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「ぶわっ!お口から溢れる!ご主人様、出しすぎでっす!」『トモミンと熱狂的信者』

 【マーサの実家】


 チュンチュン……クチュン!


 久しぶりの『花粉鳥』の鳴き声が朝を告げる。


「……今日は、トモミンとデートか」


 くじ引きの結果、最初のデートの相手はトモミンに決定したのだ。


 四人とデートして……結婚相手が決まる。


 嬉しい反面、自分なんかと結婚してくれるのだろうかと不安と気持ちいいが交差する……。ん?……気持ちいい!?


「気持ちいい!!」


 マーサは慌てて布団をめくった!


「んっ!んっ!んっ!あ!……マーサ、おはよう!!」


 ユキノが『おはようアサイン(バナンポを咥えていた)をしていた!


 世界を救っても、朝のルーティーンは欠かさない!これぞ勇者!これぞプロフェッショナル!


 考え事をしていたマーサは、なかなか咥えるのを止めないユキノに注意をしようと思ったが、一言だけ、こう言った……「……出ます」


 出す時は、ちゃんと言う。これを『礼儀』という。


「お!いただくよ……パクっ!んっ――!!」


「……出ました」


 出した時も、ちゃんと言う。これは『余計な一言』だ。


「んっ!!ごくん……。ん?マーサ、悩んでいるのか?」


 ユキノは『バナンポジュース(修正済み)』の味でマーサの体調管理ができるレベルにまでに達していた!


「そりゃね……俺なんかと結婚なんて……」


 珍しく落ち込んでいる。


「みんなマーサだからOKしたんだ!気にするな!」


「ユキノ、ありがとね……」


 ユキノの気持ちが素直に嬉しかった。


「今日はトモミンとのデートを楽しめばいい。どうせ決めるのは私達じゃない」


「ライブ配信か……。緊張するけど、楽しむか!」


 マーサは考えるのをやめ、ただ楽しむことにした!


「では、私は行くかな!楽しんできてね……。んはっ――!」


 ユキノはマーサのバナンポから口を離した。


「……腹話術、うまくなったね」


 ユキノはずっとマーサのバナンポを咥えたままで会話していたのだ!恐るべし!勇者の能力!


 コンコン……。


「ご主人様~起きてますか~」


 ドア越しにトモミンの声がする。


「やばい!とぅ!」


 さっそうとマーサの布団から飛び出し、あっという間に窓に飛び乗る!


「では、またなマーサ!あと……ごちそうさま!」


 ユキノは窓から飛び降り姿を消した!



 ガチャ……。


「失礼します……。あれ?ユキノ様いらしてました?」


 クンクンと部屋の匂いを嗅ぐ。


「あ、ああ……話してた」


 マーサは冷静さを保とうとしているが、内心「なんでわかるの――!!」と心臓バクバクだ!!


「では、行きましょうか……」


 少しテレながら話すトモミンは、白のチューブトップ(胸のとこ巻いただけの服)とロングスカートといつもと違うお洒落な服を着こなしていた!


「トモミン、かわいいね!」


「ありがとうございます。ライブ配信と言われ、何を着たらいいのかわからず……」


 着なれない服を見て、照れるトモミン。


 なんなら、最初の奴隷の時から生配信されていたことは女神のみ知るところである!


 もちろん!トモミンがあれこれ悩んで着替えていた時もライブ配信されている!プライバシーとは、いったい!人権とは、いったい!


「お、俺は何を着ていこう」


 基本、マーサの服は誰も興味ないので割愛されていた!


「よし!行くか!」


 自分なりのお洒落な服(説明は割愛)を着たマーサ、いよいよトモミンとの結婚をかけたデートが始まる!


「は、はい!」


 トモミンも緊張を隠せない!


 【王都ハラミカシラ 郊外】


 町外れの坑道を歩きながら、初々しい初めてデートは始まっていた。


「……いい天気だね」


 でた!マーサ渾身の「いい天気だね」!会話に困った男性の8割が言ってしまう失敗ワードだ!


「……は、はい!」


 まるでお見合いのように会話が弾まない!ライブ配信というプレッシャーが二人を襲う!


「ちょっと、寄ってく?」


 重い空気に耐えきれず、マーサは洞窟を指差す。


「はい!ちょうど体を動かしたいと思ってたとこです!」


 この世界では、ちょっとお茶する感覚で初級ダンジョンに行くこともある。


 マーサたちは初級ダンジョン【はじまりの洞窟】に入っていった。


 【洞窟内】


「ははは――!!楽しいなぁ――!」


 マーサはスケルトンを切り刻みながら初級ダンジョンを満喫している!


