」
ウザイから俺の部屋行こうと2人に言い、お茶とお菓子を持って自室に向かった。当然母は居間に置いて。
「お前の母ちゃん元気だな……」
ゾウさんに引かれつつ、スタジアムでの疲れをお菓子とお茶で癒す。一息付いた俺達は次にやるべきことを話し合うことにした。
まず俺が目指すべきものは戦国大名。後々征夷大将軍になり日本を統一し、1番偉くなって楽に余生を送りたい。そのために戦国大名になり、名を売って軍備を拡大し、各県の将軍にカチコミをかける。
岳陽はそんな俺のサポートと戦闘司令をする頭脳になる。これは直接岳陽がやると言ってくれて、将来やりたい事も特にないらしいので俺に乗っかるそうだ。
ゾウさんは強い奴と戦いたいらしく、俺の夢には常に強い奴が立ちはだかるという事で、彼も俺の夢に着いてきてくれるらしい。頭部プロテクターがマスク型という事もあり、バーサーカーのように活躍してくれることだろう。
天下統一を目指す霜山颯太、それを補佐する池田岳陽と、馬車馬のように戦う増山勝牙。この3名が初期メンとなり、これから各県の将軍に牙を剥く。
「なぁ、組織名とか決めない?」
ゾウさんが提案してきた。
「確かに組織名を決めておく方が良いかもな。○○軍みたいに名前を組織名にするのも良いけど、カッコイイ組織名がある方が他の戦国大名とも差別化できるな」
岳陽もゾウさんの提案に乗っかる。
正直、霜山軍とかあんまり言われたくないと思っていたため、その提案は嬉しかった。
しかし、この提案からの俺たちは、まさに激戦のように白熱することになる。
「だから、『天下統一協会』がいいって!」
「いやいや、『自民の党』だろ!」
「『汚職内閣』が1番おもろい!」
あーだこーだ言い合い、途中何度か母が怒鳴りに来たりと、その日は組織名の考案で幕を閉じた。
――翌日――
いつの間にか俺達は寝落ちしていた。1番に起きた俺が時計を見ると、時間は昼近かった。部屋のドア付近にはサンドイッチとスープの粉の包みが入ったお椀が3つ置いてあった。今日母は仕事に出かけているため、朝飯だけ用意してくれたのだろう。
俺は毎朝起きた時に鎧殻の通知履歴を見る日課がある。ニュースアプリやメッセージアプリなど、大量に通知が流れてきていた。
中でも衝撃的だったのが、昨日の横浜スタジアムの事件で死んだ受験生の数が2000名にも登り、2024名のうち24名しか生き残っていないという。それに、メッセージアプリの通知には、母から中学の時の友達が亡くなったというメッセージも入っていた。
「おいお前ら」
寝ているふたりを引っぱたいて起こし、今見たニュースと母からのメッセージを伝える。すると2人は目ん玉をかっぴらいて顔を見合せた。
岳陽はおそらく俺と同じようなことを思い、ゾウさんも事の重大さを改めて感じたことだろう。
「当面俺らは戦国大名になるために動く。そのためには、ピンチもチャンスも人脈もフル活用してくことになる」
俺はドア付近にあった朝食を2人に出し、サンドイッチをかじって、改めて考えた組織名を2人に伝えた。
「俺達は『Japan All Connection Key』として天下統一を目指す。異論は認めん」
2人はしばらく沈黙。
3名の咀嚼音、鳥のさえずり、かわいた風、無輪車の走行音。沈黙の中にも音があり、その音を1番最初に破ったのはゾウさんだった。
「分かった」
続けて岳陽も口を開く。
「まぁいい。ただし、もう1人連れていきたい奴がいる」
岳陽は俺とゾウさんへメッセージを送ってきた。それにはAR地図に経路が予め書かれていて、見覚えのある住所にピンが立ってあった。
そこは俺と岳陽にとってとても馴染みがあり、なおかつとても信頼している人物の住所だった。




