54.カセ・ユリェルレという男
「んじゃ、もう僕の紹介はいいっすよね。じゃあ次、毒舌男」
「わあっとるって! 話すってのにいちいち口出しすんなや」
カセ・ユリェルレ、トルミエの色違いみたいな見た目だ。fillgにヒーラーはトルミエしかいないと聞いたから、カセはゴリゴリのパワー系だろう。
でも、今まで幾度となく常識を破壊されていた。また変な役割なんじゃないのかな……
今の所、剣士が二人。遠距離型が一人。そしてヒーラーが一人。つまり中距離型がいない。となれば、バランスを考えて中距離型はこの二人のどちらかだろう。
カセとティリアの方を向いてじっと見つめてみる。恐らく、中距離型はティリアだろう。ガタイからして、武術も魔術も長けていそうだ。
「小川。人ってのはそういう目で見るもんじゃねえ。ちゃんと目と目ぇ向き合わせろや」
「す、すいませんっ!」
そう注意され、バッと顔を上げて目と目を合わせてみるも、目付き怖すぎ、緊張で体が固まる。これは失礼な事をしてしまったみたいだ。何かこの人ヤクザに近くない!? どう考えても他の人と雰囲気違うじゃん!
そして、カセのそういった態度に不満だったのか、ポリテルがカセに指を差して反論を仕掛ける。
「おいカセ、女に対してそりゃあねえだろ。そういう態度は俺等だけにしとけってのな」
「うるせぇポリテル。俺は人と馴れ馴れしくつるむのは好きじゃねぇ。俺の勝手にさせろや」
カセがそう自己中な主張をすると、「ったくしょうがねえ奴な……」とポリテルは言い残してギルドの奥の方へと姿を消していった。
「ん? 何だあの野郎。まさか、アイツを呼ぶつもりじゃねぇだろうな……!」
「ポリテルさんのこったあ。やりかねないです。まあ、俺は止めやしませんけど」
アイツを呼ぶ? 今から誰がこっちに来るんだろう。もしかして、もう一人の仲間?
でも、仲間はグリフ含め6人だと説明は聞いた。グリフ、ヴァヴェル、ポリテル、トルミエ、カセ、ティリア。ちゃんと6人だ。
本当に今から誰が来るんだろう。予想も付かない。
数分、誰が来るか思いを馳せながら受付の方を見ていると、布に被さっているボトルみたいな何か抱えてポリテルが戻ってきた。どうやら、人じゃないみたいだ。じゃあ、アイツって誰の事なんだろう?
ポリテルが机に抱えてきた何かを置き、布を取ると、それは姿を現した。
「さてティリア、今からコイツを飲むんだな」
「絶対嫌に決まってんだろうがあああ!!!」
それは、お酒だった。
「夏目殿の為に説明すると、コイツはアルコール濃度90%。めっちゃキッツいお酒、その名もヴィンヴィアノ。ヴィノよりも2倍は強いお酒だ」
「90%!?」
90%なんて馬鹿げている。私のお父さんがいつも飲んでいたのですら8%とかだったのに、それが90%となれば、それはもうアルコールとほぼ同義じゃん!
「まだ俺はアイツを呼びたくねぇ。せめて、小川が起きている間だけは止めろ!!!」
「駄目だ。今の夏目殿にはお前はただの口の悪いトルミエの色違いだからよ。ここではっきりさせねぇとな!」
「や、止めろ! 本当に止めてくれぇぇぇ!!!」
ポリテルは相当力が強いのか、カセをいとも簡単に抑えつけてヴィンヴィアノをトクトクと飲ませた。
そして、カセは一秒も経たずして無力化されたように眠りについた。これは、一体何をしているんだろう。何かの儀式的な物なのかな。
「これで良し。後は目覚めるのを待とう」「そうっすね」
今から本当に何が始まるんだ……?