「ラ~♪ご主人様!楽しいですね~ラ~♪」


 トモミンも聖属性の歌声でスケルトンを次々浄化させる!レベル99の冒険者がレベル1のダンジョンで無双する……『あるある』である。


 ダンジョンの中腹まで進むと分かれ道で焚き火をして座っているフードの男がいた。


「こんにちわ――!!休憩ですか?ボスの『ネズミ男』ってどっちの道でしたっけ?」


 上機嫌のマーサはフードの男に尋ねる。


「ああ……ネズミ男は左の道だよ」


 フードの男は素っ気ない態度で左の道を指差す。


「ありがとうございます!優しいおじ様!」


 トモミンは深々頭を下げるとマーサと左の道を進んでいった。


「……」


 二人を見送るフードの男の体が震える……。


「あ、あせったわ――!なぜ、あの男がここに!?しかし、トモミン……想像以上にかわいい!トモミン……ラブ!!」


 フードが脱げると、その男の顔は……魔王だった!!


「まさか……こんなところで愛しのトモミンに会えるとは……はっ!運命!?」


 魔王はキュンとした。


「こうしてはおれん、先回りしなければ」


 魔王は裏道を急いだ!


 【はじまりの洞窟 最深部】


「……おい!」


 「おい!」と言われ『はじまりの洞窟』エリアボスの『ネズミ男』は振り向き様に威嚇する。


「きょ――きょ!きょ!きょ!誰だぁ~?気安く俺様の名前を呼ぶやからは~?お前もトムみたいに食いちぎってやろうかぁ~?」


 トムが気になる!


「ほほう!やってみろ!」


 フードを取って素顔を見せる。


「ま、ままままま魔王――様ぁ!!?とととととんでもごさいません!あっしのようなドブネズミはドブがお似合いでさぁ~へへ……へへへ……」


 そういうと一目散に排水溝の中へ消えていった。


 ギィ……ギギギ……。


 最深部の扉が開き、マーサ達が入ってきた!


「よし!勝負だ!ネズミ男!お!やっぱりネズミのような顔だな――!!ははっ――!」


「………」


 ワナワナワナ……言葉にならない怒りが込み上げる!


「ご主人様、ネズミ男さんダンディーなおじ様ですよ!」


 トモミン……やはり、ラブ!


 魔王はキュンとした!


「ま、どっちでもいいか!これでダンジョンクリア~」


 マーサはそういうと、軽いファイアーボールを放つ。軽いと言ってもチート魔力を持つマーサのファイアーボールは中級魔族ぐらいまでだったら一発で倒せるレベルの威力がある!


「ふぅん!!」


 魔王は右手を振り下ろし、マーサのファイアーボールを粉砕する!


「すごい!ご主人様のファイアーボールを粉砕するなんて!初めてみた!」


「あ、あれ?ちょっと油断しちゃったかな?ははは……これで、終わりだ!ファイアーストーム!」


 でた!全てを燃やし尽くす炎の嵐!マーサの最強の魔法がネズミ男(ではなく、魔王)に襲いかかる!


「ふぅん!!」


 またも右手を振り下ろしファイアーストームさえも粉砕する。


 さすがは魔王!魔族の王!


「あ、あれ?ここ初級ダンジョンだよね……おかしいなぁ~」 


 トモミンにカッコ悪い姿を見せて、焦るマーサ。


「消えるがよい!破滅の闇!ブラックホール!」


 魔王から放たれた黒い光がマーサを吸い込む!

 女神の予告動画を見た魔王は自分なりに『ブラックホール』を解釈し、悲願の究極魔界魔法を完成させていた!えらいぞ魔王!真面目だぞ魔王!


「え!えええ――!!!!」


 どんどん黒い光に吸い込まれていくマーサ!やがて、全て吸い込まれた!


「ご主人様ぁ――!!」


 手を伸ばすトモミンの前でマーサが消える!


「ふっふっふ、たわいもない!」


 勝利宣言をする魔王だが、額から汗が一滴垂れる!


 や、やばい!トモミンと二人っきりだ!


 魔王は心臓が口から飛び出るほど緊張していた!


【天界 女神の宮殿 トイレ】


 チョロチョロ……。


「うわぁぁ――!!ここは!?どこだ――!?」


 黒い光からマーサが出現した!


「…………チョロ」


 女神はトイレで小をしていた!


「あ、ジョーロ見たい」


「お前に花を咲かせてやろうか――!!」


 バチコ――ン!!


 女神の平手打ちでマーサはぶっ飛んだ!!


 キラ――ン……。


 遥か遠くにぶっ飛んだマーサはやがて小さな光になって消えた。


【はじまりの洞窟】


「ご主人様がどこかに行っちゃったよ~。え~ん!」


 トモミンは泣いていた!


「あ、あう……オロオロ」


 魔王はオロオロしていた!


 ドカ――ン!!


 大きな音とともにマーサが地面に突き刺さる!


「ご、ご主人様ぁ~!お帰りなさいませ~!」


「た、ただいま……」


 地面に突き刺さったまま返事をする。


「我のブラックホールから生還するとは!(はぁ~トモミンと二人っきり、緊張したぁ~)」


「よし!反撃だ!」


 地面から顔を抜き、魔王に向かって構えるマーサ。


「はい!」


 トモミンも元気に返事をした。


 ここからの戦闘シーンはライブ配信のコメントとともにお送りします。コメントは『』の言葉が左から右に流れるイメージでご覧ください。


 【ライブ配信モニター】

 

 『あれ……魔王じゃね?』⇒⇒


 ⇒『魔王、ネズミ顔で草』⇒⇒


 ⇒⇒『トモミン、まじ天使!!』⇒⇒


「支援魔法いきま――す!」


 トモミンが(ひざまず)く。


 ⇒『「支援魔法いきま――す!」でマーサのズボン脱がすの……神』⇒⇒


 ⇒『歌いながら咥えられるの気持ち良さそう』⇒


「支援魔法『夜のヒーラーコール』そのままじゃ~♪寝れないですね~♪」


 ⇒『新曲とかいて神曲!!ぐはっ!!』⇒


「どうですか~♪これで寝れますか~♪あら~♪まだ大きいまま~♪仕方ないですね~♪」


 ⇒『マーサ撃沈!おらも撃沈!ぐはっ!』⇒


 ⇒『指輪光った!バナンポの指輪(笑)』⇒


「ファイアーストーム!!!」


 仁王立ちのマーサの両手から業火を放つ!


 ⇒⇒『よく咥えられながら決めポーズできるね……』⇒


 ⇒『咥えられてない時間のが短いのか?』⇒⇒


 ⇒⇒⇒『羨ましい……』⇒⇒⇒


「くっ!……ここまでか」


 膝をつくマーサ!


 ⇒『トモミンのチューブトップずれてる!』⇒


 ⇒⇒『マーサ膝つきながら、ちっぱい見てる(笑)』⇒⇒⇒


 ⇒⇒『カッコつけながら、マーサ出てない?』⇒


 ⇒『出してる!出してる!指輪外れたもん!


「ぶわっ!お口から溢れる!ご主人様、出しすぎでっす!」


 トモミンのお口からバナンポジュースが溢れ出す。


 ⇒⇒『それでも全部飲もうとするトモミン。神。涙』


 ⇒⇒『あっ!トモミンが指輪はめた……出るぞ!』⇒⇒


「バナンポオーケストラ!!」


 トモミンが両手を広げ、歌い出す。


 ⇒『きた!天使の歌声!』⇒⇒


 ⇒⇒『何気にコーラスにまわるマーサ好き』⇒


 ⇒『魔王も歌ってない?オンチ???』⇒⇒


 ⇒⇒『本当だ!泣きながら魔王歌ってる!』⇒


「生歌、涙が止まらん!しかし、このままでは!!ぐうっ!『ブラックホール』!!」


 魔王は再び究極魔法を唱えた!

 

 黒い光がマーサ達を襲う!!


 ⇒⇒『やばい!また飛ばされるぞ!』⇒⇒


 ⇒『でも、歌声で押し戻してるぞ!すごい!』⇒


 ⇒⇒⇒『俺たちも!歌うぞ!』⇒


 ⇒『ま、まじ?やるけど……ラ~♪』⇒⇒


 ⇒⇒『ラ~♪ララ~♪』⇒⇒⇒


 ⇒『ラ~♪ラララ~♪ララ~♪ララ~♪』


 王国中の歌声がトモミンに力を与える!


「聞こえる!みんなの想い!『バナンポフルオーケストラ!フィナーレ!』」


 みんなの歌声がトモミンの歌の力を最大限に引き上げる!


「ぐわぁ――!!わ、我の『ブラックホール』が……我に返ってくる!?す、吸い込まれる~!!」


 魔王はブラックホールの黒い光に吸い込まれて消え去った!!


「勝った……やりました!ご主人様!」


「ああ!強かったな!ネズミ男!!」


 二人は最後まで魔王だとは気づかなかった!


「あっ!ご、ご主人様!わ、忘れていました!」


 トモミンがマーサに駆け寄り、そっとキスをする。


「――!?と、トモミン……」


 びっくりするマーサ。


「ご主人様、デートありがとうございまちたっ!あっ!……あう~、うまく言えない~」


 顔を真っ赤にしながら微笑むトモミンに、心の淀んだライブ配信の住民達は涙が止まらなかったという――。


 こうして二人のデートは終わった。


 トモミンの歌声と純粋な気持ちは人々の心を打ち


 驚愕の【300万いいね!】を獲得した!


 【天界】


 シャワ~。


「ふんふ、ふ~ん♪」


 女神はシャワーを浴びてご機嫌だ!


「おわぉ~……ここは!」


 黒い光の穴から魔王、天界にしょうかん


「…………」


 女神フレイヤはシャワーを浴びながら無言で男を見る。


「う、美しい!これ、魔王城饅頭です」


 魔王は女神フレイヤに一目惚れし、2時間行列は当たり前という名物『魔王城饅頭』をお近づきのしるしに差し出した!


「お前を冥土の土産にしてやらぁ~!!」


 女神の平手打ち!(本日二回目)


 バチコ――ン!!


「ぐわぁ~!!」


 魔王は光の彼方へ飛んでいった!


 キラ――ン……。


 <つづく!>

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